麻酔薬大量投与の医療訴訟の判決が2022年3月31日、さいたま地裁で出される。てんかんの発作を起こして埼玉県内の民間総合病院に救急搬送された女性が入院後1カ月余りで死亡したことを医療過誤とし、女性の両親が病院側に損害賠償を求めた。当時25歳の女性は他に持病はなかったが、両親の同意もないまま麻酔薬プロポフォールなど大量の薬剤を投与された後、肝機能障害となり死亡。病院側は、女性が普段通院していた医療機関の主治医との連携もしていなかった。
女性は10歳で急性脳症になりてんかんを発症。12歳と13歳、17歳の時に救急搬送されたが、いずれも当日か翌日には帰宅した。25歳だった2010年4月7日夕、10分以上の発作が続いたため県内の民間総合病院に救急搬送され、抗てんかん薬を投与。この時点で発作は消失した。しかし、病院側は帰宅させず「経過観察のため救急ICU入院」とした。
翌8日午前、まばたきの発作を病院側はてんかんの重積な発作と判断し、プロポフォールの投与による全身麻酔療法を始めた。プロポフォールは人工呼吸器の装着が必要な上、肝障害を起こし得るため、家族の同意を得て使用すべきとされるが、病院側が両親に説明したのは投与開始後だった。
さらに13日には「脳波を平たんにするまで眠らせて鎮静する」として麻酔薬チオペンタールの投与も開始。複数の薬剤が16日までに規定量を超えて大量投与された。病院側は17日、両親に「CTを撮ったが肝細胞がどんどん死んでいる」と説明。女性は肝不全から肝性脳症を引き起こし、それによる脳浮腫が原因で脳ヘルニアとなり、5月12日に死亡した(松下英志「てんかんで娘が入院、1カ月後に死亡 問われる麻酔薬の大量投与」毎日新聞2022年3月15日)。
鎮静剤の大量投与は公立福生病院透析中止事件でも問題視された。鎮静剤ドルミカムの大量投与が直接の死因ではないかとの疑問が出されている。
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