林田医療裁判は本人の意思によらない治療中止の問題を問います。東京都福生市の公立福生病院でも治療中止の問題が起きています。腎臓病患者の女性患者は人工透析治療中でしたが、透析治療を止める意思確認書を出しました。しかし、2018年8月15日に病室で夫に「(透析中止を)撤回したいな」と表明しました。夫は医師に「透析できるようにしてください」と依頼したが、再開されず、女性患者は16日に亡くなりました。
夫は治療を再開しなかった医師に不信感を持っています。「医者は人の命を救う存在だ。『治療が嫌だ』と(女性)本人が言っても、本当にそうなのか何回も確認すべきだと思う。意思確認書に一度サインしても、本人が『撤回したい』と言ったのだから、認めてほしかった」(斎藤義彦「透析中止の女性、死の前日に「撤回したいな」 SOSか、夫にスマホでメールも」毎日新聞2019年3月7日)。
東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター教授の小松美彦さんは、人の意思は変わるものであると指摘します(NHK『マイあさラジオ』「人工透析中止問題 ~自分の死は自分のものか~」2019年3月29日)。
林田医療裁判や公立福生病院の治療中止問題から患者の人権の危うさを感じています。「契約書に署名捺印したから、契約の意思表示があり、契約は有効に成立した」は悪徳商法の論理です。治療拒否の意思表示は尊重するが、生きたいとの意思表示は無視するならば、自己決定権の尊重ではなく、医療費削減の誘導になります。
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