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医療事故調査・支援事業運営委員会2025/03/12

執筆者の写真: 林田医療裁判林田医療裁判

一般社団法人日本医療安全調査機構Japan Medical Safety Research Organizationが令和6年度第3回医療事故調査・支援事業運営委員会を2025年3月12日に東京都港区浜松町で開催した。議題は医療事故調査制度の現況等である。林田医療裁判を考える会からもZoomで傍聴した。

Japan Medical Safety Research Organization held its third meeting of the FY2024 Steering Committee for Medical Accident Investigation and Support Services in Hamamatsucho, Minato-ku, Tokyo, on March 12, 2024. The agenda included the current status of the medical accident investigation system. The Association for Hayashida Medical Trial observed the meeting via Zoom.


医療事故調査制度の2025年2月の現況について以下の報告がなされた。

医療事故報告 27 件(累計 3,309 件)

院内調査結果報告 22 件(累計 2,914 件)

相談件数 189 件 (累計 17,675 件)

センター調査の依頼件数 3 件(調査対象累計 281 件)


令和6年度事業計画書に「生成AIを用いた医療事故調査報告書分析・実践研修事業」を加える。院内調査報告書の整理・分析やセンター調査報告書の作成等の過程において、専門家等による分析の補助となる生成AIを開発活用する。事故調査報告書の要約や分類、発生の傾向の把握などを想定する。


委員から以下の意見が出た。

医療機関によって積極的に医療事故報告をするところと消極的なところと二極化が感じられる。

管理者の意識が低い。管理者が止めているとの話を聞く。管理者がもっと色々なところに相談し、医療事故報告をすることが再発防止になるという意識を持ってほしい。

今はオンデマンドのWebセミナーもあり、忙しくても意識があれば受講できるようになっている。

医療事故の基準が曖昧である。医療機関の説明不足がある。後出しで「予期した」と説明する。それは管理の問題であり、医療事故ではないと説明する。調査せずに「合併症」で終わってしまう。調査を進めるためにどうすればいいかを議論して欲しい。簡単な言葉で調査に入らないと説明することがあり過ぎる。

公表の仕方は厚生労働省の記者クラブで発表するなどして色々な人が知るようにして欲しい。


以下は林田医療裁判を踏まえた感想である。意見の中でも重要な指摘は、医療事故報告を積極的に行う医療機関と消極的な医療機関との二極化が生じている点である。第12回「医療界と法曹界の相互理解のためのシンポジウム」で林田医療裁判が取り上げられたが、出席した医療関係者から医療現場の感覚では、病院の対応に問題があったと指摘する発言が相次いだ。

・本人の意思確認が出来ず、病院が患者側のキーパーソンを決める場合、患者の意志が最も分かっている家族は誰か確認せず、同居している長男を安易に決めた点に問題があった。

・長男から延命治療を希望しない申し出があったとき、主治医一人が判断して対応するのではなく、チーム医療の多職種や、倫理委員会など、集団で今後の対応を検討すべきだった。

・チームとして対応していれば、終末期医療について、家族間に意見の相違があっても、家族に丁寧にヒアリングすることで、患者の意志を把握できる可能性があったのではないか。


意見の中で指摘されている「調査せずに合併症で終わらせてしまう」という問題も、林田医療裁判と重なる重要な論点である。医療機関が「医療事故ではなく合併症」と判断し、調査を避けることで、再発防止や医療の質改善の機会を失っている現状がある。


林田医療裁判ではカルテに死因は誤嚥性肺炎と記載されていた。ところが医師は裁判の終盤の証人尋問で、誤嚥性肺炎は誤診で、多剤耐性緑膿菌(multidrug resistance Pseudomonas aeruginosa; MDRP)の院内感染が死因と証言した(東京地方裁判所610号法廷、2016年6月1日)。死因が適切に調査・記録されず、有耶無耶にされた。


林田医療裁判を考える会の公開質問状では、過去の医療事故調査・支援事業運営委員会の傍聴内容を取り上げている。

林田医療裁判の公開質問状60医療事故調査・支援事業運営委員会

公開質問状36医療事故調査制度

医療事故調査制度の現状と課題

医療事故調査制度シンポジウム報道

『事例から学ぶ「医療事故調査制度」活用BOOK』出版記念シンポ開催


医療事故調査制度の現況報告
医療事故調査制度の現況報告

 
 
 

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