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執筆者の写真林田医療裁判

医療消費者が公開質問状を出し続ける意義


林田医療裁判の公開質問状は2019年に始まりました。世界患者安全の日も2019年にWHO総会で制定されました。共に5周年を迎えました。医療消費者medical consumerが病院に対して公開質問状を出し続けることには意義があります。公開質問状は問題を提起し、医療の透明性や患者の権利を守るための大切な手段です。


第一に医療の透明性向上です。医療機関は患者や家族にとって情報が閉ざされがちな一面があります。公開質問状を通じて、治療方針や医療事故に関する疑問を公開の場で問いかけることで、病院がその説明責任を果たし、情報が透明に提供されることが期待されます。医療消費者が情報を知る権利を行使し、病院の姿勢や対応を明らかにすることで、他の患者や家族も同様の権利を行使しやすくなります。


第二に患者の権利保護です。医療現場では、患者の意思が十分に尊重されないことや、医療従事者の判断が優先されることがあります。公開質問状を通じて患者の立場から病院に対する疑問や意見を提示することは、患者自身が自己の権利を守り、他の患者の権利擁護にもつながります。


「かつてのわが国の医師・患者関係は、契約関係というには程遠く、情報の圧倒的格差を前提にすべてを医師に任せて患者は文句をいわないという従属関係であった。しかし、患者は医療サービスを受ける消費者であるという意識が高まるとともに、治療の結果に対する医師の責任も問題とされるようになった」(松本恒雄「医療と消費者 今後の展望」国民生活研究第59巻第2号、2019年、4頁)

「近年,わが国では,脱パターナリズムの流れにより患者の主体的な医療が主張されており,医療サービス利用者である患者を「消費者」と捉えるようになっている。そして2000年頃,特に,病院の社会的責任 (HSR: Hospital Social Responsibility) として病院経営がステークホルダーにとる責任追及を強く問い始めたことで顕著となった。例えば,医療事故の頻発が事故に対する社会的関心を集中させたことや,病院あるいは医療行為への安全や信頼を損なう機会を患者に強く与えるなどの結果がそれである。そして,こうした契機が患者に対して,「消費者の権利」に準拠する「患者の権利」を強く主張することとなり,医療の質向上を求める意識変換へと繋がった」(田村久美、水谷節子「「医療消費者」の変遷からみた消費者教育研究への展望」消費者教育28巻、2008年、42頁)


第三に医療の質向上です。医療消費者が公開質問状を出すことで、医療現場での改善が促進されることがあります。たとえ病院がミスや誤診を認めないとしても、公開質問により改善の必要性が浮き彫りになります。結果的に、病院は同様の問題を繰り返さないための対策を講じ、医療の質が向上する可能性があります。公開質問状が病院側にとってのフィードバックとなり、組織全体の見直しや改善を促すきっかけとなります。


第四に他の患者への啓発です。公開質問状は、その内容が公開されることで、他の患者や家族にとっても大きな学びの機会となります。自分だけが問題に直面しているわけではないと知り、同じような問題に直面している人々が一緒に声を上げることができるようになります。また、質問内容から医療の問題点や注意すべき点を学び、自分自身の医療に対するアプローチも変えていけるかもしれません。


公開質問状は、患者と医療機関の間にある不透明な部分を明るみに出し、医療の透明性、質、そして患者の権利を守るための重要な手段です。社会全体で医療機関を改善するための方法にもなります。公開質問状を出し続けることは、個々の患者だけでなく、社会全体の医療をより良くするために意義深い行動です。


林田医療裁判の公開質問状五周年を迎えて






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