患者参画Patient Engagementとは、患者やその家族が医療の質と安全を向上させるために、医療者と協働することを指します。これには、以下のような様々なレベルでの参画が含まれます。
第一に診療への参画です。患者が自分の治療計画や意思決定に積極的に関与します。このアプローチは、患者中心の医療Patient-centered careや共同意思決定Shared decision makingとも関連します。患者が単なる受け手ではなく、医療チームの重要な一員として認識されることを目指します。
第二に病院運営への参画です。患者が病院の運営や質改善活動に参画します。
第三に医療政策への参画です。患者や市民が地域や国レベルの医療政策の立案に関与します。医療政策の形成過程において、患者や市民の声を反映させることが重視されています。これにより、より良い医療サービスの提供が期待されています。
患者・市民参画PPI; Patient and Public Involvementという用語もあります。これは患者やその家族、市民の方々の経験や知見・想いを積極的に将来の治療やケアの研究開発、医療の運営などのために活かしていこうとする取り組みです。
英国では参画の段階を参加participation、エンゲージメントengagement、参画involvementの三段階に分け、患者・市民が単に一被検者として参加する「参加」と、研究者のパートナーとして協力する参画を区別します。逆に医療者が患者を巻き込むinvolveよりもengagementの方が患者主体のニュアンスが強いと位置付ける立場もあります。
患者参加との表現もあります。「わが国で患者参加型医療を推進するためには、医療者レベル、患者レベル、病院レベル、行政レベルでの対策が求められる。医療者に対し、患者参加型医療の重要性や医療コミュニケーション、共同意思決定の手法に関する研修を行うこと、患者・家族に対しても積極的に質問することの重要性を伝え、質問しやすい雰囲気、場を提供することが必要である。病院として、患者参加型医療推進を方針に明記し、患者諮問委員会やカルテ共有等のシステムを構築すること、医師の説明・記録に要する労力を軽減し、支援するための工夫も必要である。行政レベルでは、患者参加型医療を推進している病院・クリニックに対して診療報酬上の優遇措置、治療方針決定に際し意思決定支援ツールの活用や、医師以外の職種が相談に応じることに対する診療報酬加算なども期待したい」(小松康宏「患者参加型医療が医療の在り方を変える -21世紀医療のパラダイムシフト」国民生活研究第59巻第2号、2019年、73頁)
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