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執筆者の写真林田医療裁判

林田医療裁判の公開質問状71プロフェッショナリズム

早いもので12月になりました。皆様にはお変わりなくお過ごしでしょうか。

本日、杏林大学医学部付属杉並病院(旧立正佼成会附属佼成病院)に71回目の公開質問状を送付しました。今回は、2024年11月24日、患者の権利法を作る会主催シンポジウム「医療基本法とプロフェッショナルリズム」についてです。医療のプロフェッショナリズムは、患者を中心に据えたプロフェッショナリズムをどう実現できるか、にあります。ご覧いただければ幸いです。


杏林大学医学部付属杉並病院 病院長 市村正一 様

公 開 質 問 状(71) 2024年12月2日

拝啓

 早いもので今年も12月となりました。高齢者の命の大切さ、たった一つの命にこだわって71回目の公開質問状を送付致します。


2024年11月24日、患者の権利法をつくる会は、医療基本法制定に向けての公開シンポジウム「医療基本法とプロフェッショナリズム」を開催しました。このシンポジウムは、日比谷図書館文化館4階小ホールとオンライン(Zoom)で行われ、全国の関心を集めました。

 

プロフェッショナリズム論は、1990年代から欧米で議論され始めました。背景に医師

中心主義から患者中心主義への転換があるとの指摘がありました。

以下は感想です。プロフェッショナリズムと言えば高度な専門性というイメージを抱きますが、患者の権利重視とプロフェッショナリズム重視が並行されることは興味深いです。医療は患者のためにあり、あくまで患者のための専門性です。医療の現場で患者を中心に据えたプロフェッショナリズムがどう実現できるか、今後の議論が期待されます。


続いて三人のパネリストが各々の立場から問題提起を行いました。一人目は渡辺弘司・日本医師会常任理事が医師の立場からお話ししました。プロフェッションは社会との契約であり、プロフェッショナリズムは利他的な態度に基づくものとの指摘がありました。

以下は感想です。

医療のプロフェッショナリズムは、患者やその家族に寄り添い、信頼を築く姿勢が不可欠です。しかし、医療が患者の視点と必ずしも一致していない場面もあります。

林田医療裁判では、立正佼成会附属佼成病院(当時)の主治医が「カルテ記載内容の補足として、私は、大事を取りすぎて、意思疎通ができないまま寝たきり状態になるのが最善とは言えない、という主治医の理念をわきまえた上での延命治療拒否だと思いました」と陳述しました(乙A第3号証8頁)。


この発言から浮かび上がるものは、医師の理念や考え方を家族が「理解するべき」とされる医療の在り方です。このような姿勢は本当に利他的と言えるのでしょうか? 患者やその家族が納得し、安心して選択できる医療が提供されるためには、医療従事者からの一方的な価値観の押し付けではなく、十分な意思疎通と確認が必要であると考えます。


二人目は野口百香・公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会長による医療ソーシャルワーカーの立場から、のお話しでした。医療ソーシャルワーカーは医療の現場で働きますが、福祉職です。その役割は患者や家族が直面する様々な課題をサポートすることにあります。

日本医療ソーシャルワーカー協会は、2024年3月に厚生労働省医政局長に「身寄りのない状態で意思決定が困難な人に生じる社会的課題に関する要望書」を提出しました。そこでは以下の要望を出しました。「医療を受ける権利は本人にあります。本人の判断能力が不十分またはない状態になっても、本人の意思が尊重されるための医療機関の対応の標準化を希望します」

これは林田医療裁判の公開質問状と重なります。公開質問状では「複数人の家族の意見から本人の意思を推定する取り組み内容を教えてください」と尋ねています。患者の意思が尊重されるためには、家族や関係者の意見を丁寧に聞き取り、それを基に患者が望む最善の選択を導き出すプロセスが重要になるからです。


三人目は、岡谷恵子・NPO法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会理事長による看護職の立場からのお話しでした。患者と医療専門職の関係の対等性が保証される文化や環境を実現させる必要があると指摘しされました。これも林田医療裁判の主治医の理念はアンチテーゼになります。  

医療現場では患者自身の声や選択が十分に尊重されない場面も少なくありません。関係の対等性は、このような医療の現状に対する重要な提言です。患者が自分の治療方針や生活について主体的に選択できる環境づくりが医療の質を向上させる鍵となります。


