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執筆者の写真林田医療裁判

林田医療裁判が判例時報に掲載

林田医療裁判の一審・東京地裁判決が判例時報2351号14頁(2018年1月11日号)に掲載された。判例時報は以下のように紹介する。


「脳梗塞による意識障害のため緊急入院して経鼻経管栄養の注入を受けていた八九歳の母親に対し、看護していた長男が医師に無断で栄養剤の注入速度を上げたことは違法であるが、そのことについて医師の管理責任の懈怠があるとはいえず、母親が誤嚥性肺炎等を経て敗血症及び急性腎不全により死亡したこととの因果関係がないとされた事例」


「長男が医師に無断で栄養剤の注入速度を上げたことは違法」は正しい。この点が明確にされることは意味がある。しかし、「看護していた長男」との説明は誤りである。母親は病院に入院中であり、長男は見舞いに来ていたもので、看護ではない。母親は突然倒れて緊急入院したもので、それまでは元気であった。長男が在宅で看護していた訳ではない。説明文は勝手に長男の看護疲れ・介護疲れの問題にしたがっているようである。


「医師の管理責任の懈怠がある」かは争っているところである。佼成病院は注入の開始時刻や終了時刻すら記録していなかった。大口病院など点滴などが悪意の第三者によって操作され、患者が死亡する事件が起きており、病院の責任が問われている。


「点滴や経鼻経管栄養に悪意が介在することは現実に起こり得ることであり、想定外との言い訳は成り立たない。それは病院の責任放棄であり、最善の医療を受ける権利の侵害である」(上告理由補充書(一)13頁)


次の説明文も長男の看護疲れ・介護疲れをミスリーディングさせる。「母親と同居しその生活の世話をしていた長男の意向も考慮し、終末期の延命措置をしないとした医師の裁量判断に過誤はないとされた事例」


長男夫婦は母親と同居していたが、母親は茶華道の教授者であり、年金収入があった。茶道と華道教室の収入が、月謝、茶会、初釜、朝茶、免状代、謝礼、祝儀などがある。弟子数が15名以上いた。月謝茶道1万円、華道1万円両方習っている弟子は1万5千円で8名いる。一ヶ月の月謝収入は、1万5000円×8+1万円×7で、19万円である。年間収入は228万円となる。茶華道教室維持費は別途、半年ごとに1人3000円を徴収している。年金収入だけでも年収200万円以上ある。


逆に長男夫婦は母親の入院時に母親のキャッシュカードを使用して母親の口座から300万円を引き出していた。長男夫婦は看護疲れ・介護疲れが同情されるような立場ではない。

判例時報の解説は一審判決が厚生労働省「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」に沿った判断をしていると述べる。ガイドラインでは家族が患者の意思を推定できないときは患者にとって何が最善であるかについて家族と十分に話し合い、患者にとっての最善の治療方針を採ることを求めている。「07年の指針は、患者本人の意思決定を基本とし、主治医の独断でなく、医師以外のスタッフも入ったチームで判断するとした」(野中良祐「人生最期の医療、繰り返し話し合うべき 指針改定へ」朝日新聞2018年1月18日)。


これに対して、判決はキーパーソンの意向だけで決めている点でガイドラインに反している。また、判決は容体悪化前の説明だけで説明したことにしており、病院は容態変化後に改めて説明していない。



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