公立福生病院事件を考える連絡会が2021年1月26日付で田中良杉並区長に抗議・要望書を出しました。杉並区長がコロナ禍での命の選別を推進するガイドラインを小池百合子東京都知事に要望したことへの抗議です。
林田医療裁判を考える会も見過ごせない問題です。この問題については林田医療裁判ブログでも以下で論じています。
田中 良 杉並区長 殿
公立福生病院事件を考える連絡会
「高齢である・基礎疾患がある・障害がある」を理由にした「いのちの選別」推進に抗議します!
私たち「公立福生病院事件を考える連絡会」は、東京都下の公立福生病院で起きた透析患者に対する治療中止事件を通して、「医療は患者を救うことが基本であり、いのちの選別・切り捨ては容認できない」と活動している団体と個人のネットワークです。
2021年1月11日の『文春オンライン』に、「『小池都知事は責任を果たせ!』命の選別が迫る医療現場…杉並区長が“無策すぎる都政”を告発」との記事が掲載されました。
「小池都知事は責任を果たせ!」命の選別が迫る医療現場…杉並区長が“無策すぎる都政”を告発(文春オンライン) - Yahoo!ニュース
記事は、「生還できた人と、できなかった人の差は何なのか。国や都は早急に情報を公開して国民的・都民的な議論を行い、トリアージ(治療優先度の順位付け)のガイドラインをつくるべきだ。命の選別という重責を医療現場だけに押しつけられない」と、田中区長が、1月8日、小池百合子東京都知事に要望書を送付したと報じています。
田中区長は、インタビューに答えて、次のように述べています。
「例えばの話ですが、年齢を5歳刻みなどで、生還率や死亡率を示します。人工呼吸器などを装着して外せるまでの日数も重要なデータではないでしょうか。基礎疾患との関係もあります。これらデータや症例を、一般に分かりやすく公開するのです。・・・そうすると 、人工呼吸器などを付けても延命にしかならないようなケースが見えてくるかもしれません。・・・・これらをたたき台にして、都民の皆で考える材料にします。そうしたうえで、学会や有識者に相談しながらガイドライン化していくのです。」
つまり、高齢者や基礎疾患や障害のある人を切り捨てる基準を作れと求めているのです。
医療が逼迫し、多くのコロナ感染患者が入院できない状態であること、自宅療養中の方が急変して死亡、通常の救急患者の受け入れが出来ない等のニュースに私たちも不安と恐れを感じています。しかし、今、行政のやるべき仕事が「いのちの選別・切り捨てのガイドライン」作成でしょうか?いいえ、行政の責任者は、いのちの選別が起こらないようにこそ、努める責任があります。この記事では、医療体制の連携・拡充の具体策も、感染拡大を防ぐ検査等の対策も、まったく語られていません。
また、現場で苦闘している医師や看護師等、医療者の方々に対しても、水を浴びせるようなものです。例えば、‘日本透析医会’は1月15日に、「新型コロナウイルス感染症の透析患者に対する医療提供体制の整備について(お願い)」を発出して、COVID-19透析患者の病床確保や外来透析などの治療体制の整備を求めていますが、こうした努力を踏みにじるものです。
そもそも、欧米と比べて、日本のコロナウイルス感染者が一桁ないし二桁少ないにも関わらず、「医療崩壊が起きる」というのは、病床数や公衆衛生施策を削減してきた医療政策そのものに問題があるのではないでしょうか。コロナ患者を受け入れている民間病院と区外の都立病院や大学病院等が連携して感染対策に取り組める体制を作って下さい。また、保健所の人員拡充や職場環境の整備に今以上に力を注いでください。自宅療養を強いられている患者への訪問診療を充実させてください。
また、世界から、日本のPCR検査や抗原検査の少なさが指摘されてきましたが、以前に比べて検査数が増えてはいるものの、リスクの高い高齢者施設や障害者施設等では定期的な検査を行い、クラスターが発生しないように務めるべきです。
田中杉並区長には、上述のような努力を要請するとともに、以下のことを求めます。
(1)いのちの選別を推進する姿勢を改め、そうした趣旨のこれまでの発言を撤回してください。
(2)1月8日に都知事あてに提出した申し入れ書を公開してください。いのちの選別につながる内容を撤回する意思を、都知事に伝えてください。
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