これは林田医療裁判で浮かび上がった問題とも深く関連します。同裁判では主治医が患者長男の延命治療拒否を主治医の理念をわきまえたものと陳述しました。ここに患者本人の希望はありません。このような状況は対等な関係性の欠如を物語っています。患者が専門家の知識を借りながらも、自分らしい選択を行える医療環境をつくること、その実現が、多くの・患者・市民にとって安心と信頼をもたらす第一歩となるのではないのでしょうか。


質疑応答では綱領などは素晴らしいが日本の医療現場の実態と乖離があるとの意見が複数出ました。

「総じて言えることは、言い方は良くないですが、みなさんのように上層部におられる方々は、充分にご理解されている倫理綱領などを充分にご理解されているのですが、実際が相当乖離していることが問題です」

「各お立場の方々の意識や倫理綱領は素晴らしいのに、現場はほど遠いが多いのです。それが問題なのです」


林田医療裁判を考える会からは以下の質問をしました。

***

日本医療ソーシャルワーカー協会「身寄りのない状態で意思決定が困難な人に生じる社会的課題に関する要望書」には「本人の判断能力が不十分またはない状態になっても、本人の意思が尊重されるための医療機関の対応の標準化を希望します」とあります。

標準化の具体的イメージを教えてください。

身元保証人やキーパーソンとなった特定の家族の意思を本人の意思の代わりにしてしまうことを避ける方策はありますでしょうか。

***

以下の回答がなされました。

野口「厚生労働省が「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を出している。協会の要望では全ての医療機関で倫理委員会の設置を求めている。意思決定ができない人の問題を倫理委員会で話し合う。本人の意思の手掛かりとなるものを探し出し、記録に残す」

鈴木「インフォームド・コンセントの延長でインフォームド・アセントというものがある。意思決定能力がなくても説明の場に同席する。家族の代諾は家族の思いに従って決めるのではなく、本人の最善の利益に従って決めなければならない。医療の現場では代諾の場合に本人を無視して決めてしまう問題がある」



日本の医療の現状は、病院格差があり、まだまだ十分ではない状態です。世界の先進諸国に笑われないように医療経営者・従事者及び市民が一体となって学習をして日本の医療レベルを上げることです。

第1回公開質問状を以下に記載いたします。この質問状は、ご回答の有無にかかわらずネット上に公開させていただきます。皆様で協議し開かれた医療を進める為の一助になることを考えます。より良い医療の実現を目指してまいりたいと存じます。日本の医療がさらに透明性を高め、信頼されるものとなるよう、皆様のご協力を心よりお願い申し上げます。よろしくお願い致します。


敬具



*****

         公 開 質 問 状(2019年6月30日 第1回)

第1 質問事項

1.患者の家族の中の悪意ある人物により、経管栄養が操作されるリスクに対して、その予防や検知の対策を採っていますか。採っている場合、その具体的内容を教えてください。

2.複数人の家族の意見から本人の意思を推定する取り組み内容を教えてください。

3.「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の強調する繰り返しの意思確認を実現するために取り組みをしていますか。している場合、その具体的内容を教えてください。


第2 質問の趣旨

 1  林田医療裁判では、経管栄養の管理や治療中止の意思決定のあり方が問われました。林田医療裁判の提起後には、点滴の管理が問題になった大口病院の連続点滴中毒死事件や自己決定権が問題になった公立福生病院の人工透析治療中止問題が起きました。また、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に改定され、意思確認を繰り返し確認することが求められました。林田医療裁判において問われた争点は「終了」しているのではなく、現代日本の医療の問題と重なり問われ続けています。


 2  そこで、私達は林田医療裁判を経験し又その経緯を知った者として、広く医療の現状と課題について考察し、患者の安全と幸せは何かを探求しています。そして、このような問題は広く社会に公開して議論を深めていくことが、適切な医療を進める上で不可欠であると考えています。とりわけ貴病院は、経管栄養の管理や治療中止の意思決定の問題について直面された医療機関として、適切な医療を進めるためのご意見をお寄せになることが道義的にも期待されるところであると思われます。


 3  従いまして、上記の質問事項に回答をお寄せ頂けますよう要請いたします。この質問と貴病院の回答はネット上に公開することを予定しています。このような公開の議論の場により、医療機関と患者ないし多くの市民の方が意見を交わし、相互の認識と理解を深め、適切な医療を進める一助にしたいと考えています。この公開質問状の趣旨をご理解いただき、上記の質問事項に回答を寄せていただきたい、と切に要望します。ご回答を連絡先まで郵送してください。回答締切日を二週間以内にお願い致します。

以上




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