中野相続裁判の長男は母親の経管栄養の流入速度を速め、延命につながる治療を拒否した。長女は、これらの行為が民法第892条(相続廃除)の「著しい非行」に相当する又は準じる行為にあたると主張する。この判断は国際規約に照らしてもなされるものである。
名古屋地方裁判所令和3年3月30日判決(平成30年(ワ)第3029号 建築工事差止等請求事件)は、マンション建設で幼稚園の日照阻害などが起きたことに対して、児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)を根拠にマンション業者に損害賠償を認めた。判決文31頁は「我が国も児童の最善の利益を考慮した施策を実施する責務を負っている」と記す。
高齢者医療や相続の分野にも国際的な規約は存在する。日本政府が批准した経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)は第12条で「この規約の締約国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める」とする。前文には「個人が、他人に対し及びその属する社会に対して義務を負うこと並びにこの規約において認められる権利の増進及び擁護のために努力する責任を有することを認識」とある。患者の長男の一存で治療を拒否して、患者本人の医療を受ける権利を奪ってよいものではない。
国連総会は1991年12月16日に「高齢者のための国連原則」(United Nations Principles for Older Persons)を採択した。高齢者は「発病を防止あるいは延期し、肉体・精神の最適な状態でいられるための医療を受ける機会が与えられるべきである」「尊厳及び保障を持って、肉体的・精神的虐待から解放された生活を送ることができるべきである」と定めている。
国連サミットは2015年9月に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を加盟国の全会一致で採択した。そこには持続可能な開発目標SDGs; Sustainable Development Goalsが掲げられている。SDGsは戦前の旧民法のような不平等な長子単独相続を否定し、全ての男性及び女性が相続財産に平等な権利を持つことを求めている。
ターゲット1.4「2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、全ての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する」(総務省仮訳)。
By 2030, ensure that all men and women, in particular the poor and the vulnerable, have equal rights to economic resources, as well as access to basic services, ownership and control over land and other forms of property, inheritance, natural resources, appropriate new technology and financial services, including microfinance
ターゲット5.a「女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、並びに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する」
Undertake reforms to give women equal rights to economic resources, as well as access to ownership and control over land and other forms of property, financial services, inheritance and natural resources, in accordance with national laws
中野相続裁判はSDGsに重なる裁判である。中野相続裁判における長女の主張はSDGs; Sustainable Development Goalsに寄与するものである。中野相続裁判訴訟団は持続可能な開発目標SDGsを支援している。
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