「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」は以下のように定める。「時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて本人の意思が変化しうるものであることから、医療・ケアチームにより、適切な情報の提供と説明がなされ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるような支援が行われることが必要である。この際、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等も含めて話い合いが繰り返し行われることも必要である」
林田医療裁判では長男が「延命につながる治療を全て拒否」し、長男の意向で治療方針が決められた。「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」からは問題性が理解できる。第12回「医療界と法曹界の相互理解のためのシンポジウム」では長男の発言が過激との感想が出ている(判例タイムズ1475号15頁)。
「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」は医療実務に影響を与えている。厚生労働省医政局長は都道府県知事にガイドラインを周知した(医政発0314第7号「「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の改訂について」2020年3月14日)。東京都の公立福生病院への指導も、これを根拠とする。
東京都は透析中止事件が起きた公立福生病院に2019年3月6日に医療法第25条第1項に基づく立入検査を実施した。2019年4月9日に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に基づいた文書指導を実施した。
東京都は公立福生病院に以下の問題点があったと指摘する。「診療記録において、患者の意思の変化に対応できる旨の説明を行った記録を確認できないものがあった」
「診療記録において、本人の意思が変化した際に、医療・ケアチームが適切な情報の提供と説明を行い、本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるような支援を行った記録や、家族等も含めて話し合いを繰り返し行った記録を確認できないものがあった」
このため、以下の指導をした。「人生の最終段階における医療・ケアの方針決定については、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に沿い、適切に対応されたい」(東京都「公立福生病院への指導について」2019年4月9日)
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