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執筆者の写真林田医療裁判

誰のための医療か?群大病院・模索の10年

NHKはETV特集「誰のための医療か?群大病院・模索の10年」を2024年11月30日に放送した。群馬大学医学部附属病院の医療事故を取り上げたドキュメンタリーである。群馬大学病院の第二外科では2010年から2014年に腹腔鏡を用いた肝臓切除手術で術後、相次いで8人の患者が死亡した。8人を執刀したのはいずれも同じ医師で、全員が術後4か月未満に肝不全などで死亡した。この医師が行った別の開腹手術でも患者10人が術後に死亡していた。


番組は遺族の「冷たい医療」「患者に寄り添わない医療」との言葉で始まる。改革を求める場合に望ましい状態をスローガンとすることが定番であるが、逆に嫌なもの、避けたいものに注目することで問題が理解できる。ビジネスでもニーズよりもペインポイントの解消が重視される。


群大病院の医療事故の問題として手術の危険性の説明が不十分であったことがある。遺族は「簡単な手術という雰囲気であった」と語る。病院側は患者や家族に危険性や死亡の可能性を説明済みと主張しがちであるが、アリバイ作りのためにインフォームド・コンセントが使われることがある。


番組でも医療従事者が「同意書を取る」という表現をすることが批判された。同意のサインをもらうことが目的化してしまう。グローバルに通用するインフォームド・コンセントは十分に同意を得た患者の主体的な同意である。


死因は止むを得ない合併症と説明され、調査されなかった。これは林田医療裁判と重なる。林田医療裁判ではカルテに死因は誤嚥性肺炎と記載された。ところが医師は裁判の終盤の証人尋問で、誤嚥性肺炎は誤診で、多剤耐性緑膿菌(multidrug resistance Pseudomonas aeruginosa; MDRP)の院内感染が死因と証言した(東京地方裁判所610号法廷、2016年6月1日)。死因が有耶無耶になってしまう。


危険性のある腹腔鏡手術が何度も行われた背景に、難易度の高い手術ということで執刀医の功名心があった。手術件数の点数稼ぎである。


群大病院では医療事故を教訓に病院改革に挑んでいる。事故から学ぶ姿勢に感銘を受けた。院内で全ての死亡事例をカルテでチェックする仕組みを作った。林田医療裁判では裁判の終盤になってカルテの死因が誤診と証言した。群大病院のようにチェックする仕組みがあれば、本当に誤診があるならばもっと早く指摘できただろう。


さらに患者とカルテを共有する仕組みを作った。遺族は「当時カルテを見ることができたら、口頭での説明との矛盾を医師に追及できた」と残念がる。これは林田医療裁判とも重なる。林田医療裁判では患者の長男が「延命につながる治療を全て拒否」とカルテに記載されている。これを読んでいたら他の家族が追及できただろう。


公開質問状26群馬大学病院医療事故

ETV特集「誰のための医療か?群大病院・模索の10年」

群馬大学病院医療事故調査委員会報告シンポ

患者・家族とともに考える患者安全の推進と医療事故調査



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