「働いて働いて……」高市首相発言の流行語大賞選出に抗議
- 林田医療裁判

- 19 時間前
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高市早苗首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」という発言が、「現代用語の基礎知識選 2025T&D保険グループ新語・流行語大賞」年間大賞に選ばれました。この受賞は、過労死問題に取り組む団体や、何よりも過労死遺族の方々に深い悲しみと怒りをもたらしています。
2025年12月11日、過労死問題に取り組む遺族団体らが東京都内で抗議の記者会見を行いました。立正佼成会附属佼成病院の小児科医であった夫を亡くした「医師の過労死家族会」の中原のり子共同代表は、以下のように批判しました。
「驚愕(きょうがく)した。遺族には最大の侮辱で、深く傷ついている」(「過労死遺族、高市首相「働いて×5」流行語大賞に抗議「遺族には最大の侮辱、深く傷ついている」」日刊スポーツ2025年12月11日)
「流行語大賞受賞には耳を疑った。家族にむち打つような行為だ」(「「働いて働いて」の流行語大賞に懸念 「言葉が独り歩き」―過労自殺遺族」時事通信2025年12月11日)
中原さんの夫は病院屋上から飛び降りて亡くなりました。「量的・質的に過酷な仕事が継続したことによって,故中原は、遅くとも平成11年4月には睡眠薬なしでは眠れない状態になり,「このままでは自分は病院に殺される」「俺は命を削りながら当直しているんだ」と家族に何度も訴えるようになった。大好きであったサッカーに対する関心も失い,8月にはストレスにより血圧が上昇し,倒れるなどした。8月には1週間ほどの夏期休暇を取ったが,翌日から平常勤務が開始する時であった平成11年8月16日午前6時40分ころ,佼成病院の屋上から飛び降りて自殺した」(小児科医師中原利郎先生の過労死認定を支援する会)
その後、立正佼成会は佼成病院を譲渡し、杏林大学医学部付属杉並病院になりました。杏林大学には杏林大学付属病院(東京都三鷹市)がありますが、そこでは医師に長時間労働をさせていたとして、2018年10月に病院を運営する「杏林学園」が三鷹労働基準監督署から是正勧告と改善指導を受けました。
「労基署の調査で、約700人の医師のうち約2%が「過労死ライン」とされる月80時間超の残業をし、100時間を超えた医師も数人いたことが判明した。さらに、一部では残業に対する割増賃金が法定の割増率を下回っていた」(「杏林大、医師に長時間労働 労基署勧告」日本経済新聞2018年1月20日)
医師に長時間労働 杏林大に労基が是正勧告
高市首相は自民党総裁選出後の所属議員向け挨拶で「馬車馬のように働いてもらう」と発言しました。これについても中原さんは夫が生前に残した「馬車馬のように働かされて、病院に殺される」との言葉を思い出し「怒りに震えた」と訴えました(「首相発言の年間大賞受賞に抗議 過労死の遺族「悲痛な声知って」」東京新聞2025年12月11日)。「馬車馬のように」という言葉は、自己の意思や健康を二の次にして働かされる、まさに非人間的な労働環境を象徴します。
流行語大賞選出は、働く人々の命を軽視し、過労死を生み出す土壌を肯定しかねない危険があります。過重労働は構造的な欠陥であり、けっして「美談」や「流行」として消費されてよいものではありません。
中原さんの言葉には、遺族の方々の憤りが凝縮されています。単なる流行語として消費される言葉の裏には、文字通り命を削って働いた人々と、その結果として深い悲しみと苦しみを抱える遺族の存在があることを、私たちは忘れてはなりません。
遺族らは「言葉が独り歩きする」ことへの懸念を抱いています。高市首相は「自らが政治家として職責を全うする決意を述べたものであり、誰かに同じ働き方を求める言葉ではない」と発言します。しかし、政治家が「身を粉にして働く」ことを強調するほど、現場ではそれが「過重労働の正当化」へとすり替えられていく危険があります。
今回の流行語大賞を巡る騒動は、私たちがどのような労働文化を是認するのかという根本的な問いを突きつけています。個人の努力や根性を強調する言葉の裏に隠された過酷な労働実態と、それがもたらす悲劇に、もっと目を向けるべきでしょう。過労死遺族の悲痛な叫びに耳を貸さず、言葉の軽薄な消費に走る社会のあり方を、今一度見直さなければなりません。
「「働いて働いて」の流行語大賞に懸念 「言葉が独り歩き」―過労自殺遺族」時事通信2025年12月11日
「首相発言の年間大賞受賞に抗議 過労死の遺族「悲痛な声知って」」東京新聞2025年12月11日
「過労死遺族、高市首相「働いて×5」流行語大賞に抗議「遺族には最大の侮辱、深く傷ついている」」日刊スポーツ2025年12月11日





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