富山市に住む江口實さん(80)が認知症と決めつけられ、強制的に入院させられ、本来飲む必要のない薬の影響で健康を害したとして、報徳会宇都宮病院と担当医師を損害賠償で提訴した。事前に長男が宇都宮病院に依頼していた。病院側に悪意がないとすると病院側の問題は病院側がキーパーソンと判断した家族の意見だけで判断したことが問題である。長男の冷たさやキーパーソン依存は#林田医療裁判 と重なる問題である。
「長男夫婦は私を認知症だと仕立て、借金の責任を私に押し付けて、自己破産でもさせようとしたのかもしれません。宇都宮病院はその長男夫婦側の言い分だけを聞いて、認知症ではない私を無理矢理入院させて、強い薬を飲ませて身体をおかしくさせたんです」(「「患者を鉄パイプで殴り暴行致死」「無許可で脳摘出手術」「酒に酔っただけの“患者”を20年間入院」“誤認入院”で提訴『報徳会宇都宮病院』の恐ろしすぎる悪名」文春オンライン2022年2月8日)
長男の冷たさは、林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号損害賠償請求事件、平成28年(ネ)第5668号損害賠償請求控訴事件)を取り上げたシンポジウムでも指摘された。林田医療裁判の長男は入院中の母親の経管栄養の流入速度(注入速度)を速めた。長男は「リハビリに行くのが遅くなる」という名目で速めた。母親はリハビリ後に嘔吐した。8月15日の経過記録には「Bedに戻り臥位になった時、嘔吐してしまう」とある。看護記録には「リハビリより帰室すると、クリーム色のエンシュア様のもの多量に嘔吐する」とある。
全ての医療行為は医療法等で医療機関等の管理者の責任で行うことが求められている。長男が母親の経管栄養の流入速度を速めたことは、これを無視する。長女は中野相続裁判さいたま地裁(平成30年(ワ)第552号・共有物分割請求事件、平成30年(ワ)第2659号・共有物分割請求反訴事件)で、これらの行為が民法第892条(相続廃除)の「著しい非行」に相当する又は準じる行為にあたると主張している。権利濫用は「著しい非行」に関係する。
長男は母親の「延命につながる治療を全て拒否」した。第12回「医療界と法曹界の相互理解のためのシンポジウム」では以下のように評された。「この長男の発言とか意見というのは、よく読み返してみるとかなり過激ですよね。そのようなことを言うかという感じですが、それに対して医療側は多分抵抗した可能性もありますが、何となくそれをやってしまったという状況です」(判例タイムズ1475号15頁)
さらにシンポジウムでは長男の冷たさに普遍性があることも指摘された。「10年ほど前に足立区のある地域の高齢者で、肺炎で入院した患者さんのDNARの設定率を調べたのですが、その時点では長男と同居しているとやたらDNARが設定されていました。私はそのとき長男って冷たいのだなと思っていたのです」(16頁)。
医療訴訟は専門性の高い分野であるため、逆に患者と医師・病院の問題と単純化して考えてしまう傾向がある。その結果、患者と家族や家族間の対立があると、それは医療再裁判とは別の問題と考えてしまいがちである。それどころか医師や病院側には家族の対立に巻き込まれた被害者と自分達を他人事のように捉える傾向がある。しかし、それが誤りであることを林田医療裁判や宇都宮病院裁判は示している。さいたま市立病院では2020年9月5日に息子が入院中の母親の首を絞めて殺人未遂容疑で逮捕された事件が起きた。
日本では、かつて「姥捨て」があったように「高齢者だからもう死んでもいいでしょう」などと高齢者の命を軽く扱う思想の人がいることは確かである。家族の中にも色々いて中には、自分達の利益などから親に死んでほしいと思っている悪意ある家族も存在する。この一部の家族の悪意がポイントになる。
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