卯の花に夏を思う季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
#林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号損害賠償事件、平成28年(ネ)第5668号損害賠償事件)を踏まえ、立正佼成会附属佼成病院に公開質問状(28)を送付致しました。今回はPOLSTをテーマとしました。POLST; Physician Orders for Life Sustaining Treatmentは生命を脅かす疾患に直面している患者の医療処置(蘇生処置を含む)に関する医師による指示書です。
新型コロナウイルス感染症が深刻さを増している中で患者がDNAR(心肺蘇生不要)や延命措置不要を表明していたか否かで治療内容が変わってしまう、正しく使われていないなどの問題が出ています。
患者側が早いうちの延命措置不要や心肺蘇生不要の指示によって安易に終末期とされて救命の努力が放棄される危険が浮上しています。気を付けなければいけません。
立正佼成会附属佼成病院 病院長 甲能直幸 様
公 開 質 問 状(28)2021年5月23日
前略
新型コロナウイルス感染症が深刻さを増しています。医療提供体制がひっ迫する中で患者がDNARを表明していたか否かで入院先や治療内容が変わってしまうという問題が起きています。そもそもDNARの決定が正しくなされているかという問題もあります。
この点でも林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号損害賠償請求事件、平成28年(ネ)第5668号損害賠償請求控訴事件)は重要な意味を持ちます。林田医療裁判において、立正佼成会附属佼成病院は、「延命につながる治療を全て拒否」した長男を独自にキーパーソンと主張しました。しかし他の家族らにはキーパーソンの説明をしませんでした。
そして佼成病院は、長男の治療拒否に応じたその日に治療を終了しましたが、他の家族の意見は聞きませんでした。これは日本臨床倫理学会「日本版POLST(DNAR指示を含む)作成指針」に反します。
「日本版POLST(DNAR指示を含む)作成指針」の「POLST(DNAR指示を含む)作成に関するガイダンス」では、以下の確認事項を掲げていますが佼成病院は、これらの確認をしていません。
「代理判断者の意思表示は,患者の立場に立ったうえで,真摯な考慮に基づいたものですか?」
「特に、家族等の判断や決定は、本当に『患者本人の意思を推定あるいは反映しているのか?』、もしかしたら『家族自身の願望とか都合ではないのか?』という倫理的に微妙な違いに敏感になる必要があります」
「家族等(代理判断者)は、患者と利益相反はありませんか?」
「家族等(関係者)内で、意見の相違はありませんか?」
家族がDNARを表明する場合、DNAR指示が患者の真意なのか、家族の指示ではないのかという疑問が出てきます(箕岡真子『蘇生不要指示のゆくえ―医療者のためのDNARの倫理』ワールドプランニング、2012年)。それを払拭するために必要な手順です。
POLST; Physician Orders for Life Sustaining Treatmentは、DNAR指示を含む「生命を脅かす疾患」に直面している患者の医療措置に関する具体的指示書です。DNARは心肺停止状態になった時に二次心肺蘇生措置を行わないことですが、DNARという言葉が一人歩きし、実質的な延命治療の差し控え・中止となってしまいがちです。このために、日本臨床倫理学会ではPOLST作成指針を定めています。
DNARについても誤用や拡大解釈は他所でも指摘されています。「DNARの下に基本を無視した安易な終末期医療が実践されている,あるいは救命の努力が放棄されているのではないかとの危惧が,最近浮上してきた」(丸藤哲「日本集中治療医学会「DNAR指示のあり方についての勧告」」2017年5月22日)
林田医療裁判では、患者の長男が治療を拒否したところ、岩﨑正知医師は、その日に治療を終了しました。結果、容体が悪化して呼吸困難になるも長男の酸素吸入拒否に従った岩﨑医師は、患者の酸素マスクを外しました。でも佼成病院は、夜間は手薄などで夜間に呼吸が止まらないように夜間だけ酸素マスクをして朝になると外しました。長男の要望と佼成病院の都合で治療方針が決められ患者は苦しい日々を強いられ死亡しました。
佼成病院では、家族間での相談なく長男だからと言う理由で安易に長男をキーパーソンとした決め方には大いに問題があると考えます。またキーパーソンの役割、権限などについても見直すべきと考えます。
前置きが長くなりましたが、いつものように未回答になっています公開質問状の1回目を下記に掲載いたします。また、公開質問状(25)では反延命主義について医療機関としての見解をお尋ねしました。公開質問状(27)では、杉並区長の「トリアージ発言」について杉並区の医療機関としてのご意見をお尋ねしました。開かれた医療を進める為には、今こそ市民と共に議論を深めることが必要と考えます。この質問状は、ご回答の有無に関わらずネット上に掲載し皆様と共に学習致します。
草々
公開質問事項は以下に記載。
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