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執筆者の写真林田医療裁判

早川労災裁判と持ち帰り残業

文京七中・早川労災裁判(平成30年(行ウ)第427号公務外認定処分取消請求事件)で早川さんは持ち帰り残業もあったと指摘した。ところが、判決は的確な証拠がないというだけで否定した。「原告は、持ち帰り残業を含め、一日当たり平均して14時間程度の上肢業務を行わざるを得なかったと主張する。しかしながら、原告の主張する残業時間を裏付ける的確な証拠はない」(38頁)


持ち帰り残業を認めようとしない姿勢は厚生労働省と重なる。厚生労働省は過労死などの労災認定をする際の労働時間の算定について、持ち帰り残業で極めて厳しい基準をとるよう全国の労働基準監督署に通達していた(厚労省労働基準局補償課「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」2021年3月30日付)。判例は「銀行員がシステム統合の手引習得のために自宅で学習した時間」など「指揮命令下」とは言えない時間も労働時間への算入を認めていた。


通達によって労働時間が実態より過小に算定され、労災の「不認定」の増加につながる恐れがある。過労死弁護団は「働き方改革と言いながら、労災認定が増えるのは不都合だからではないか。(労働者より)経営側に立つ政権の意向に沿うためもある」と推測する(久原穏「仮眠や持ち帰り残業が「労働時間」に加算されない? 厚労省が基準厳格化、労災の認定後退の恐れ」東京新聞2022年1月19日)。


公務員は過労死をなくすという政治目標を歪めて、過労死が起きても過労死を認定しないことで統計上は過労死がないことにしようとしているのではないか。新型コロナウイル薄感染症でも保健所は検査を絞ることで感染者数を少なく見せようとしたと指摘されている。


通達が機密扱いとされた点も隠蔽体質がある。通達は家族を過労死で亡くした遺族ら関係者の情報公開請求で初めて明らかになった。



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