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ISO26000が照らす医療の社会的責任

  • 執筆者の写真: 林田医療裁判
    林田医療裁判
  • 2 日前
  • 読了時間: 7分

更新日:1 時間前

林田医療裁判の公開質問状3「社会的責任に関する国際規格ISO26000」を出してから2025年8月2日で六周年を迎えます。公開質問状は医療の透明性や信頼性、そして患者の権利を重視するすべての人に響く内容を目指して、ISO26000の枠組みを通じて林田医療裁判が投げかける課題と可能性を探りました。


六周年は医療消費者にとって自らの権利と責任を再確認する絶好の機会です。医療を受ける私たち患者が、医療機関に対してどのような社会的責任Social Responsibilityを求め、そしてその責任がどのように果たされるべきかを深く考えるための重要な節目です。医療という社会制度の「倫理的コンパス」がいまだ真北を示せていない現実に対する、深い問い直しのタイミングになります。


●林田医療裁判とは?

林田医療裁判は、患者の長女が医療機関や医師の対応に疑問を呈し、公正な説明責任や透明性を求め、医療消費者(患者やその家族)の視点から医療のあり方を問い直しました。公開質問状3では、国際規格ISO26000を参照し、医療機関の社会的責任を追求する姿勢を示しました。


●林田医療裁判が問いかけるもの

林田医療裁判の公開質問状は、医療現場における安全管理のあり方や、患者への情報提供の適正性など、多岐にわたる問題提起を行ってきました。その中で注目すべきは、医療機関が組織として持つべき社会的責任に焦点を当てている点です。


医療機関は、生命と健康を扱うというその性質上、極めて高度な専門性と倫理性が求められます。しかし、それだけではありません。地域社会の一員として、また、患者というステークホルダーに対して、透明性のある運営、適切な情報開示、そして何よりも患者の安全と福利を最優先する責任があります。林田医療裁判は、まさにその責任の所在と、それが十分に果たされているのかという問いを投げかけています。


●患者中心の医療の実現

林田医療裁判の公開質問状は、医療機関が患者や家族の声を無視せず、対話を通じて問題解決を図るべきだと主張しています。これは、医療消費者にとって、自身の健康や命に関わる決断において主体性を発揮するための後押しとなります。


例えば、治療方針の説明不足や同意取得の不備は、患者の信頼を損なう要因です。公開質問状は、「複数人の家族の意見から本人の意思を推定する取り組み」や「「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の強調する繰り返しの意思確認」を求めています。


●ISO26000が示す社会的責任の羅針盤

林田医療裁判の公開質問状がISO26000を基盤にしている点は、医療消費者にとって特に重要です。なぜなら、ISO26000は、組織が社会に対して果たすべき責任を包括的に定義する国際的なガイドラインであり、医療分野においてもその適用が期待されているからです。公開質問状はISO26000を参照することで医療分野における社会的責任の重要性を広く訴えています。


ISO26000は、組織の社会的責任に関する国際的な手引きです。企業や組織が社会的責任をどう果たすべきかの指針を示す国際規格です。組織が自主的に社会的責任を果たすための行動原則や中核主題を示しています。人権、労働慣行、環境、消費者課題などを包括しながら、対話と透明性を核とします。


医療機関にISO26000の考え方を当てはめてみると、どのようなことが見えてくるでしょうか。

1.組織統治:透明性と説明責任に基づく運営

2.患者の人権尊重:十分な説明と同意に基づく医療、プライバシー保護、差別のない医療提供。

3.医療従事者の労働慣行:適正な労働条件、ハラスメントの防止、継続的な研修による質の維持向上。

4.環境への配慮:医療行為における環境負荷の軽減、医療廃棄物の適正処理、省エネルギー化、環境負荷の少ない医療材料の選択。

5.公正な事業慣行:医療サービスの倫理的提供、透明性のある会計、利益相反の管理、贈収賄の防止。

6.消費者課題(患者課題):患者からの意見や苦情への迅速かつ誠実な対応、患者の安全確保、医療情報の分かりやすい提供。

7.コミュニティへの参画・発展:地域住民への健康教育、地域医療連携への貢献、災害時の医療支援。


七つの中核主題は、医療消費者にとって直接的な影響を持ちます。例えば、消費者課題では、患者が正確な情報を得る権利や、治療に関する透明なコミュニケーションが求められます。林田医療裁判の公開質問状は、この「消費者課題」を中心に、医療機関が患者に対して果たすべき責任を具体的に問うています。


