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代行意思決定の廃止

  • 執筆者の写真: 林田医療裁判
    林田医療裁判
  • 9月21日
  • 読了時間: 4分

医療の現場で、あなたの声は本当に届いていますか?「本人の意思を尊重する」――それは医療の基本であり、人としての尊厳の根幹です。けれども現実には、本人不在のまま“誰か”が治療の可否を決めてしまうケースが後を絶ちません。その誰かは、病院が任意に選んだ「キーパーソン」かもしれません。しかし、世界は今、こうした代行意思決定の仕組みに「NO」を突きつけています。


●世界が求める「本人中心」の医療

患者の権利と尊厳を第一に考える新たな動きが、世界中で広がっています。世界保健機関WHOは画期的なガイダンスを発表しました。WHO, Guidance on community mental health services: Promoting person-centred and rights-based approaches(特定非営利活動法人自律支援センターさぽーと訳「地域精神保健ガイダンス 本人中心で権利に基づくアプローチの促進」)。WHOのガイダンスは「代行意思決定の全面的な廃止」を明確に求めています。

「障害者権利条約は、人々が他の者との平等を基礎として公的、非公的な日々の意思決定を自ら行うことができるように、締約国に対して、他者による代行意思決定制度をすべて撤廃するよう求めています」(28頁)

「代行意思決定及び強制的措置、施設収容は、法的能力行使とコミュニティでの自立生活、その他の人権への支援に置き換えられなければなりません」(198頁)

「後見制度とその他の代行意思決定に関する法律を廃止し、法的能力を承認し、事前計画及び意思と選好の最善の解釈の原則を含む支援付き決定を促進する法律に転換すること」(200頁)

WHOのガイダンスは、すべての医療消費者にとって重要な意味を持ちます。患者が自分の人生の主役であり、医療の選択においてもその意思が尊重されるべきだという「本人中心」のアプローチに基づいています。本人の意思決定を代行するのではなく、本人が自らの意思を表明し、それを支援する体制こそが、真の人権尊重です。


●林田医療裁判が突きつけた現実

日本の医療現場では、代行意思決定が依然として根強く残っています。林田医療裁判では、病院が「キーパーソン」として定めた患者の長男が延命につながる一切の治療を拒否しました。

「「Y2は…延命につながる全ての治療を拒否した」「Y2……は高度医療を拒否した」ことを事実として認定していることからは、裁判所はY2(すなわち「キーパーソン」を、患者本人の意思を推定するものではなく、家族を代表してA(注:患者)に代わって治療に同意(あるいは治療を拒否)する者として捉えているとも考えられる」(小林真紀「家族間における延命措置の葛藤」甲斐克則、手嶋豊編『医事法判例百選 第3版』有斐閣、2022年、201頁)。

この判決は国際的な基準から大きく逸脱しています。本人の意思が確認されないまま、キーパーソンが治療拒否の決定を代行する――それは、本人の権利を奪う行為にほかなりません。患者の尊厳を損なう上に誤った選択を招く危険があります。あなたの人生の重要な決断を、誰かに勝手に決められてしまう。その危険が今の日本の医療には潜んでいます。


●キーパーソンの危険性

とりわけ問題なことは、病院が他の家族への説明もなく、任意に「キーパーソン」を選定してしまうケースです。このような代行意思決定は、本人の意思を無視し、家族間の信頼を損ない、医療の透明性を脅かします。後見制度でさえ、WHOは廃止を求めています。代行ではなく、「支援付き意思決定」――本人の意思と選好を最大限に尊重する新しい法制度への転換が、いま求められているのです。


●本人中心の医療がもたらす未来

WHOのガイダンスが示すものは、患者一人ひとりの意思を尊重し、地域社会の中で自立を支える医療の姿です。支援付き意思決定では、患者が自分の価値観や希望に基づいて選択できるよう、必要な情報やサポートが提供されます。このような医療は、単に治療の質を高めるだけでなく、患者の尊厳や自己決定権を守ることで、信頼に基づく医療体験を築きます。あなたが望むものは、自分の声を無視する医療ですか? それとも、あなたの人生を尊重してくれる医療ですか?


●「あなたの意思」が医療を変える

医療は、命を預ける場であると同時に、尊厳を守る場でもあります。「患者中心」「患者の権利」――これらの言葉は、私たち一人ひとりが声を上げることで実現できる未来です。あなたの意思が、医療を変える力になります。その第一歩は、「代行意思決定」の仕組みに疑問を持つことから始まります。自分の意思を尊重してくれる医療を求め、行動を起こしましょう。あなたの医療、あなたの選択。いま、変わるべき時です。


●ポイント

・WHOのガイダンスは、代行意思決定の廃止と本人中心の医療を強く推奨。

・日本の医療現場では、患者の意思が無視されるケースが依然として存在。

・医療消費者として、自分の意思を尊重する医療を求める行動を!


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