患者の権利を守る会は林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号 損害賠償請求事件)を踏まえて、立正佼成会附属佼成病院に2019年12月20日付で公開質問状(13)を送付しました。
小説には以下の表現があります。「死というものは、スイッチが切り替わるようなものはなく、相(フェイズ)が移ろうプロセスなのだ」(小島秀夫原作、野島一人著『デス・ストランディング 上巻』(新潮文庫、2019年、37頁)。安易な終末期判断は実態に反します。
立正佼成会附属佼成病院
病院長 甲能直幸 様
公 開 質 問 状(13)
2019年12月20日
前略
令和になって始めての春のお迎えにお忙しい事と思います。病院長様が私達との面談を御断りなされ、公開質問状にも一度もご回答されることもなく、第13回目の公開質問状のご送付になりました。
今回は、公開質問状(10)でふれています、2019年10月9日東京地裁「医療界と法曹界の総合理解のためのシンポジウム」で取り上げられた林田医療裁判の病院側の問題について検討しました。
1.「本人の意思確認が出来ず、病院が患者側のキーパーソンを決める場合、患者の意志が最も分かっている家族は誰か確認せず、同居している長男を安易に決めた点に問題があった。」
キーパーソンに関する貴院の対応について、以下が具体的意見です。
①キーパーソンを設定している病院は多いが、取り決めはなく病院によってまちまちである。あくまでも病院の便利のための設定であるため病院は患者や家族に役割権限を丁寧に説明するべき。
②病院の側から、キーパーソンは長男としたが、患者の気持ちを一番よく分かっているのが長男とは限らない。また病院は、他の家族に長男がキーパーソンになることの説明同意を取るべき。
③キーパーソンによる母親の治療拒否の要望があった場合は、十分協議を繰り返して家族には、利益不利益の説明をして同意を取るべき。
④家族に相談せず、病院が決めたキーパーソンが患者に損害を与えた場合病院はどう責任を取るのか。
⑤家族の中で誰をキーパーソンにするか、相応しいのは誰か、などは家族間で協議・決定する問題であって家族のことを何も知らない病院が決めるべきではない。
2.「長男から延命治療を希望しない申し出があったとき、主治医一人が判断して対応するのではなく、チーム医療の多職種や、倫理委員会など、集団で今後の対応を検討すべきだった。」
林田医療裁判で、長男が治療拒否を申し入れたのは8月20日ですが、岩﨑医師は翌日の21日から治療法を変更中止しました。医師ではない医学のことを何も分からない長男の要望に岩﨑医師は、何も説明することなく翌日から実行しました。
結果として、佼成病院側は岩﨑医師一人の判断で、患者側は家族の長男一人の考えでした。双方が複数人で協議することはなく、同意をとることもなかったので他の家族は知らなかった、という悪結果を招いてしまいました。
3.「チームとして対応していれば、終末期医療について、家族間に意見の相違があっても、家族に丁寧にヒアリングすることで、患者の意志を把握できる可能性があったのではないか。」
このように、病院がチームとして対応していれば問題は起きなかったことを指摘されました。
岩﨑医師は、裁判になってから「患者さんの意思確認はしない。キーパーソンさんと話す。意思疎通ができないのに命だけ長らえても意味がない」などご自分の考えを述べられました。また岩﨑医師は、患者が入院中にご自身の母親の介護について、「あの時の介護は地獄のようだった」などと長男に話されました。「岩﨑医師の理念を長男が理解したようだ」と岩﨑医師は語られています。
実際、患者は何も説明されないまま死んで行き、他の家族は、母親の死から2年経ってカルテを見て初めて事態を知りました。人の生死に関する考えは多様です。佼成病院の医師全員が岩﨑医師と同じ考えではないと思います。
担当した医師一人の考えで患者の生命が左右されてしまったことに林田医療裁判の悲劇がありました。
チーム医療として広く共有して一人の医師だけの判断に偏るのではなく2重3重のチェック体制が必要でした。
一度起きた悲劇は、又起こりうる可能性があります。生死に関わる患者の意思確認は重大事項説明として適正に行われなければならないです。改善するべきところは改善した上で、改善したことを内外に明らかにすることは当然行われるべきことと思います。
以上のように林田医療裁判における貴院の対応は、世間の関心事であり、林田医療裁判において問われた争点は「終了」しているのではなく現代日本の医療の問題として問われ続けています。
この質問状は、ご回答の有無にかかわらずネット上に公開させて頂きます。いつものように、2019年6月30日付 第1回公開質問状を以下に掲載致します。ご回答は2週間以内に郵送にてお願いします。
草々
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