患者安全奈良シンポジウム2023「医療の質向上と患者安全への患者参加の重要性」が2023年3月21日に奈良県立病院機構・医療専門職教育研修センターで開催された。患者中心の医療という言葉が語られるが、日本の医療の中で本当に患者中心の医療が実現しつつあるのか、特に「患者安全」の分野で患者中心という理念がどれほど生かされているのか疑問があるとの問題意識からのシンポジウムである。
Although the term "patient-centered medicine" is often used, it is questionable whether patient-centered medicine is really being realized in Japanese healthcare, especially in the area of "patient safety" and to what extent the philosophy of patient-centeredness is being utilized.
最初に隈本邦彦さんが開催趣旨を説明した。群馬大学病院医療事故調査報告書が出発点。改善された点もあるが、患者の権利という点が弱い。シンポジウムでは医療の質向上と患者安全のレベルアップのために「患者参加」が有効なのか、もし有効だとすればそれを医療の中に取り入れていくためにはどのようなシステムが必要なのかを議論する。
基調報告1は対馬義人「診療記録の共有--群馬大学医学部附属病院における患者参加型医療の実践、そして何が起こったか--」。群馬大学病院医療事故調査報告書は群大病院だけでなく、日本の医療に対する普遍的な内容を持つと感じた。患者参加には自身のケア、病院運営、医療政策への参加の3段階がある。
診療情報開示の目的は、よりよい信頼関係を築くことを目的とする。診療録や看護記録は患者の利益のために記録される。患者にとって不愉快な表現をしない。
患者の評判は良かった。自分のことをしっかり見てくれているとポジティブな意見がアンケートに書かれた。但し、カルテを見た患者に悪影響が出た例もある。ハイになる薬の副作用で多弁になったとカルテに記載した。カルテを見た患者が話さなくなった。
基調報告2は稲田雄「PFCC(患者家族中心の医療)とPX(患者経験価値)」。PXはPatient Experience。患者満足度Patient Satisfactionとは異なる。PXはプロセスの指標である。「医師は、あなたに分かりやすく説明しましたか」などを確認する。
基調報告3は岡本左和子「Patient advocate の経験から見た患者中心の医療」。『ジョージィの物語 小さな女の子の死が医療にもたらした大きな変化』の事例を紹介。Johns Hopkins Hospitalは「当院に落ち度があれば法的に争うことはしない」という方針を出している。
基調報告4は東光久「『患者力』が医療の質と患者安全を向上させる」。行動経済学では人は必ずしも合理的に行動するとは限らない。患者力は心理状態で上がったり下がったりする。患者の影響を受けて医療従事者も変わる。インスリン投与量を医師主導から患者主導に権限委譲して血糖コントロールが改善した。
第2部の総合討論ではResponsibilityは問われたことに答えなければならない責任との発言があった。立正佼成会附属佼成病院への公開質問状にも当てはまる指摘である。
群大病院第2回患者参加型医療推進委員会
医療事故・患者安全のシンポジウム
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