杏林大学医学部付属杉並病院(旧、立正佼成会附属佼成病院)に69回目の公開質問状を送付しました。今回は10月19日に行われましたシンポジウムの内容の一部をご紹介します。ご覧いただければ幸いです。
今回の質問状には載せていないのですが、シンポジウムでの話題に「オネストトーキング(正直な話し合い)」がありました。これは今、米国で普及しています。その医療行為にかかわった医療者と患者家族関係者全員が同席して全ての医療情報の開示と真実の説明がされます。患者側の目線で隠蔽やごまかしが起こらないようにチェックするということに感銘を受けました。医療者は真実を知っています。
もう少し学習したいと思っていますのでよろしく。
杏林大学医学部付属杉並病院 病院長 市村正一 様
公 開 質 問 状(69) 2024年10月21日
拝啓
少しずつ秋らしくなって来ていますがまだ暑い日もある今日この頃です。病院長先生にはお変わりございませんでしょうか。69回目の公開質問状をご送付致します。
2024年10月19日、「医療情報の公開・開示を求める市民の会」が、医療の質の向上と患者安全のための制度の改善を考えるシンポジウム「制度開始から十年「医療事故調査制度」の課題と展望」をオンライン(Zoom)開催しました。共催は医療過誤原告の会、患者の視点で医療安全を考える連絡協議会、薬害・医療被害をなくすための厚労省交渉実行委員会です。
医療情報の公開・開示を求める市民の会は医療界全ての健全化のために、悲惨な薬害・医療被害が繰り返されないために真のインフォームドコンセントがなされるために、医療情報の公開・開示を求めています。医療情報の公開には以下の様なレベルがあります。
・自分はどう診断されどんな治療を受けているのか:カルテ開示
・この薬は何という名前で単価はいくらなのか:レセプト開示
・ここの病院のスタッフ体制は十分なのか:自治体の情報公開
・この薬は認可過程で問題はなかったのか:国の情報公開
シンポジウムは講演とパネルディスカッションでした。医療事故調査制度に対する病院の格差が大きく患者安全に熱心な病院がある一方で、医療事故調査制度を避けようとする病院があるとの意見がでました。
医療事故調査制度は「管理者が予期しなかったもの」を対象とするとしています。しかし、管理者(病院長)の中には医療事故調査制度の対象になることを避けるために「予期しなかった」を狭くしようとする傾向があると指摘されました。高度な手術の場合は、死亡の可能性があったから予期したとされてしまう危険があります。
これに対して、死亡の可能性がある場合でも、予想外のプロセスが発生すれば「予期しなかった」と判断するとの意見が出ました。この視点は、医療事故調査の対象範囲を広げ、より多くのケースで原因究明や改善策を見つけることに繋がります。
医療現場では予期しないプロセスが発生し、その結果として患者の生命が失われることがあります。このような場合、管理者が事前に「死亡の可能性があった」としても、その背後にあるプロセスが予期しなかったものであれば、事故として調査されるべきという意見は、医療現場における安全性向上のために極めて重要です。
これは林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号損害賠償請求事件、平成28年(ネ)第5668号損害賠償請求控訴事件)も参考になります。林田医療裁判の入院患者はリハビリを行い、退院を示唆されるまで回復しました。ところが、患者の長男が経管栄養の流入速度を速めた後に患者は嘔吐し、体調が急変し、亡くなりました。この出来事は、まさに「予期せぬプロセス」と言えます。
林田医療裁判の公開質問状では、経管栄養の操作をどのように監視・防止されているのかについて問いかけています。「患者の家族の中の悪意ある人物により、経管栄養が操作されるリスクに対して、その予防や検知の対策を採っていますか。採っている場合、その具体的内容を教えてください」。経管栄養は医療行為であり、それを誰がどのように操作するかは極めて慎重に管理されるべきです。
医療事故調査制度の対象を狭めず、しっかりと目を向けることは、今後の医療の質向上に直結します。病院がどのように透明性のある対応を行うかは、患者・家族を含めて今後患者になるであろう人、つまり市民が関心を持つべき課題です。市民は病院側の対応を注視し、患者の安全が最優先される体制を求める声を上げ続けることが必要です。
第1回公開質問状を以下に記載いたします。質問の趣旨にもありますが、このような公開の議論の場により、医療機関と患者ないし多くの市民の方が意見を交わし、相互の認識と理解を深め、適切な医療を進める一助にしたいと考えています。この質問状は、ご回答の有無にかかわらずネット上に公開させていただきます。
季節の変わり目、夏の疲れも出る頃です。くれぐれもお体をご自愛ください。
敬具
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公 開 質 問 状(2019年6月30日 第1回)
第1 質問事項
1.患者の家族の中の悪意ある人物により、経管栄養が操作されるリスクに対して、その予防や検知の対策を採っていますか。採っている場合、その具体的内容を教えてください。
2.複数人の家族の意見から本人の意思を推定する取り組み内容を教えてください。
3.「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の強調する繰り返しの意思確認を実現するために取り組みをしていますか。している場合、その具体的内容を教えてください。
第2 質問の趣旨
1 林田医療裁判では、経管栄養の管理や治療中止の意思決定のあり方が問われました。林田医療裁判の提起後には、点滴の管理が問題になった大口病院の連続点滴中毒死事件や自己決定権が問題になった公立福生病院の人工透析治療中止問題が起きました。また、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に改定され、意思確認を繰り返し確認することが求められました。林田医療裁判において問われた争点は「終了」しているのではなく、現代日本の医療の問題と重なり問われ続けています。
2 そこで、私達は林田医療裁判を経験し又その経緯を知った者として、広く医療の現状と課題について考察し、患者の安全と幸せは何かを探求しています。そして、このような問題は広く社会に公開して議論を深めていくことが、適切な医療を進める上で不可欠であると考えています。とりわけ貴病院は、経管栄養の管理や治療中止の意思決定の問題について直面された医療機関として、適切な医療を進めるためのご意見をお寄せになることが道義的にも期待されるところであると思われます。
3 従いまして、上記の質問事項に回答をお寄せ頂けますよう要請いたします。この質問と貴病院の回答はネット上に公開することを予定しています。このような公開の議論の場により、医療機関と患者ないし多くの市民の方が意見を交わし、相互の認識と理解を深め、適切な医療を進める一助にしたいと考えています。この公開質問状の趣旨をご理解いただき、上記の質問事項に回答を寄せていただきたい、と切に要望します。ご回答を連絡先まで郵送してください。回答締切日を二週間以内にお願い致します。
以上
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