マイコプラズマ肺炎の感染拡大の危険がある。マイコプラズマ肺炎は肺炎マイコプラズマMycoplasma pneumoniaeを原因菌とする肺炎である。口から侵入して気道を通って細気管支や肺で感染を起こす。秋から冬にかけてさらに感染者が増える危険がある。
日本マイコプラズマ学会の理事で杏林大学の皿谷健教授は感染拡大の理由を以下のように述べる。「新型コロナウイルスの感染対策が緩和されたことで人々の行動が変わり、人と人との接触が増えたことが要因ではないか」(「マイコプラズマ肺炎 8年ぶり大流行 感染気付かず広がるリスク」NHK 2024年8月23日)
「マイコプラズマ肺炎は、主に感染者からの飛沫感染やエアロゾル、接触感染で感染します。熱やアルコールに弱いので消毒用アルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどが有効ですが、乾燥には強いのでしっかり除去することが必要です。不織布マスクの着用や手洗い、うがいといった基本的な感染防止が効果的ですが、咳や発熱が長引いたらマイコプラズマ肺炎を疑い、早期に専門医の診断を受け、適切に治療することが重要です」(石田雅彦「「マイコプラズマ肺炎」感染拡大続く。症状や感染予防などは #専門家のまとめ」Yahoo!ニュース2024年9月27日)
王子神谷内科外科クリニックの伊藤博道院長は以下のように指摘する。「最初の1日目や2日目は、通常の風邪との見分けを付けるのがなかなか難しいです。3日目になると、風邪であれば自然に治ったり、市販薬で治る頃です。マイコプラズマ肺炎の場合、3日目から咳がひどくなることが多いです。かなり深いところから出るような咳や、痰が絡んだり、ゼーゼーしたり、胸の痛みを伴うような肺炎の症状が出てきたら要注意です」(「マイコプラズマ肺炎の見分け方 「3日目の咳がポイント」 医師が解説する症状と対策」テレビ朝日2024年10月2日)
保育園からは「症状が出ていなくて、園に来たら夕方にぶり返して医者に診てもらったら、『マイコプラズマ肺炎』だったという子がいた」という不安の声も出ている(「高熱に乾いた激しいせき“歩く肺炎”マイコプラズマ肺炎が急増…検査キット不足で「みなしマイコ」も 対策は?新型コロナとの見分け方は?」FNNプライムオンライン2024年10月5日)。
新型コロナウイルス感染症COVID-19が2023年に5類に移行して以降、様々な感染症が再び流行している。インフルエンザや劇症型溶連菌などの感染拡大は、多くの人がコロナ以前の「日常」に戻ろうとすることに原因がある。
感染症対策が緩和されたことで、人々の行動は大きく変化した。対面での交流や大人数での飲み会、会食、さらには通勤ラッシュといった場面が増え、人と人との接触が以前の状態に戻りつつある。この「元通り」の生活スタイルが、感染症再流行の要因となっている。
日本社会には未だに対面コミュニケーション至上主義や宴会文化といった昭和時代の価値観が残っており、それが感染症拡大の一因になっている。これらの慣習は、企業文化や地域コミュニティの一体感を高めるとされてきたが、感染症予防の観点から見れば時代遅れであり、見直しが求められる。「会議は対面でなければ本気度が伝わらない」「会食をしながらでないと本音の意見交換ができない」といった考え方は、感染リスクを高めるだけでなく、私達の健康に対する無理解を示す。
新型コロナウイルスの流行は、私達の生活様式や価値観に大きな変化をもたらした。これを一時的な異常事態と捉えるのではなく、新たな感染症と共存していくためのNew Normalとして受け入れるべきである。以下のような生活様式を定着させることが考えられる。
オンラインでの会議やイベント参加を積極的に取り入れる。
職場や学校での集団活動を見直し、感染症流行期には活動を控える。
手洗いや消毒、マスク着用といった基本的な感染予防対策を継続する。
感染の疑いがある場合や体調不良時には、自己隔離を徹底し、職場や学校に無理に行かない風土を作る。
これらの習慣を定着させることは今後発生する可能性のある新たな感染症への対策にもなる。
医療消費者として、私達には自分自身と周囲の人々の健康を守るための責任がある。病院や医療機関任せではなく、自ら情報を収集し、予防行動をとり、必要な時には声を上げていくことが重要である。
今年の冬も感染症の流行が予想されるが、感染予防を意識しつつ、昭和の体質に縛られない新しい生活様式を確立し、健康な社会を築いていくことが医療消費者の役割になる。私達一人ひとりの行動が、未来の感染症対策の礎となることを忘れずに、これからも心がけていきたい。
ニパウイルス感染拡大の危険
劇症型溶連菌の感染急増
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