明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。
杏林大学医学部付属杉並病院(旧立正佼成会附属佼成病院)に72回目の公開質問状を送付致しました。
世界の先進諸国に遅れないようにするには国民全体の医療認識を高めることです。いつまでも逃げ回っている時代ではないです。ご覧いただければ幸いです。
杏林大学医学部付属杉並病院 病院長 市村正一 様
公 開 質 問 状(72) 2025年1月6日
拝啓 明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。
今年初の公開質問状(72)をご送付いたします。5年前の2020(令2)年1月6日には第14回目の公開質問状をご送付しています。内容は林田医療裁判訴訟団が東京消防庁に提出した要請文についてです。
今回は、昨年11月30日にNHK ETVで全国放送されました特集「誰のための医療か?群大病院・模索の10年」と題したドキュメンタリー番組について学習致しました。
番組は遺族の「冷たい医療」「患者に寄り添わない医療」との厳しい言葉から始まりました。参加した遺族、医療者それぞれの思いを見つめます。腹腔鏡手術の医療事故発覚から10年。現在、群大病院はカルテ情報を患者と共有するなど前例のない改革を進めています。
群大病院の医療事故の問題として手術の危険性の説明が不十分であったことがあげられました。遺族は「簡単な手術という雰囲気であった」と語っています。病院側は患者や家族に危険性や死亡の可能性を説明済みと主張しがちですが、アリバイ作りのためにインフォームド・コンセントが使われることがあります。
番組でも医療従事者が「同意書を取る」という表現をすることが批判されました。同意のサインをもらうことが目的化してしまうのです。グローバルで求められるインフォームド・コンセントは患者が十分な説明を受けた上で主体的に同意することです。
群大病院に医療事故では死因が止むを得ない合併症と説明され、調査されませんでした。これは林田医療裁判と重なります。林田医療裁判ではカルテに死因は誤嚥性肺炎と記載されています。ところが医師は裁判の終盤の証人尋問で、誤嚥性肺炎は誤診で、多剤耐性緑膿菌(multidrug resistance Pseudomonas aeruginosa; MDRP)の院内感染が死因と証言しました(東京地方裁判所610号法廷、2016年6月1日)。死因が適切に調査・記録されず、有耶無耶にされました。
群大病院では医療事故を教訓に院内で全ての死亡事例をカルテでチェックする仕組みを作りました。このようにチェックする仕組みがあれば、誤診であるならばもっと早く指摘できたことでしょう。
さらに群大病院では患者とカルテを共有する仕組みを作りました。遺族は「当時カルテを見ることができたら、口頭での説明との矛盾を医師に追及できた」と残念がりました。これも林田医療裁判と重なります。林田医療裁判では患者の長男が「延命につながる治療を全て拒否。酸素吸入を拒否」したことがカルテに記載されています。これを読んでいたら他の家族は追及しまたは反対したでしょう。
今まで日本の医療問題は閉鎖された中で起こっていました。そしてうやむやのまま忘れ去られていました。しかし、それは過去のことになりつつあります。国民の努力によって少しずつ進歩し、医療に対する認識は向上しています。もはや医療機関が過去のように問題から目を背け、逃げ続ける時代ではありません。
いつものように2019年6月30日付の第1回公開質問状を以下に記載いたします。ご回答は郵送にてお願いします。国民の努力によって日本の医療は素晴らしい、と言える未来が来ることを願っています。
この質問状は、ご回答の有無にかかわらずネット上に公開させて頂きます。本年も、私達の活動にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
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公 開 質 問 状(2019年6月30日 第1回)
第1 質問事項
1.患者の家族の中の悪意ある人物により、経管栄養が操作されるリスクに対して、その予防や検知の対策を採っていますか。採っている場合、その具体的内容を教えてください。
2.複数人の家族の意見から本人の意思を推定する取り組み内容を教えてください。
3.「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の強調する繰り返しの意思確認を実現するために取り組みをしていますか。している場合、その具体的内容を教えてください。
第2 質問の趣旨
1 林田医療裁判では、経管栄養の管理や治療中止の意思決定のあり方が問われました。林田医療裁判の提起後には、点滴の管理が問題になった大口病院の連続点滴中毒死事件や自己決定権が問題になった公立福生病院の人工透析治療中止問題が起きました。また、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に改定され、意思確認を繰り返し確認することが求められました。林田医療裁判において問われた争点は「終了」しているのではなく、現代日本の医療の問題と重なり問われ続けています。
2 そこで、私達は林田医療裁判を経験し又その経緯を知った者として、広く医療の現状と課題について考察し、患者の安全と幸せは何かを探求しています。そして、このような問題は広く社会に公開して議論を深めていくことが、適切な医療を進める上で不可欠であると考えています。とりわけ貴病院は、経管栄養の管理や治療中止の意思決定の問題について直面された医療機関として、適切な医療を進めるためのご意見をお寄せになることが道義的にも期待されるところであると思われます。
3 従いまして、上記の質問事項に回答をお寄せ頂けますよう要請いたします。この質問と貴病院の回答はネット上に公開することを予定しています。このような公開の議論の場により、医療機関と患者ないし多くの市民の方が意見を交わし、相互の認識と理解を深め、適切な医療を進める一助にしたいと考えています。この公開質問状の趣旨をご理解いただき、上記の質問事項に回答を寄せていただきたい、と切に要望します。ご回答を連絡先まで郵送してください。回答締切日を二週間以内にお願い致します。
以上
群馬大学病院医療事故調査委員会報告シンポ
患者・家族とともに考える患者安全の推進と医療事故調査
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