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執筆者の写真林田医療裁判

公立福生病院長宛に公開質問状

公立福生病院事件を考える連絡会事務局は公立福生病院長宛に公開質問状を提出しました。公開質問状では公立福生病院が訴訟上の和解後に発表した声明の問題を取り上げ、和解条項第1項の約束を病院がどう遵守するのかを問います。


公立福生病院透析中止事件民事裁判は訴訟上の和解が成立しました。

これについて福生病院はWebサイト上で声明を発表しましたが、訴訟上の和解の意義を曲解する内容になっています。


2021年11月11日


福生病院企業団企業長 兼 公立福生病院院長 松山 健 殿


公立福生病院事件を考える連絡会 事務局


公開質問状


 私たちは、2018年8月16日に、貴病院で亡くなることとなった女性患者さんへの貴病院の対応について、大きな問題があると考え、2019年10月17日に、亡くなられた女性の夫とご子息が、貴病院を相手に東京地裁に提訴した民事裁判(令和元年(ワ)第27986号)を支援してきたものです。

 2021年10月5日に成立した和解の条項に沿って、貴病院の医療が改善されることを強く希望しておりました。


 ところで、貴病院は、10月8日付で、この和解についての声明を、ホームページに発表されました。私たちは、貴声明を読み、貴病院が和解条項を誠実に順守されるおつもりがあるのかどうか、はなはだ疑問に感じております。

そこで、以下の質問をさせていただきます。


質問1 

貴病院の声明は、「令和元年12月にご遺族から当院に対して正式に民事訴訟が提起され」とされていますが、提訴した日付は、2019年10月17日です。提訴期日を誤記されるのは何らかの意図がおありなのでしょうか。今回の和解に誠実に向き合うのであれば、提訴の日付の記載を訂正されるべきであると考えますが、いかがでしょうか。


質問2 

貴病院の声明は、「毎日新聞により報道されていた医師が『死』の選択肢を提示し、患者を死へと誘導したという事実は存在せず、事実でないことが裁判所でも認められました。」とされています。これは、和解条項前文の解釈として不適当であり、事実とも異なり、本件和解の意義を曲解するものです。

 和解条項前文は、「一件記録上、被告病院の医師が、本件患者に対し、『死の選択肢』である透析中止を積極的に提案することで、本件患者を死に誘導した経緯があったとは認められない。」です。

 つまり、「訴訟記録を見る限りでは、‘積極的に’‘誘導した’とまでは判断できない、」と受け止めるのが妥当であると考えます。裁判所の判断の背景には、亡くなられた女性が貴病院で診察を受けた2018年8月9日午前10時台に行われた濱医師とのやり取りについてカルテに記載がないこともあるのではないかと思います。

 本件訴訟の過程で明らかになりましたが、貴病院では腎不全の患者さんに、透析の‘非導入’を提示していた事実は、以下からも明らかでしょう。

① 本事件が起こった時期を含む2017年から2019年の一定の時期の貴病院腎センターの病院指標に、「腎不全に対する代替療法は非導入、血液透析、腹膜透析、移植の4つの選択を提示し、患者とその家族に決定していただくように行っています。」と記載されていること。

② 他にも、『腹膜透析の情報誌VIVID』2016年7月発行号には、貴病院腎センターの中林医師と濱医師がインタビューを受け、中林医師は、「患者さんには、非導入・PD・HD・移植・ハイブリット(HDとPDを併用)から選んでもらっています。」と語っています。濱医師は、「透析をしないで自分は自然に天寿をまっとうする、本人の意思とそれを家族が理解すれば、ハッピーに終わることがあるんです。」と述べています。


 死亡することとなる選択肢を治療法と並べて提示していた故に、東京都も問題にしたように、20人(一部報道では19名)の透析非導入、4人の透析中止ということが起きたのではないでしょうか。

 私たちが貴病院に求めたいことは、今後、透析の非導入という選択肢を提示することなく、腎不全の患者さんが充実した人生を送れるように励ましつつ透析を行うことを進めてほしい、ということです。この私たちの求めについて、貴病院として、いかにお考えか、示してください。


質問3 

貴病院の声明は、続けて「以前に東京都から指導されていた診療録など記録に不十分な面があったことから、その点を踏まえ、遺族側との円満な解決をするに至りました。」としています。しかし、和解条項には「診療記録など記録に不十分な面」などという文言は出てきません。

 裁判所は、2021年7月14日の濱耕一郎医師の証言を踏まえた上で、「本件患者に対する透析中止に係る説明や意思確認について不十分な点があった」(和解条項前文)と指摘したのです。

 こうした認識に立って、和解条項の第1項においては、「被告は、原告らに対し、今後とも、東京都の指導事項を誠実に遵守し、医師、看護師その他の医療従事者が医療を提供するに当たり適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めること、医療ケア・方針決定に当たって患者にセカンドオピニオンを求められること、決定を留保できること、決定を変更できることを十分に伝え、意思決定後も、患者の病状変化等に応じて、適宜その意思に変更がないか家族等とともに確認するよう努めることを約束する。」と記載されました。

貴病院が原告に約束されたがゆえに、和解が成立したのです。貴病院の声明では、この約束に誠実に向き合う姿勢がまったく感じられません。


(1)和解条項前文で示された裁判所の見解や和解条項第1項の約束を、なぜ、「診療録など記録」の問題にしてしまっているのか、その理由をお示しください。

(2)和解条項第1項の約束について、貴病院はどのように考えられているのか、お示しください。


質問4 

2021年7月14日の証人尋問において濱医師は、透析を「対処医療」であるとしつつ、次のように述べています。

「これ根治の医療だと話は別で、本人が嫌がろうが何しようが説得をしてその治療を行えば元どおりに治るので、その説得はします。ただ,対処医療においては、その説得をしたことによる根治は得られないということになるので、積極的にその対処医療の何かの一つの選択肢を推し進める説明するということはうちの病院ではしていません。」

 しかし、裁判所は、和解条項前文で、「根治医療」と「対処医療」を分けることなく、「透析中止の判断が患者の生死に関わる重大な意思決定であることに鑑みると、一件記録上、本件患者に対する透析中止に係る説明や意思確認について不十分な点があった」と指摘しています。その上で、質問3で引用した病院の改善点が約束されたのです。


(1)この濱医師の証言どおり、貴病院全体として、「根治の医療」と「対処医療」を区別して、患者さんに対応されている、と確認してよろしいでしょうか。

(2)私たちは、「根治医療」であろうと、「対処医療」であろうと、患者のいのちを守ることが最も重要なことだと考えますが、貴病院の見解を示してください。


なお、この問題が社会に広く知られており、かつ、人命を守ると言う公益にかかわることでもあり、この質問状を公開させていただくことを、申し添えます。



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