東京都調布市の多摩川住宅の住民ら二人が管理組合に対して議事録の開示等を求めて裁判を起こした。住民ら二人の本人訴訟である。裁判の背景には多摩川住宅の建て替え計画がある。建て替えは莫大なお金が動くが、本当に必要であるのか問われている。
その口頭弁論が2021年12月20日10時10分から東京地裁立川支部403法廷で行われた。管理組合側は代理人弁護士だけが出廷した。原告の一人に対しては閲覧を認める内容の訴訟上の和解がほぼ成立した。もう一人の原告の問題が残るため、裁判所は主張を出すようにと求めた。
多摩川住宅の建て替えには批判の声が出ている。いくつかの棟は建て替え計画が進行しているが、ト号棟は建て替えにはならず大規模修繕によって住み続けることになった。管理組合が建て替えを名目に多額の出費をしていることやそもそも建て替える必要性がない物件であることなどをいち早く気いた住民は、他の居住者への説明を惜しまなかった。
業界紙は多摩川住宅の建て替えが既定路線であるかのように報道された(「【多摩川住宅】前例なき“巨大団地建て替え” 4者一体で取り組む」建設通信2018年1月27日)。しかし、建て替えせずに住みつづけることを望む住民もいる。
SDGs; Sustainable Development Goalsの11番目のゴールは「住み続けられるまちづくりを」である。莫大な資金を投入して、きらびやかな街づくりをするよりも、使いどころを考えるべきである。多摩川住宅はテレビドラマ『カルテット』のロケ地にもなった。この点でも建て替えは惜しまれる。
管理組合が建て替えのコストやリスクなどの不利益事実を十分に説明していないとの批判がある。住民はマンション建て替えの場合に区分所有者の負担する費用の上限を明言することを求めている。これに答えられない建て替えには天井のないリスクがあることになる。
区分所有権は建物の共有であって、管理組合が決めたことに一方的に従う関係ではない。管理組合運営には公正な手続きや透明性は不可欠である。建物の維持管理や建て替えの必要性から逆算して一方的に結論を押し付けることは本末転倒である。
ところが、日本では建物の維持管理や建て替えをスムーズに進める上で区分所有者の反対がネックになっているとの問題意識から管理組合の意思決定を迅速にできるようにしようとする議論がなされがちである。多摩川住宅裁判は林田医療裁判の支援者からの情報である。当事者の納得を置き去りに進める発想は、林田医療裁判の治療中止と重なる。
マンションの老朽化が問題視される。不動産業者や建築業者が自社の利益優先で、住民の不利益な建て替え計画を提案することがある。被害に遭わないよう居住者が真剣に考える時が来ている。気をつけないとせっかく貯めた管理費が業者の食い物になってしまう。高額なお金が動く。居住者一人一人が目を光らせていないと。後で泣きを見ることにならないように。
「大手デベロッパーが販売するマンションの場合は、長期修繕計画書を売り主か施工業者が作成することが多いが、ここに書かれた数字がデタラメだったというケースもある」(「2022年、タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか」週刊現代2019年8月17日)
これは東急不動産だまし売り裁判に当てはまる。東急不動産が江東区東陽に分譲したマンションは駐車場・駐輪場料金を一般会計に算入していた。ところが、管理会社の東急コミュニティーは駐車場・駐輪場料金を修繕積立会計に算入して長期修繕計画を作成した。管理組合理事長が発見し、計算し直したところ、築10年目の修繕で資金ショートが発生することが判明した。東急コミュニティーは契約書通り点検を行わないなどの問題もあり、管理会社をリプレースした。
第22回期日(第21回口頭弁論)本人尋問
長男夫婦の権利濫用が尋問のテーマです。
事件番号:平成30年(ワ)第552号・共有物分割請求事件、平成30年(ワ)第2659号・共有物分割請求反訴事件
2022年1月28日(金)午後1時30分
裁判所:石垣陽介裁判長、高橋祐子裁判官、牧野一成裁判官
場所:さいたま地裁C棟105号法廷
口頭弁論終了後に報告集会を開催します。弁護団から解説がされます。
お時間のある方は傍聴ご支援お願い致します。林田医療裁判や中野相続裁判を皆様とともに振り返り、さらに進んでいきたいと思います。
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