top of page
執筆者の写真林田医療裁判

映画『PLAN75』

映画『PLAN75』は満75歳から生死の選択権を与える制度「プラン75」が国会で可決・施行された未来の日本を描くディストピア作品。オムニバス映画『十年 Ten Years Japan』で短編『PLAN75』を手掛けた早川千絵監督が自ら長編映画化した。2022年6月17日公開。


早川監督は以下のように語る。「2000年代半ば以降、日本では自己責任という言葉が幅をきかせるようになり、社会的に弱い立場の人を叩く社会の空気が徐々に広がっていったように思います。そして2016年、障害者施設殺傷事件が起こりました。人の命を生産性で語り、社会の役に立たない人間は生きている価値がないとする考え方は、すでに社会に蔓延しており、この事件の犯人特有のものではないと感じました。政治家や著名人による差別的な発言も相次いで問題になっていましたし、人々の不寛容がこのまま加速していけば、<プラン75>のような制度は生まれ得るのではないかという危機感がありました」


主人公の角谷ミチ(倍賞千恵子)がプラン75を選択した理由は、住まいと仕事を失ったためである。ミチを助けてくれるものはなく、追い詰められてプラン75を選択した。プラン75は「選択権を与える制度」という建前であるが、好きで選択したものではない。このようなものを自己決定とすることは根本的な誤りである。公務員的なアリバイ作りに過ぎない。住まいの貧困の問題である。


「プラン75」は心変わりした場合は、止めることもできる制度になっている。これは重要である。公立福生病院透析中止裁判では遺族から透析中止を止められることの説明がなされなかったことが問題として指摘された。訴訟上の和解では和解条項として「決定を留保できること、決定を変更できることを十分に伝え、意思決定後も,患者の病状変化等に応じて、適宜その意思に変更がないか家族等とともに確認するよう努める」と定められた。



一方で「プラン75」の止めることができる権利は徹底されていない。映画では対象者に感情移入したコールセンター担当者が涙声になりながら「止めることができる」と説明している。止めることができる権利も公務員的なアリバイ作りで設けられている感がある。






閲覧数:203回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page