小林寛治著、和田知可志監修『ある医療訴訟 そこには正義・公正はなかった』(東京図書出版、2021年)は医療過誤被害者が自身の医療事故裁判を描いたノンフィクション。捏造したCT画像に騙されて、腹部大動脈りゅうの手術に誘導された挙句、重度の被害を受け、医療機関を相手に裁判を闘った。医療安全・事故の再発防止を目的に自らの実体験から現在の実態を告発する。著者は医療過誤原告の会の会員である。
医療訴訟は患者や遺族側にとって不利な訴訟である。患者や遺族と医療機関の情報の非対称性が著しい。裁判所は医療機関の主張を鵜呑みにする傾向がある。「正義・公正はなかった」との思いは林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号損害賠償請求事件、平成28年(ネ)第5668号損害賠償請求控訴事件)からも共感できる。
林田医療裁判ではカルテに死因は誤嚥性肺炎と記載されていた。その記載に基づいて主張立証を組み立てていた。ところが立正佼成会附属佼成病院は裁判の終盤になって、「誤嚥性肺炎は誤診で実は緑膿菌の院内感染」と変更した。誤診に対するケアは何もない。院内感染は重大な問題であるが、それに対するケアもない。佼成病院は2020年2月という早い段階で新型コロナウイルス感染症の院内感染が起きたが、「やはり」という印象を受けた。
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