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患者のみかた あなたにとって納得できる医療とは

  • 執筆者の写真: 林田医療裁判
    林田医療裁判
  • 3 時間前
  • 読了時間: 5分

市民公開講座 医療事故調査制度施行10年「患者のみかた~あなたにとって納得できる医療とは~」が2026年1月17日に東京都千代田区の千代田放送会館で開催された。林田医療裁判を考える会からも参加し、医療消費者として、私たちが安全で納得のいく医療を受けるために何を求めるべきか、改めて考えるきっかけとなった。


●豪華な登壇者と協力体制

司会は、元NHKエグゼクティブアナウンサーの三宅民夫さん(元NHKエグゼクティブアナウンサー、立命館大学 衣笠総合研究機構 客員研究員)が務め、以下の3名の専門家がパネリストとして登壇した。

田中和美さん(群馬大学医学部 医療の質・安全学分野教授)

豊田郁子さん(イムスリハビリテーションセンター 東京葛飾病院 医療対話推進者)

木村壯介さん(一般社団法人日本医療安全調査機構 常務理事)


本イベントはNHKエンタープライズとNHK文化センターが主催し、医療事故調査・支援センター(日本医療安全調査機構)が共催。さらに日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本助産師会という主要な医療団体が後援し、読売新聞社が協力するという、まさに医療界全体で「患者の納得」に向き合う盤石な体制で開催された。


●納得できる医療とは?

冒頭で参加者のリアルタイム投票を実施した。「あなたにとって納得できる医療とは」の質問に以下の選択肢から回答した。

(1) 主治医にお任せできる

(2) 相談にのってくれる

(3) 診断と治療が早い

(4) 安全でミスのない


最も多かった回答は「安全でミスのない医療」であった。次いで「相談にのってくれる医療」が多くの票を集めた。これは、多くの患者が医療に対して抱く切実な願いを浮き彫りにしている。


患者が医療に「安全」と「相談しやすさ」を求めていることは、情報開示や説明責任の不足への不信感の裏返しである。命に関わる医療だからこそ、万が一のことがないよう最大限の安全性を求めている。また、不安な気持ちを打ち明け、共に考える医療者を求めていることが伺える。


パネリストの一人である豊田郁子さんは、ご子息の理貴さんを医療事故で亡くされた。当初、病院からの説明は「最善を尽くした」というものだけであった。しかし、その後、適切な治療機会を逃していたことが判明した。豊田さんの事例は、医療事故が起きた際に患者や家族が直面する絶望や、病院側の不十分な対応がいかに深い傷を残すかを物語っている。


医療事故に遭った時、患者やその家族が最も求めているのは、「何が起きたのか知りたい」「原因を調べてほしい」「家族の気持ちを知ってほしい」「同じ事故を繰り返さないでほしい」という、シンプルでありながら切実な願いである。しかし、現実には適切な情報開示や対話がされないことも少なくない。


医療事故調査制度は、このような痛ましい経験を繰り返さないために、医療事故が発生した医療機関で事故原因を調査し、再発防止に繋げることを目的とした制度である。民間の第三者機関である「医療事故調査・支援センター」が、医療機関からの報告を収集・分析し、医療の安全確保に貢献する。2014年6月18日に成立した医療法の改正に盛り込まれた制度で、2015年10月1日に施行された。


外国には第三者が調査する制度があるが、日本の医療事故調査制度は病院が調査する仕組みである。この仕組みには肯定面と否定面がある。

肯定面は警察権力などの介入を避け、プロフェッショナルの自律性を保つことである。

否定面は「その事故を調査するかどうかを決めるのが病院側である」点である。病院が「これは調査の対象ではない」と判断してしまうと、調査すらされない。プロフェッショナルの自律性は、講座で取り上げられた群大病院らを基準とすれば理解できるが、日本の全ての医療機関がそれに値するかは疑問なしとしない。


●共同意思決定

参加者のリアルタイム投票では「共同意思決定(シェアード・ディシジョンメイキング)をどう思うか」との質問が投げかけられた。回答選択肢は以下である。

(1) 大いに進めるべき

(2) 難しいと思う

(3) 状況によると思う

(4) わからない


回答最多は「大いに進めるべき」で50.1%と半数以上。次点は「状況によると思う」で44.2%であった。この結果から、多くの患者が医療者と一緒に治療方針を決めたいという強い願いを抱いていることが理解できる。


但し、「状況によると思う」の回答者からは、「病院側の人手不足」を懸念する声も上がった。医師や看護師の多忙な現状を考えると、じっくり話し合う時間を確保することは難しいと感じるかもしれない。


この人手不足の課題に対し、パネリストの田中さんは「働き方改革を進めるからやらないとはしたくない」と強く述べられた。医療従事者以外のスタッフが可能な業務を分担することで、医療従事者一人ひとりの負担を減らし、患者との対話の時間を確保していく意向を示された。


多職種のチーム医療は林田医療裁判の課題でもある。林田医療裁判を取り上げたシンポジウムでは以下の意見が出された。

「現在のポイントとしては多職種が関わったかというのが非常に大事で、そうすれば医師が気付かないところも看護師さんならば常日頃家族とも会っていますし、そういうことが分かっていた可能性もあるということで、やはりここから見えてくるのは医師が1人で決めているような書き方なので、この事例はそこが欠けているのではないかなと思います」(「第12回 医療界と法曹界の相互理解のためのシンポジウム」判例タイムズ1475号14頁以下)


市民公開講座は、医療事故調査制度が施行10年を迎える中、医療の安全と患者の権利について改めて考える貴重な機会であった。私たち一人ひとりが医療消費者として、自身の医療、そして大切な人の医療に積極的に関心を持ち、もしもの時には声を上げて疑問を呈することの重要性を教えてくれる。

患者のみかた

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