皆様お変わりございませんか。
立正佼成会附属佼成病院改め杏林大学医学部付属杉並病院へ68回目の公開質問状を送付しました。
WHO世界患者安全の日(9月17日)にちなんでNPO法人「架け橋」は、2024年9月16日にWHO『世界患者安全の日』制定5周年記念シンポジウム 2024「患者参加型医療の実現に向けて 院内体制を構築するために」を開催しました。
世界患者安全の日は2019年にWHO総会で制定されました。この公開質問状も2019年に始まりました。共に5周年を迎えました。
シンポジウムでは、海外の動向として当初の患者・家族の参加という言葉からその後、患者参画(さんかく)へと進んでいることが興味深かったです。
これは、一緒に作っていくというニュアンスがあり、患者や家族が医療の質と安全を向上させるために、医療者らと協働することを指します。
当日は、10時から4時過ぎまでの長丁場でしたが、一部をご紹介しました。
朝夕は涼しくなりましたが、お体をご自愛下さい。
杏林大学医学部付属杉並病院 病院長 市村正一 様
公開質問状(68) 2024年9月23日
拝啓
残暑お見舞い申し上げます。
病院長先生には、新たな病院体制の下で益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。68回目の公開質問状をご送付致します。
NPO法人「架け橋」は、2024年9月16日にWHO『世界患者安全の日』制定5周年記念シンポジウム 2024「患者参加型医療の実現に向けて 院内体制を構築するために」を東京都文京区本郷の全水道会館とZoomで開催されました。世界患者安全の日WPSD; World Patient Safety Dayは2019年に制定され、2024年で制定5周年になります。
「架け橋」では、毎年、世界患者安全の日の前後でシンポジウムを開催しています。2024年のシンポジウムは患者安全における患者参加型医療に焦点を当て、よりよい院内体制を構築するための実践方法や事故調査と対話推進のあり方をテーマとしました。
シンポジウムの序盤は、海外の動向が紹介されました。英語圏では患者や患者家族の参加は当初involveという言葉が使われました。その後engagementが使われるようになりました。一緒に作っていくというニュアンスがあり患者参画と日本語訳されました。
患者参加(患者参画)とは、患者やその家族が医療の質と安全を向上させるために、医療者と協働することを指します。これには、以下のような様々なレベルでの参加が含まれます。
第一に診療への参加です。患者が自分の治療計画や意思決定に積極的に関与します。
第二に病院運営への参加です。患者が病院の運営や質改善活動に参加します。
第三に医療政策への参加です。患者や市民が地域や国レベルの医療政策の立案に関与します。医療政策の形成過程において、患者や市民の声を反映させることが重視されています。これにより、より良い医療サービスの提供が期待されています。
このアプローチは、患者中心の医療(Patient-centered care)や共同意思決定(Shared decision making)とも関連しており、患者が単なる受け手ではなく、医療チームの重要な一員として認識されることを目指しています。
患者・市民参画PPI; Patient and Public Involvementという用語もあります。これは患者やその家族、市民の方々の経験や知見・想いを積極的に将来の治療やケアの研究開発、医療の運営などのために活かしていこうとする取り組みです。
以下をご紹介します。
「わが国で患者参加型医療を推進するためには、医療者レベル、患者レベル、病院レベル、行政レベルでの対策が求められる。医療者に対し、患者参加型医療の重要性や医療コミュニケーション、共同意思決定の手法に関する研修を行うこと、患者・家族に対しても積極的に質問することの重要性を伝え、質問しやすい雰囲気、場を提供することが必要である。病院として、患者参加型医療推進を方針に明記し、患者諮問委員会やカルテ共有等のシステムを構築すること、医師の説明・記録に要する労力を軽減し、支援するための工夫も必要である。行政レベルでは、患者参加型医療を推進している病院・クリニックに対して診療報酬上の優遇措置、治療方針決定に際し意思決定支援ツールの活用や、医師以外の職種が相談に応じることに対する診療報酬加算なども期待したい」(小松康宏「患者参加型医療が医療の在り方を変える -21世紀医療のパラダイムシフト」国民生活研究第59巻第2号、2019年、73頁)
患者や家族もチームのパートナーになります。「患者や家族に耳を傾ける仕組みがあるか」などのチェックリスト作成の取り組みがあります。これは林田医療裁判の公開質問状にも重なります。公開質問状では「複数人の家族の意見から本人の意思を推定する取り組み内容を教えてください」と質問しました。
「医療対話推進者の質向上と医療機関内の医療安全管理部門との連携に関する研究」は厚生労働科学研究費補助事業の中間報告です。患者サポート体制充実加算は医療従事者と患者らとの良好な関係を築くため、患者支援体制が整備されている必要があり、専任の担当者の配置が条件となっています。研究では医療推進者が存在することで患者家族の満足度が向上し、職員の負担が減少し、対話の意識が醸成される効果が示唆されました。一方で医療機関の管理者には医療対話推進者を認知していない人もいる、とのことでした。
