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執筆者の写真林田医療裁判

意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン

患者の権利法をつくる会の公開シンポジウム「医療基本法とプロフェッショナリズム」では「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(2019年5月)が紹介された。このガイドラインは「4.医療に係る意思決定が困難な場合に求められること」で以下のように記載する。

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医療法第1条の4第2項では、「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。」とされており、本人の判断能力の程度にかかわらず、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、本人による意思決定を基本とした上で適切な医療提供を行うことが重要です。

一方で、現実の医療の場面では、一時的に意識を失った患者など本人の意思が確認できない場合も日常的に多くみられます。現時点では、このような場合における本人以外の第三者の決定・同意について、法令等で定められている一般的なルールはなく、社会通念や各種ガイドラインに基づき、個別に判断されているものと考えられます。

成年被後見人等の認知症や精神障害・知的障害により判断能力が不十分な人についても、成年後見人等の第三者が医療に係る意思決定・同意ができるとする規定はなく、成年被後見人等に提供される医療に係る決定・同意を行うことは後見人等の業務に含まれているとは言えません。

ここでは、本人の判断能力が不十分な場合であっても適切な医療を受けることが出来るよう、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成 30 年3月改訂 厚生労働省)(以下「プロセスガイドライン」という。)の考え方も踏まえ、医療・ケアチームや臨床倫理委員会等の活用など医療機関としての対応を示すとともに、医療に係る意思決定の場面で、成年後見人等に期待される具体的な役割について整理しています。


(1)医療・ケアチームや倫理委員会の活用

意思決定が求められる時点で本人の意思が確認できない場合、「プロセスガイドライン」の考え方を踏まえ、関係者や医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要があります。なお、直ちに救命措置を必要とするような緊急の場合には、柔軟に対応する必要があります。

(プロセスガイドライン抜粋)

① 家族等が本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。

② 家族等が本人の意思を推定できない場合には、本人にとって何が最善であるかについて、本人に代わる者として家族等と十分に話し合い、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行う。

③ 家族等がいない場合及び家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。

④ このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくものとする。

医療に関する意思決定においては、病院の医療職だけでなく、成年後見人等やケアマネジャー、ホームヘルパーなど患者に係わる人が、繰り返し最善の方法に関して話合いを行うことが必要となります。

医療機関においては、身寄りがない人へのマニュアル作成、院内および地域での倫理カンファレンスの実施、臨床倫理委員会の設置などの体制整備を行うことも有効です。(事例1「成年後見人による医療に関する意思決定支援事例」及び事例5「身寄りがない人への院内マニュアル作成等の取組事例」参照)

なお、日常的な場面での意思決定支援に関するものとして、「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(平成 30 年6月厚生労働省)、「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(平成29年3月厚生労働省)が示されています。

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このガイドラインの記載は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関する

ガイドライン」をベースとしている。林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号損害賠償請求事件、平成28年(ネ)第5668号損害賠償請求控訴事件)は反面教師になる。


まず「関係者や医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要があります」とある。林田医療裁判では主治医と患者の長男の話し合いだけで決められた。そこでは患者の医師の推定ではなく、長男の意思や主治医の理念で話された。主治医は裁判の陳述書に「カルテ記載内容の補足として、私は、大事を取りすぎて、意思疎通ができないまま寝たきり状態になるのが最善とは言えない、という主治医の理念をわきまえた上での延命治療拒否だと思いました」と記載している(乙A第3号証8頁)。繰り返しの話し合いも行われていない。


林田医療裁判の公開質問状では以下の質問をしているが、「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」の求めることでもある。

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2.複数人の家族の意見から本人の意思を推定する取り組み内容を教えてください。

3.「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の強調する繰り返しの意思確認を実現するために取り組みをしていますか。している場合、その具体的内容を教えてください。

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林田医療裁判の公開質問状65医療事故と命の尊厳

公開質問状54医療基本法

公開質問状39医療基本法フォーラム




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