公立福生病院透析中止死亡裁判は、腎臓病患者の女性が人工透析を中止して2019年8月に死亡したことに対して、遺族が公立福生病院を提訴した訴訟である。遺族の代理人弁護士は「医師が透析の中止を提案し、実際に中止した」と指摘する(「透析中止で女性死亡 遺族が福生病院を提訴」産経新聞2019年10月17日)。
裁判は東京地方裁判所民事第34部に係属している。以下の日程で進行している。
2019年10月17日、提訴
2020年7月22日、第1回期日、口頭弁論
2020年9月14日、第2回期日、弁論準備手続
2020年11月13日、第3回期日、弁論準備手続
2020年12月25日、第4回期日、弁論準備手続
2021年3月8日、第5回期日、弁論準備手続
2021年4月27日、第6回期日、弁論準備手続
2021年6月10日、第7回期日、弁論準備手続
2021年7月14日午後1時30分、第8回期日(証人尋問・原告本人尋問の見込み)
第6回期日で遺族側は準備書面を陳述した。
原告第6準備書面:医師意見書に基づく補充主張
原告第7準備書面:治療義務及び説得義務
原告第8準備書面:治療行為の中止に関する結果回避措置
原告第9準備書面:救命措置の不作為に関する補充主張
原告第10準備書面:被告準備書面(1)、同(2)への反論
遺族側の提出証拠には以下がある。
腎臓専門医・透析専門医の意見書(甲B19)
亡くなった女性の長男の意見陳述書(甲C7)
甲19は主治医だけで希死念慮に陥った患者を説得できない場合は、看護師やその他のコメディカル、あるいは精神科医師や臨床心理士の応援を得ながら、チームとして患者の心の救済に全力を傾けることが通常と指摘する(12頁)。チーム医療の重要性は林田医療裁判の問題提起とも重なる(平成26年(ワ)第25447号損害賠償請求事件、平成28年(ネ)第5668号損害賠償請求控訴事件)。
病院側は「血液透析は治療では無い」と説明する。これに対して遺族側は「血液透析は、腎不全という慢性疾患において、腎臓の代替をする治療である」と反論する(甲B19、13頁)。「血液透析は治療では無い」から東急不動産だまし売り裁判(平成17年(ワ)3018号)を想起した。
原告第6準備書面は、被害女性は不十分または誤った情報の下で透析離脱を決定しており、その意思決定に任意性・真意性は認められないとまとめている。自己決定権は形式的に本人の同意があるからOKというものではない。
中野相続裁判でも第6回口頭弁論(2019年4月5日)の裁判所の言葉「現物を見ないと選べない。その機会を保障しなければならない」が重要な意味を持つ(平成30年(ワ)第552号・共有物分割請求事件、平成30年(ワ)第2659号・共有物分割請求反訴事件)。
東急不動産(販売代理:東急リバブル)は隣地建て替えによる日照・通風・眺望喪失という不利益事実を説明せずに東京都江東区の新築分譲マンションをだまし売りした。東急不動産は裁判で東急不動産物件の窓が「眺望、採光、景観等企図していない」と主張した(被告準備書面2005年7月8日)。窓は眺望、採光、景観等を企図したものである。辞書は窓について下記のように定義する。
・大辞泉(小学館)「部屋の採光・通風などのために壁や屋根の一部にあけてある穴」
・大辞林(三省堂)「採光や通風のために、壁・屋根などに設けた開口部」
東急不動産の主張は「白い黒猫」と同じ詭弁である。一般常識と乖離しており、漫画やコントのネタとしてなら使えそうな主張である(林田力『東急不動産だまし売り裁判陳述書2』「眺望、採光、景観等の企図」)。「家にとっての窓は、肉体に対する五感にあたる」(カール・マルクス著、植村邦彦訳『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』平凡社、2008年、183頁)。
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