患者の権利法をつくる会は「医療基本法」制定に向けての学習会「医療事故といのちの尊厳 医療安全の推進は医療基本法が土台に」を2024年6月8日にZoom開催した。患者の権利法をつくる会は患者の権利を定めた法律の制定を目指し、その集大成として患者の権利保障を中心に据えた「医療基本法」の法制化を目指している。消費者基本法や教育基本法など特定分野の根幹になる法律として基本法が存在する。しかし、日本では未だに医療基本法が存在しない。
学習会は二部構成である。第一部は医療過誤原告の会の宮脇正和会長が「医療事故の現状と医療事故調査制度」を話した。宮脇会長は世界患者安全の日のライトアップを紹介した。世界保健機関WHO; World Health Organizationは9月17日を世界患者安全の日World Patient Safety Dayと制定し、オレンジをテーマカラーとした。世界患者安全の日には東京都庁など全国各地でオレンジ色のライトアップが行われた。林田医療裁判の公開質問状(44)でも東京都庁のライトアップを紹介した。
誰でも医療事故の当事者になる。医療従事者も自身や家族が医療事故被害に遭うケースがある。日本は医療事故死の公式調査報告がないが、年間24000人から48000人と見られている。提訴に至るケースは僅かである。泣き寝入りは再発防止につながらない。医療事故調査制度は制度自身や運用に問題があり、見直しを求めている。事故再発防止は大事な人々の命を守ることになる。
第二部は医療過誤原告の会の山口由美幹事が「医療事故被害者アンケート」と題し、医療過誤原告の会が実施したアンケート結果から問題点などを提示した。アンケートは医療過誤原告の会への相談者から予期せぬ医療事故で家族を亡くした遺族を対象とした。アンケートは全て郵送で実施した。
医療訴訟になった理由は医療機関の対応が最も多く、35%である。原因追及の姿勢が見られなかった、説明会を開かず法廷でと言われた等である。山口さんはアンケート結果から医療機関側は説明に尽力して欲しいと指摘した。
自由記載欄では以下の記載がなされた。
「7年経っても苦しみは変わらない。関係者に対する怒りを感じている」
「医療機関の管理者は迷ったならば躊躇わずに事故報告することが重要」
アンケートを振り返って以下の提言をした。
・医療機関側が遺族に丁寧な初期対応と経過報告の継続
・事故報告をしない場合も遺族が理解できるまで説明すること
医療事故調査制度に対してはセンター調査報告書の公開などを提言した。
学習会には林田医療裁判を考える会からも参加した。林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号損害賠償請求事件、平成28年(ネ)第5668号損害賠償請求控訴事件)の経験を踏まえ、以下の質問を出した。
「病院側が遺族に説明するとの提言は大変重要と思います。病院の中には患者家族の特定人をキーパーソンとして、その人物にだけ説明する運用をしているところがあります。遺族皆の納得を得られ、取り残さない配慮や工夫についてご意見はありますか。逆にキーパーソンへの説明を遺族説明のアリバイ作りのように使われるような危険はありますか」
医療事故といのちの尊厳
公開質問状54医療基本法
医療基本法の制定に向けた院内集会
医療基本法からみた現行医療制度の問題点
公開質問状39医療基本法フォーラム
医療基本法と患者・医療従事者の権利
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