キーパーソンから患者中心の医療へ
- 林田医療裁判

- 14 時間前
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林田医療裁判の公開質問状82は代行意思決定の廃止が国際的潮流であると述べました。本人に代わる意思決定よりも、本人の意思を支援する意思決定支援の重要性が高まっています。患者本人の意思を尊重し、国際的な基準に適合した医療体制を構築することが求められています。
●患者中心の医療
個人の尊厳と自己決定権は、世界人権宣言をはじめとする国際的な人権規範の根幹をなす理念です。医療の分野においても、患者が自身の身体と健康に関する決定をする権利は、基本的な人権として認識されるようになりました。
過去の医療は、医療従従者主導で治療方針が決定される傾向がありました。そこから患者の価値観や希望を重視する患者中心の医療への移行が進みました。これは、患者を単なる治療の対象としてではなく、感情や意思を持つ個人として尊重する考え方に基づいています。
今や医療行為に対するInformed Consent(十分な説明に基づく同意)の概念は自明のものとなりました。これは、患者が治療内容やリスク、代替案について十分な情報を得た上で、自らの意思で治療に同意する権利を保障するものです。
●林田医療裁判の問題
日本の医療現場における代行意思決定の問題は深刻です。林田医療裁判では、患者本人の意思が尊重されず、特定の家族がキーパーソンとなって治療方針を決定する危険性を浮き彫りになりました。林田医療裁判が提起した問題を解決するためには、キーパーソン制度の見直し、医療従事者の意識改革と教育が不可欠です。
●キーパーソン制度の見直しと透明化
現在の曖昧なキーパーソン制度を改善し、その選任手続きや役割、権限を明確に定義することが重要です。医療同意は一身専属権という原則に基づき、家族であっても本人に代わって行使できないという厳格な解釈を再確認すべきです。これにより、患者の自己決定権が最大限に尊重されるようになります。
「自己決定権は、一身専属性の権利であるから、厳格に解釈すれば、家族であっても本人に代わって行使できるものではない」(小林真紀「家族間における延命措置の葛藤」甲斐克則、手嶋豊編『医事法判例百選 第3版』有斐閣、2022年、201頁)
●医療従事者の意識改革と継続的な教育
医療従事者が患者の意思決定プロセスに関わる際、本人の自律性を最優先する意識を徹底する必要があります。家族の意見が、家族自身の希望ではなく、患者本人の意思に基づいていることを確認するための教育とガイドラインが不可欠です。
●体系的な教育プログラムの整備
医療従事者向けの教育は、最新の医療知識や技術だけでなく、患者の尊厳や権利を尊重するための倫理教育、コミュニケーション能力の向上にも重点を置くべきです。生涯にわたる学習を支援する研修制度や、多職種連携を強化するためのプログラムも重要です。
●働き方改革
医療従事者の働き方改革は、患者中心の医療を実現する上でも重要です。医療現場の効率化は、医療従事者が患者と向き合う時間を増やし、より質の高いケアを提供することにつながります。
林田医療裁判が提起した問題は、日本の医療倫理に対する重要な問いかけです。国際的な基準に適合し、患者一人ひとりの尊厳と権利が守られる医療体制を構築することが、今、求められています。
林田医療裁判の公開質問状82代行意思決定
キーパーソンをめぐる断絶





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