医療同意のキーパーソン依存の解消
- 林田医療裁判

- 18 分前
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林田医療裁判における「患者の自己決定権の尊重」は、高齢者医療のあり方、医療の倫理、そして人間的尊厳とは何かという根本的な問いに関わるテーマです。林田医療裁判は、患者本人の意思が尊重されず、特定家族の意向や主治医の理念で治療方針が決定された場合に何が起こるかを示す事例です。
林田医療裁判の事例では、脳梗塞で入院した母親が快方に向かっていたにもかかわらず、長男が患者の経管栄養の流入速度を医師の許可なく速め、延命につながる治療を拒否しました。この治療中止のプロセスにおいて、毎日見舞いに通っていた長女には相談も説明もなされませんでした。
●説明と同意(インフォームド・コンセント)
患者の自己決定権を尊重する上で、医療者が患者に対して十分に説明を行い、患者が自身の状況と治療の予後について理解した上で、治療を受けるか受けないかを選択・決定する権限を与えることが不可欠です。これは「インフォームド・コンセント」と呼ばれ、患者の権利として確立されています。
しかし、日本の医療現場では、キーパーソンと呼ばれる特定家族からの同意で良しとする傾向があります。医療同意が形式的なものに陥り、「本人の意志」が十分に尊重されていない実態を示唆しています。医療は患者のためにあるものであり、家族の意見を聞く場合であっても、それは患者本人の意思を判断するための証拠として用いられるべきであって、キーパーソン(特定の家族)の意見だけで医療方針を決めるべきではありません。
「自己決定権は、一身専属性の権利であるから、厳格に解釈すれば、家族であっても本人に代わって行使できるものではない」(小林真紀「家族間における延命措置の葛藤」甲斐克則、手嶋豊編『医事法判例百選 第3版』有斐閣、2022年、201頁)
●キーパーソン依存の解消策
医療同意のキーパーシン依存を解消し、患者中心の医療を実現するためには、多角的なアプローチが必要です。医療者は患者の自己決定権を尊重できるよう、意識とスキルの両面で改善が必要です。
●患者への丁寧な説明と意思確認
患者本人に直接、わかりやすい言葉で病状、治療内容、予後、副作用、代替治療などを説明する。
患者の理解度を確認し、質問や不安に十分な時間をかけて耳を傾ける。
患者が自分の価値観に基づいて意思決定できるよう支援する。
患者の能力が低下していても、意思表示できる範囲で最大限に意思を確認する「段階的同意」のアプローチを取り入れる。
●多職種連携による支援
医師だけでなく、看護師、医療ソーシャルワーカー、薬剤師など多職種が連携し、患者の意思決定を多方面から支援する。
倫理カンファレンスなどを積極的に開催し、困難な事例における倫理的課題を議論・解決する。
●「キーパーソン」概念の再考
「キーパーソン」という言葉は、特定の家族に決定権が集中することを助長しかねないため、使用を慎重にする。
家族の役割は、患者の意思を尊重する上での支援者であることを明確にする。
●医療教育の充実
患者の自己決定権尊重の重要性、インフォームド・コンセントの具体的な実践方法について深く学ぶ機会を増やす。
●相談支援体制の強化
患者や家族が医療に関する悩みや疑問を相談できる独立した窓口(例:医療メディエイター、患者アドヴォカシー)を設置・強化する。
セカンドオピニオンの外来を充実させる。
これらの取り組みを複合的に進めることで、日本の医療は「家族が同意すれば何でもできる」という状況から脱却し、患者一人ひとりの尊厳が守られ、その意思が尊重される「患者中心の医療」へと進化していきます。
林田医療裁判の公開質問状82代行意思決定
キーパーソンをめぐる断絶





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