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熊本県弁護士会 菊池事件再審請求棄却決定に対する会長声明

  • 執筆者の写真: 林田医療裁判
    林田医療裁判
  • 23 分前
  • 読了時間: 4分

熊本地方裁判所は、ハンセン病とされた男性が殺人の罪に問われ、死刑が執行された菊池事件について憲法違反を認めながら、再審請求を棄却しました。弁護団は即時抗告しました。


「無実を訴え続けた男性は、3度目の再審請求を棄却された翌日、死刑に処せられた。欠陥のある審理を再度吟味する間もないまま、救われたかもしれない命を国家が奪ってしまったのでは、との疑念がぬぐえない」(「(社説)菊池事件と司法 責任が問われ続ける」朝日新聞2026年1月30日)


熊本県弁護士会は2026年1月29日に「菊池事件再審請求棄却決定に対する会長声明」を出しました。

*****

 熊本地方裁判所は、2026年(令和8年)1月28日、いわゆる菊池事件に関して、その確定審の審理が憲法に違反することを認めながら、再審請求を棄却する決定(以下「本決定」という)をした。


 菊池事件は、ハンセン病患者とされた元被告人が、自分の病気を熊本県衛生課に通報した村役場職員を逆恨みして殺害したと疑われた事件である。菊池事件では、菊池恵楓園・菊池医療刑務所内の「特別法廷」が開廷場所として指定され、元被告人が無実を訴えながらも、1953年(昭和28年)8月29日、第一審死刑判決が下され、1962年(昭和37年)9月14日、死刑が執行された。


 菊池事件については元被告人が冤罪であることを訴えて再審請求していたが、その再審請求が棄却された翌日に死刑が執行されたものであり、その後、元被告人の親族らが、裁判手続に憲法違反があったこと及び無罪を言い渡すべき証拠もあることを理由として再審請求をしていたものである。


 菊池事件における開廷場所指定、第一審・控訴審の審理及び態様(予防衣を着用し、証拠物を扱う際に手にゴム手袋をはめる等したこと)は、ハンセン病患者であることを理由とした合理性を欠く差別であって、憲法14条1項(平等原則)に違反するとともに、総体として見ると、ハンセン病に対する偏見・差別に基づき元被告人の人格権を侵害したものとして憲法13条に違反するものである。また、菊池恵楓園は、一般国民の訪問が事実上不可能な場所であり、裁判の公開原則を定めた憲法37条1項、82条1項に違反する。さらに、元被告人が犯行を全面的に否認しているにもかかわらず、第一審の弁護人が公訴事実を争わず、しかも有罪立証のための検察官請求証拠を争わずに全て同意したこと等は、弁護人の誠実義務に違反し、実質的な意味での弁護人選任権を侵害したと評価すべきものである。


 しかしながら、本決定は、本事件の審理手続が憲法13条(個人の尊厳)、憲法14条1項(法の下の平等)に違反し、憲法82条1項(裁判の公開)にも違反する疑いがあることを前提に、確定判決の審理手続に重大な憲法違反があったことが判明し、当該憲法違反が確定判決の事実認定に係る重大な事実誤認を来す場合には再審を開始すべき余地があるとしつつも、本事件においては、これらの憲法の各規定に適合し、公開法廷における審理を実施したとしても確定判決の証拠関係等に変動はないから、これらの憲法違反が確定判決の事実認定に係る重大な事実誤認を来すものとは認められないとして、本事件の審理手続の憲法違反が再審事由(憲法的再審事由)になることを否定し、かつ、弁護団が提出した新証拠については、確定審の証拠評価に対して一定の疑問を呈するものであることは認めながら、核心部分の信用性を揺るがすものではないので、無罪を言い渡す明らかな証拠とはいえないとして、実体的再審事由についてもこれを否定したものである。

 ハンセン病であることを理由に通常の裁判が受けられず、特別法廷で差別・偏見に満ちた裁判しか受けられなかったことは、事件本人だけでなく、ハンセン病に罹患した患者・元患者はもとよりその家族など関係人の人々に多大な苦痛を与えたものであり、このような憲法に違反する裁判を是正することは、ハンセン病患者・元患者らの人権救済のために必要不可欠な手続であった。

 本決定は、憲法違反の審理手続及びそれによってなされた判決を是正することをしなかったという点において、憲法を遵守することを放棄し、また、事件本人及び広くハンセン病患者・元患者らの人権救済を拒んだものと言わなければならない。

 裁判官は憲法尊重擁護義務を負い(憲法99条)、司法は法の番人であって、違憲の確定判決を是正することは裁判所の責務であることは明らかである。にもかかわらず、再審請求を棄却した熊本地方裁判所の本決定に対し、当会は強く抗議する。そして、元被告人の名誉が回復されるための支援を続けるとともに、菊池事件で明らかになったとおり、憲法違反が再審開始事由と定められておらず、またえん罪の疑いのある確定判決について執行停止に関する定めもないなどといった再審法制の問題点を踏まえ、当会も日本弁護士連合会とともに、再審法改正に向けた活動をしていくものである。


2026年(令和8年)1月29日

熊本県弁護士会

会長 本 田 悟 士


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