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執筆者の写真林田医療裁判

墨蹟

更新日:3月24日

#中野相続裁判 #さいたま地裁 では掛け物の墨蹟の価値が問題になる。茶道表千家流の教授の母は、#茶道具 を沢山所持していた。母が、残した茶道具をどう分けるかが問題になる。

次回23回期日は、2022年4月22日(金)11時から、さいたま地裁C棟 105法廷。

The Nakano Inheritance Trial at the Saitama District Court is a trial for the division of our mother's belongings. The belongings included many tea utensils. The tea ceremony and Zen Buddhism are closely related. Of all tea utensils, hangings are the most important. In order to determine the value of hangings, knowledge of Zen Buddhism is also necessary.


茶室に入った者は、床の間を見る。床の間は掛軸や花生けを置く場所である。掛軸には禅語が書かれていることが多い。掛軸は、部屋の装飾の意味もあるが、禅の思想を表すものとして欠かせない要素になっている。掛軸はただ飾るためだけに置かれているのではなく、掛け軸の墨蹟を通して禅僧の心を味わうためにある。


古筆は、その字体の美しさはもとより、文字の気韻の深さと味わいによって鑑賞する。文字とは、ただ一字でも美しいものがあれば、それを見るだけで心が洗われるような趣きがある。文字には書き手の心が宿る。ここで言う「心」とは何か。それは単に言葉の意味ではなく、もっと深いところにある何かだろう。何かしら神秘的な感じを受ける人もいるかもしれない。それは茶室の場の雰囲気から醸し出されるものなのかもしれない。


茶会では禅僧の墨蹟がよく掛けられる。「「墨蹟」とは、中国では書蹟(跡)、つまり書と同じ意味で使われたが、日本では僧侶の書、中でも禅僧の書、厳密には臨済宗禅僧の書を指すという特異な意味合いを持っている」(石川九楊『思想をよむ、人をよむ、時代をよむ。』ミネルヴァ書房、二〇二一年、二一三頁)


「南方録」に「掛物ほど第一の道具はなし、客・亭主共に茶の湯三昧の一心得道の物也、墨跡を第一とす、其文句の心をうやまひ、筆者・道人・祖師の徳を賞翫する也」とある通りである。

上記文言の和訳は以下の通りである。「道具の中では掛け物が第一であります。客も亭主も、ともどもに茶の湯の道を究めることによって、精神の高みに到達しなければなりません。掛け物はその指標となるものです。それには墨蹟がもっとも適切であります。まず、その語句の心を知ること、次にその筆者である求道者、または禅僧の徳を敬うのです。」(戸田勝久訳『南方録』教育社、一九八一年、一〇八頁)


以下の解説がされている。

「其ノ掲グル所ハ修養ニ資クル語類ニシテ、静坐瞑想ニ耽ルベキ草庵ニハ至要ノ者ナレバ、一心得道ノ者ト云ヘルナリ。」(柴山不言『喫茶南方録註解 上巻』茶と美舎、一九七二年、一六三頁)

「客も亭主も、その墨蹟の文句によって心を統一し、席の情調を保ち、茶の湯の精神を浄化するものであるからで、これが本当の点茶の醍醐味である。」(中村直勝『茶道聖典 南坊録』浪速社、一九六八年、一一五頁)


禅宗では仏像や仏画の代わりに自ら師とする人の書蹟を拝することから墨蹟が尊重され、茶の湯の世界でも倣っている。村田珠光が大徳寺の一休宗純に参禅し、印可の証明として授けられた墨蹟を、茶席に掛けたのが由来とされる。このように禅僧との関係性を抜きにして墨蹟を論じることはできない。


掛け軸に「茶是長寿友」と書かれたものがある。これは「茶は是(これ)長寿の友」である。茶を飲むことは長生きと道連れという意味。栄西禅師は「喫茶養生記」で茶を摂取すれば長生きできると述べた。千利休は「茶の十徳」を説いた。十徳は諸天加護、睡眠遠離、孝養父母、消除重病、衆人敬愛、煩悩自在、無病息災、貴人相親、寿命長遠、悉除朦気である。このうちの寿命長遠が「茶是長寿友」と呼ばれるようになった。



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