「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会は2022年10月3日に岸田文雄内閣総理大臣と永岡桂子文部科学大臣宛てに抗議文「国連・障害者権利委員会の総括所見を無視しないでください!」を提出しました。
私たちは、2011年8月に出された「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(骨格提言)の完全実現を求めて活動している団体です。
障害者権利条約を具現化するには、「骨格提言」の完全実現が必要であり、同条約がないがしろにされるとき、「骨格提言」も死文化すると考えております。
9 月 13 日(火)、定例会見で永岡桂子文部科学大臣は、国連障害者権利委員会の総括所見について、「多様な学びの場において行われます特別支援教育を中止することは考えてはおりません」と、現行の分離教育体制を護持する見解を示しました。
障害者権利委員会が強く要請しているのは、分離教育をやめ、どの子どもも地域の普通学校で学ぶための法制度を含む国の政策です。永岡大臣は、この権利委員会からの強い要請を、総括所見が出てからわずか4日というこの日に、拒否する姿勢をとったのです。
私たちは、このことに断固抗議します。
また、障害者権利委員会は、文科省が4月27日に発出した「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(通知)」について、撤回することを求めました。
これは、特別支援学級在籍者は、在学時間の半分以上を特別支援学級で過ごさなければならない、という内容を、分離教育を強めようとした内容としてとらえた結果です。
文科省が現行の分離教育体制を護持する状況では、国内外でこのように受け止められるのです。
文科省の方針の根本が問われているのです。
こうした観点から、私たちは、以下のことを要請します。
1.障害者権利条約を遵守してください
障害者権利委員会は、権利条約に基づく政策を、日本が行うよう要請しているのです。これを拒否することは、権利条約そのものをないがしろにすることです。
日本国憲法の第 98 条の 2 項には、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と規定しています。さらにいえば、日本が 1981 年に合意した条約法に関するウィーン条約は、第 26 条で、「効力を有するすべての条約は、当事国を拘束し、当事国は、これらの条約を誠実に履行しなければならない。」(「合意は守られなければならない」)と明記しています。
以上の観点から、9月13日の記者会見発言を撤回し、権利委員会の総括所見に沿った政策を行ってください。
2.子どもたちを選別・分離する政策を、やめてください
少子化の中で、特別支援学校の生徒数だけが増加しているのは、まったく異常です。2020年度に比べて昨年度は、生徒数で1500人増え14万6千人、学校数で11校増えています。これは、選別分離が強められているとしか考えられません。
地域の人々から切り離される悲劇、寄宿舎生活や片道1時間半以上かける通学など、いつまで続けようとするのでしょうか。地域の普通の学校に行きたいと思っても、教育委員会をはじめとする行政からの圧力を受けてあきらめてしまう、との声は絶えません。
私たちは特に、総括所見の段落 52 の(a)の実現が欠かせないと考えます。
すなわち、「分離特別教育廃止を目的とする国の教育政策、法律および行政的取り決めによって、障害のある子どものインクルーシブ教育の権利を認め(中略)合理的配慮および必要とする個別の支援を提供することを保障すること。そのために、具体的な目標、時間枠および十分な予算を設定した質の高いインクルーシブ教育についての国の行動計画を採用すること」。
障害のある子どもが合理的配慮を受けながら普通学級で過ごす責任は、本人・保護者でなく学校と行政側にある。その責任を果たせるようにするための行動計画を国に創るよう求めたのです。
私たちは経験から、分離された特別支援学校や特別支援学級に通うと、地域に戻るのに苦労することを、身をもって痛感しています。分離された環境の中で、“地域社会に出る練習(自立活動)を”というのは、健常者の机上の空論です。
このような悲劇を終わらせるためにも、障害者権利委員会からの要請通り、ともに地域の普通学校で学び・生活する教育制度に転換すべきです。
以上
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