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医療事故情報センター総会記念シンポジウム2025 医療事故調査制度のこれから

  • 執筆者の写真: 林田医療裁判
    林田医療裁判
  • 5月31日
  • 読了時間: 5分

医療事故情報センターは総会記念シンポジウム「医療事故調査制度のこれから -制度運用開始から10年を迎えて-」を2025年5月31日(土)に愛知県名古屋市中村区の愛知県産業労働センター(ウインクあいち)とZoomで開催した。総合司会は水野功・医療事故情報センター常任理事。林田医療裁判を考える会からも参加した。

The Medical Malpractice Information Center hold the symposium commemorating its annual meeting, "The Future of the Medical Accident Investigation System - 10 Years After the System's Launch' Representatives," on Saturday, May 31, 2025, at the Aichi Industry and Labor Center in Nakamura-ku, Nagoya, Aichi Prefecture. and Zoom.


基調報告は以下の二人が話した。

増田聖子・医療事故情報センター副理事長「医療事故調査制度の現状と課題」

城田健次・医療過誤問題研究会幹事「医療事故調査の実態に関するアンケート集計結果」


「医療事故調査制度の現状と課題」では報告して調査する医療機関と報告すらしない医療機関に二極化していると指摘された。医療機関の二極化は一般社団法人日本医療安全調査機構の令和6年度第3回医療事故調査・支援事業運営委員会でも指摘された。林田医療裁判の公開質問状74でも紹介している。


「医療事故調査の実態に関するアンケート集計結果」はアンケート結果を報告した。回答者50名のアンケートで医療法上の医療事故として事故調査が行われるべきと判断される事案であるにもかかわらず、事故調査が行われなかった事例として具体例の提示があった件数が75件もあった。


第1部「パネリスト報告」では、患者(遺族)、医療従事者、患者側代理人それぞれの視点から医療事故調査制度を論じた。患者(遺族)の視点からは宮脇正和・医療過誤原告の会会長が話した。本人や家族が医療事故に遭う危険は大きい。

2018年の世界患者安全サミットでは年間医療事故死者数が報告された。米国は20万人、英国1.9万人、ドイツ2万人と報告されたが、日本では医療事故死の公式な調査報告はない。日本は医療安全の分野も後進的である。日本の医療事故死者数は医療機関での死亡者約120万人の2%の約24000人と推計される。


医療従事者の視点からは以下の二人が話した。

深見達弥・島根大学医学部附属病院医療安全管理部教授「医療従事者(医療安全管理者)の視点から見る医療事故調査制度 医療事故として報告すること」

田中和美・群馬大学大学院医学系研究科医療の質・安全学教授「医療従事者(医療安全管理者)の視点から見る医療事故調査制度 医療事故調査の内容の質」


「医療事故として報告すること」では医療事故調査に載せることが最初のハードルになると指摘した。医療事故調査に対する管理者の事なかれ主義を指摘した。医療安全と言わなければ役職に就けないから医療安全と言っているだけという人も見受けられる。

「医療事故調査の内容の質」では医療事故調査の質も問題点として形式的調査の要素が強く、学びにつながる調査になっていないと指摘された。遺族は事実を知りたいという思いがある。

調査終了後の課題として改善の実施状況のモニタリングを挙げた。これは林田医療裁判の公開質問状と問題意識が重なる。公開質問状では「患者の家族の中の悪意ある人物により、経管栄養が操作されるリスクに対して、その予防や検知の対策を採っていますか。採っている場合、その具体的内容を教えてください」と質問している。

「医療事故調査の内容の質」は遺族との対話の質を高めることが重要と締めくくった。林田医療裁判の公開質問状のような取り組みも対話の質を高めることになるだろう。


患者側代理人の視点からは北海道、東京、兵庫、福岡等の各地の弁護士が報告した。

田畑綾子「患者側弁護士から見た北海道における医療事故調査制度の運用」では調査が行われなかった事例を紹介した。調査の求めに対して、無視する医療機関や「医療行為に問題ない」「合併症によるもの」と要件に嚙み合わない応答をするものがあった。


大森夏織「医療問題弁護団・東京「医療事故に関する団員アンケート」ご紹介」はアンケート結果を報告した。病院の対応が不誠実で調査に不信感があるなどの回答がなされた。センター報告書受領まで2年以上を要しており、期間が長すぎるとの不満が共通して見られた。


五十嵐裕美「医療事故調査の現状と課題 経験した事例から」では医療事故調査に該当すると考える事例18件中5件が医療事故調査されなかったと紹介した。5件のうちの1件は医療法外の事故調査がなされた。

病院の拒否理由は想定の範囲内(予期されていた)、単なる原病の進行である(医療行為に起因しない)。不作為型のケースで「医療行為に起因しない」と主張されることがあるが、これは要件を理解していないと考える。


小野郁美「一時救急診療所受診の翌日に心筋梗塞で死亡した事例 医療事故調査制度の希望はどこにあるか」は具体的事例を紹介した。情報の非対称性に配慮した対応として、カルテ開示に際して、手書き(外国語あり)で判読し辛い部分について、口頭で説明の上、手続き説明の場で交付されたとする。

Informed Consentは一方的な説明ではなく、共同意思決定として捉えられている。その背景には患者の人格の尊重にある。人格を尊重した対話的なあり方は、患者が亡くなった後の遺族との対話でも同じである。この指摘は林田医療裁判の公開質問状にも当てはまるだろう。


第2部はパネルディスカッション「医療事故調査制度10年の課題と展望」。コーディネーターは増田聖子・医療事故情報センター副理事長、柄沢好宣・医療事故情報センター嘱託弁護士。総括は柴田義朗・医療事故情報センター理事長。


パネルディスカッションでは以下の意見が出された。

・医療者も患者の権利について学ぶことは大事との意見が出された。

・法制度は最低ラインであるが、今は最低ラインを満たしているかも疑わしい。


医療事故情報センター総会記念シンポジウム2024

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