医療対話推進者の業務には医師の患者や家族へのインフォームドコンセントの同席などがあります。医療対話推進者は医療安全推進者と密に情報共有しているケースが多いですが、そうでないケースもあります。医療対話推進者の役割分担が明確になっていないケースもあります。
以下は中間報告の感想です。中間報告から医療対話推進者が活躍している医療機関はありますが、そうでないところもあることが分かりました。病院によってまちまちです。
林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号損害賠償事件、平成28年(ネ)第5668号損害賠償控訴事件)では立正佼成会附属佼成病院(現:杏林大学医学部付属杉並病院)は患者の長男をキーパーソンと定めて他の家族の意見を聞かず、「延命につながる治療を全て拒否」(医師記録(カルテ)2007年8月20日)した長男の意見で治療方針を決めました。
これを取り上げた第12回「医療界と法曹界の相互理解のためのシンポジウム」では「うちの病院では家族の意見を聞いてキーパーソンを定める。このようなことは信じられない」との意見が出ました。
日本では病院間格差が大きい現実があります。医療は規制産業であり、消費者はどの病院も一定の水準を満たしていることを期待します。その期待に応えられていないことが医療紛争深刻化の原因となることが考えられます。
「医療事故調査制度」開始10年 今できる課題への対応」では医師の行動原理であるprofessional autonomy and self-regulationという言葉が紹介されました。professional autonomyは日本でも唱えられる言葉ですが、self-regulationと合わせることで患者第一の医療になります。professional autonomyだけでは医師の独善に陥る危険があります。現実に以下の批判がなされています。
「日本のプロフェッショナル・オートノミーは、世界のprofessional autonomyとまったく『似て非なるもの』である。その違いの元は『患者の人権擁護を医療倫理の第一』とするかどうかである」(平岡諦「プロフェッショナル・オートノミー:日本医師会の情報操作と医療界のガラパゴス化」医療ガバナンス学会メールマガジンVol. 266、2010年8月19日)
林田医療裁判では、患者の長男の「延命につながる治療を全て拒否」で治療方針が決められました。これに対して主治医は「カルテ記載内容の補足として、私は、大事を取りすぎて、意思疎通ができないまま寝たきり状態になるのが最善とは言えない、という主治医の理念をわきまえた上での延命治療拒否だと思いました」と陳述しました(乙A第3号証8頁)。患者家族が医師の理念をわきまえることを求めています。東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の「わきまえている女性」発言は大きく批判されましたが、医師にも林田医療裁判の主治医のようにパターナリスティックな発想がある医師もいることが分かりました。
研究報告「医療機関内の医療事故の機能的な報告体制の構築のための研究」では、院長を中心として研修に積極的に参加して流れを理解することが重要。院長が理解していないと指示できない、などの指摘が出ました。
質疑応答では「死亡を予期していた」の判断基準が議論されました。医療機関が「この手術の死亡率は5%」と説明するだけでは予期していたことにならない。動画の事例では「予期していた」と主張したが、夜間に何の対応もしていない。予期していたならば死亡を避けるために対応しなければおかしいと説明されました。
林田医療裁判の主治医は、患者の長男の酸素吸入拒否に応じて患者の酸素マスクを外しました。でも患者は、貴院の都合で夜間だけ酸素マスクをして朝になると外されました。夜間だけ酸素投与をした理由を貴院は、東京地方裁判所で「もとより、酸素があるほうが本人は楽であろうが夜間は手薄なので夜間に呼吸が止まらないようにするものである」などと貴院の都合で夜間の死亡を避けていた対応を陳述しました(平成28年1月21日付準備書面19頁)。患者は苦しい日々の繰り返しを強いられ命を縮めて絶たれました(公開質問状(8)3頁・(15)1~3頁・(55)3頁参照)。これは患者を生かそうと努力する対応とは違います。
また「死因は感染症であった。事故は関係ない」と病院側に都合のいい説明がなされると指摘されました。これは林田医療裁判にも重なります。
林田医療裁判ではカルテに死因は誤嚥性肺炎と記載されました。ところが貴院は、裁判の終盤にきて証人尋問で、誤嚥性肺炎は誤診で、多剤耐性緑膿菌(multidrug resistance Pseudomonas aeruginosa; MDRP)の院内感染が死因と証言しました(東京地方裁判所610号法廷、2016年6月1日)。
その後、院内感染に関して貴院からは何の回答・連絡もありません。前回の公開質問状(67)でも述べましたが、医療現場において誤診や診断の不透明さは患者にとって深刻な問題であり医療への信頼性が損なわれます。それどころか裁判を混乱させるための戦略とも考えられます。正確な情報をお寄せ下さい。
2019年6月30日 第1回公開質問状のリンクを以下に記載します。
ご回答は郵送にてお願いします。質問状は、ご回答の有無にかかわらずネット上に公開させて頂きます。若い医療者はトップである病院長先生の言動を見て聞いて育ちます。日本の医療は素晴らしいと誇れる未来が来ることを病院長先生に期待します。
朝夕はいくらか涼しくなりましたが、まだまだ日中の暑さは続いています。くれぐれもお体をご自愛下さい。
敬具
コメント