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  • 執筆者の写真林田医療裁判

医療事故調査制度と医療基本法

医療基本法フォーラムは2022年3月6日(日)午後2時から4時まで医療基本法の学習会「医療事故調査制度と医療基本法~被害者救済・再発防止を通じての命の尊厳の回復~」を開催した。講師は医療過誤原告の会の宮脇正和会長。医療過誤原告の会は会報第40号『悲しみにくじけないで』(2018年7月1日)で林田医療裁判(立正佼成会附属佼成病院裁判)原告の手記を掲載した。

The Fundamental Law of Medical Care Forum hold a study session on the Fundamental Law of Medical Care, "Medical Accident Investigation System and the Fundamental Law of Medical Care: Restoration of the Dignity of Life through Victims' Relief and Prevention of Recurrence" on March 2022.


医療基本法フォーラムは医療基本法の制定を求めて声上げている複数の患者・市民団体から構成されている集いである。学習会はZoom Webniorで開催した。林田医療裁判を考える会からも参加した。


医療事故は誰にでも起こる。多くの人は自分や家族は医療事故に遭わないだろうと思うが、それは誤りである。誰が当事者になっても不思議ではない。医療事故は被害者と医療者の双方に傷を残す。医療事故は国民全体にとって非常に大きな課題である。


医療過誤裁判は過失の立証責任など被害者・遺族に厳し過ぎる。医療事故裁判は原告が勝てないとの言説が出回っているが、現実には原告側が6割勝訴している。医療機関が誠実に向き合わず、遺族が精神的負担で家庭崩壊した例もある。


個々の医療事故について被害者遺族の奮闘や負担を紹介した。この姿勢は医療過誤原告の会は30周年記念誌『たったひとつの命にこだわって 医療過誤原告の会三〇年のあゆみ』(2021年)とも重なる。「たったひとつの命にこだわって」とあるように孤独な闘いを強いられる医療事故被害者遺族の個別性を大切にする。


医療事故調査制度は病院の管理者が医療事故と判断した者だけを取り上げる。医療事故被害者の申し出に対応する機能がない。この問題は「『事例から学ぶ「医療事故調査制度」活用BOOK』出版記念シンポジウム~医療事故を再発防止に活かしてほしい~」でも指摘された。


コロナ禍では感染症対策を削減してきた医療政策のつけが露呈した。保健所の許可がなければPCR検査ができない。新型コロナウイルスに感染しても入院できない。自宅待機が強要されている。医療から国民が遠ざけられている。


最近嬉しかったエピソードとして、大阪高裁が強制不妊国賠訴訟で国に賠償命令を出したことなどを挙げた。


質疑応答では活発な議論がなされた。先進国が患者安全に取り組む中で、日本は遅れている。行政が取り組まずに被害者を苦しめる。被害者遺族個人の頑張りをいつまで続けるのか。


日本弁護士連合会は医療事故無過失補償制度を提言したが、実現していない。医師側にも調査究明をしないために無過失補償制度を歓迎する見解がある。


林田医療裁判を考える会から以下の質問をした。「無過失補償が難しい、または無過失補償では原因究明がなおざりにされるならば、裁判での立証責任の転換が解になりますが、その方向の動きはありますか」。回答は、裁判は具体的な事案の中で動く。特定の場合は医療側が証明するという枠組みになっていることはある。たとえば薬の添付文書と異なる使い方をして事故が起きたら、過失がないことを医療側が証明することが求められる。


医者だけでなく、医療関係者皆が注意して、患者中心の医療を考えるようにしていきたいとの意見が出た。これはチーム医療のも止めであり、林田医療裁判と重なる。チーム医療という言葉は普及するようになったが、特に大学病院では教授をトップにした縦割りのヒエラルキーになっている。


医療には医療事故を減らしたいという思いはあるが、患者主体という感覚が欠けている。Informed Consentという言葉は普及しているが、医療側は「Informed Consentを行う」と自分を主語にして考える傾向がある。医療者に患者の権利が根本にあるということを徹底する必要がある。





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