林田医療裁判はチーム医療について考えさせられる。第12回「医療界と法曹界の相互理解のためのシンポジウム」(東京地方裁判所、2019年10月9日)でも以下の意見が出された。
「チームとして対応していれば、終末期医療について、家族間に意見の相違があっても、家族に丁寧にヒアリングすることで、患者の意志を把握できる可能性があったのではないか」
これは林田医療裁判の公開質問状13で取り上げている。
チーム医療は、一人の患者に複数のメディカルスタッフ(医療専門職)が連携して治療やケアに当たるアプローチである。異なる職種のメディカルスタッフが連携・協働し、それぞれの専門スキルを発揮することで、患者の生活の質(QOL)の維持・向上や人生観を尊重した療養の実現をサポートする。患者や家族もチームの一員である。
チーム医療推進協議会はチーム医療を以下のように定義する。
「われわれが目指す「チーム医療」とは、医師をはじめとするメディカルスタッフが、患者とともに、それぞれの専門性をもとに、高い知識と技術を発揮し、互いに理解し目的と情報を共有して、連携・補完しあい、その人らしい生活を実現するための医療である」
多職種がチームを組む場合、以下のアプローチがある。
・マルチディシプリナリMultidisciplinary
・インターディシプリナリInterdisciplinary
・トランスディシプリナリTransdisciplinary
マルチディシプリナリは各々の職種が各々の専門分野の目標を設定し、アセスメントやケアを行うアプローチである。チームを構成する専門職間に階層関係があり、各専門職のチーム内での役割は固定的で相互作用性も小さい。この階層性が弊害になる。主治医を頂点として他職種は医師の補助というピラミッド構造になる。患者や家族の主体性を否定する医師のパターナリズムと相性が良い。
インターディシプリナリは一つの目標に対して緊密に相互連携し、ケアを進めるアプローチである。メンバー間に階層性はなく相互作用が高い。研究の世界では学際的研究と呼ばれる。
「専門医がチームを作るというだけでなく、チーム全員がディスカッションを行い、共通の治療ゴールへ向かって尽力するということがインターディシプリナリーアプローチのポイントです」(「インターディシプリナリーアプローチとは?土屋賢司先生インタビュー」Doctorbook academy 2016年12月2日)
トランスディシプリナリはチームの中で各メンバーが果たすべき役割を、意図的・計画的に専門分野を超えて横断的に共有した役割解放を行うアプローチである。インターディシプリナリと同じく、メンバー間に階層性はなく相互作用は高い。インターディシプリナリと異なり、役割固定性は弱い。トランスディシプリナリなチームは共通の問題に取り組むために共通の目標、共有する概念のフレームワークShared Conceptual Framework、共通のスキルを持つ。
※画像はAdobe Fireflyで自動生成しました。Adobe Fireflyはクリエイティブな生成AIです。SFの世界の病院のイメージを生成しました。
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