林田医療裁判の公開質問状が問題提起したことは、医療機関がこの規格の最も根幹にある「ステークホルダーとの誠実な対話」を果たしていない現実です。命に関わる判断の場で、説明責任や情報開示が軽視され、患者の意思が制度の都合に埋没していきます。この構造的欠陥こそがISO26000の射程に入ります。


●医療消費者の声は社会の羅針盤

林田医療裁判の公開質問状は、医療消費者に対する力強いメッセージを発しています。それは、「あなたには知る権利、問う権利、そして安全な医療を受ける権利がある」ということです。公開質問状は問いかけます。

・なぜ患者や遺族との情報共有が、法的義務に矮小化されているのか。

・ISO26000の「社会的責任」条項に照らした場合、これらの対応は透明性を欠いていないか。

これらの問いかけは、医療消費者――すなわち私たち一人一人――が、医療という制度に対して「倫理的説明責任」を求める権利を取り戻す運動でもあります。医療消費者にとって、ISO26000は「隠蔽」や「責任回避」に立ち向かうための武器となります。患者は、医療機関に対して質問し、納得のいく回答を求める権利があります。


医療の根底には「信頼」が必要であり、ISO26000が強調する説明責任とエンゲージメントは、医療制度を真に社会的なものに変える鍵になります。林田医療裁判はそれを可視化し、医療現場の沈黙に一石を投じました。


ISO26000は、林田医療裁判が問いかける医療機関の社会的責任と深く結びついています。医療機関は単に医療行為を行うだけでなく、組織全体として、より広い視野で社会に対して責任を果たすことの重要性を示しています。


ISO26000は、医療消費者と医療機関が共に持続可能な社会を目指すための道標です。医療消費者にとっては医療の透明性、倫理、信頼を求めるための強力なツールです。医療機関にとっては自らの社会的責任を評価し、改善するための強力なツールです。


林田医療裁判の公開質問状は、ISO26000を活用して、医療機関が患者の声に耳を傾け、信頼を築くための具体的な行動を促しています。これは医療消費者にとって「医療機関が自分たちの声を聞いてくれる」という安心感につながります。特に、医療過誤や不信感が問題となる場合、患者や家族が医療機関と対等な立場で対話できる環境が求められます。


●私たち医療消費者ができること

林田医療裁判の公開質問状は、医療消費者と医療機関が協働してより良い医療環境を築くための架け橋です。ISO26000の枠組みを通じて、医療機関は患者の声を聞き、透明性と倫理性を高めることで社会的信頼を獲得できます。


林田医療裁判とISO26000は、私たち医療消費者に、医療のあり方を共に考えていく側としての役割があることを教えてくれます。私たちは、医療機関がどのような理念を持ち、どのような形で社会的責任を果たそうとしているのかを、積極的に知ろうとするべきです。そして、疑問に感じたことや改善してほしい点があれば、声を上げることが重要です。


ISO26000のような国際規格は、遠い世界の規範のように感じるかもしれません。しかし、その根底にあるのは、私たち一人ひとりが安心して質の高い医療を受けられる社会を築くための共通の願いです。


林田医療裁判の公開質問状が投げかけた問い「医療機関は社会的責任を果たしているか?」は、すべての医療消費者にとって、自分たちの健康と尊厳を守るための行動を促す呼びかけです。そして今、六年を経て、私たち医療消費者に問われています。

「この問いかけを、自分のものとして受け止められるか?」

この節目に、私たち医療消費者が医療機関の社会的責任について深く考え、より良い医療の未来を共に築いていくための第一歩を踏み出しましょう。私たち一人ひとりが医療消費者として声を上げ、医療機関と対話を通じてより良い未来を築くことが求められています。あなたの声が、医療の未来を変える一歩になる。その可能性を信じて、行動を起こしましょう。


立正佼成会附属佼成病院への公開質問状(3)

林田医療裁判の公開質問状
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