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執筆者の写真林田医療裁判

薬害根絶デー2024厚生労働大臣宛要望

全国薬害被害者団体連絡協議会は2024年薬害根絶デーに向けて厚生労働大臣宛に要望書を提出します。要望書は以下の項目から構成されます。

1、薬害研究資料館の創設について

2、筋短縮症被害者対策について

3、青少年を中心とした一般用医薬品の乱用対策について

4、市販後安全対策の強化について

5、承認条件、リスク管理計画について

6、HPVワクチンへの対応について

7、医薬品副作用被害救済制度の充実について

8、陣痛促進剤による被害の防止について

9、サリドマイドおよび類似薬のリスク管理システムについて

10、薬害防止教育の充実について

11、電子カルテの保存義務期間の延長について


薬害根絶デー厚生労働省要望


厚生労働大臣 武見敬三 殿

2024年8月23日


全国薬害被害者団体連絡協議会

代表世話人 花井十伍

(構成団体)

MMR(新3種混合ワクチン)被害児を救援する会

大阪HIV薬害訴訟原告団

(公財)いしずえ(サリドマイド福祉センター)

NPO法人京都スモンの会

薬害筋短縮症の会

薬害ヤコブ病被害者・弁護団全国連絡会議

陣痛促進剤による被害を考える会

スモンの会全国連絡協議会

東京HIV訴訟原告団

薬害肝炎全国原告団

イレッサ薬害被害者の会

HPVワクチン薬害訴訟全国原告団


要望書


全国薬害被害者団体連絡協議会(略称薬被連)は、薬害被害者当事者団体のみで構成される唯一の連絡協議会です。私たち薬害被害者は薬害根絶誓いの碑が建立された8 月24 日を「薬害根絶デー」としています。

薬害根絶誓いの碑は、1996年薬害エイズ裁判和解時に、「私たちに必要なのは国に慰霊をしてもらうことではなく、二度と薬害を起こさないことを誓ってもらうことである。」との遺族被害者の強い願いを受けて建立されたものです。いかなる制度も、そこにかかわる人たちの魂がこもっていなければ、本当に薬害を根絶するシステムにはならないという信念が、薬害根絶誓いの碑、建立を求める原動力となりました。

私たち薬害被害者は、私たちの受けた、筆舌に尽くし難い苦痛と悲しみを二度と誰にも味わって欲しくないという共通の思いから、さまざまな薬害根絶に向けた活動をおこなっています。近年新しいモダリティの新薬が次々と市場に投入されつつあります、こうした状況の下、さらなる安全対策の必要性を痛感しています。

本日薬害根絶デーに、下記の通り、厚生労働省に対し薬害根絶に向けた要望を致します。

つきましては、本日の協議の場において、真摯かつ前向きなご回答と意見交換をお願いします。

また、本日の協議の場においても、是非大臣にも出席をお願い致します。



1、薬害研究資料館の創設について

「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の「最終提言」によって必要性が提言された、薬害研究資料館について、薬害に関する資料を保存・展示・活用していくことについては、独立行政法人医薬品医療機器総合機構内に資料の展示コーナーが設置され、実際に閲覧できるようになるなどの取り組みが進められています。また、厚生労働省の研究班による薬害資料の保存・活用に関する研究も進められています。一方で薬害被害者団体により一般社団法人薬害研究資料館が設立されました。これらの種々の取り組みについて、国は適切に役割を整理し、長期的展望に立って、最終的にどのような資料館を目指すのかを明確に打ち出し、国が主体となって取り組みを進めてください。


2、筋短縮症被害者対策について

注射による筋拘縮症については全国の複数の親の会が起こした訴訟の際、1989年の山梨裁判控訴審と1996年の京都滋賀筋短縮症訴訟の和解において、国は筋短縮症の原因を認識し、公衆衛生の向上に努めると表明しました。主要な治療法は手術でしたが、関節可動域を広げるための対症療法であり手術での完治は難しく、その後の追跡調査も不十分なままで、当時の被害者の現状は明確ではありません。1985年に日本整形外科学会筋拘縮症委員会が「筋拘縮症の診断と治療」を発表し、手術以外の治療法も重要とされましたが、当時は加齢による二次障害を考慮されておらず、被害者は体の痛みや不調などを抱え、将来への不安がありました。筋拘縮症の症状はたとえ軽症としても運動器への影響が皆無ではなく、経年変化による二次障害を抱えています。被害者の年齢は40代後半から60代となり、多くは腰椎ヘルニアや脊柱管狭窄症などの運動器疾患も抱えており整形外科での治療の際には既往症としての筋拘縮症への理解が得られない場合が多い状態です。運動器疾患による痛みや二次障害を予防・軽減するためにはリハビリテーションで改善可能ですが、現在の保険診療では筋拘縮症は運動器リハビリテーションの対象外とされています。薬害筋短縮症の会では、2001年から被害者主体で厚労省に対して支援を要望しています。2003年に医薬品被害救済制度の活用を要望した際に、被害としては対象であるけれど1980年以前のものなので救済制度の対象外、また介護保険制度の特定疾病認定の申請をしましたが返答はありません。現行法での救済が得られないため2015年に難病としての救済を要望しましたが薬害であることを理由に裁判は終了しており救済の対象外とされています。


(1) 昨年の要望1.の回答は「全国的に医療体制を構築する要望があるが難しいのが現状です。厚生労働省は個別に医師や医療機関にアプローチし、できる限りの対応を検討しております。引き続き貴会と直接の話し合いをいたします」でした。当会といたしましても、引き続きの交渉で少しでも事態が改善することを希望しておりますが、個々の医師や医療機関に対する「できる限りの対応」とはどのような内容でしょうか。具体的にご回答をお願いします。


(2) 薬害筋拘縮症が運動器リハビリテーションの対象疾患に入らない理由についてご回答下さい。


3、青少年を中心とした一般用医薬品の乱用対策について

近年、一般用医薬品の過剰投与による健康被害が増加しています。一般用医薬品による依存患者も、2012年から2020年にかけて6倍に増加しており※1、高校生を対象としたアンケートの結果によると、60人に一人の割合で過去一年間市販薬乱用の経験があると答えています※2。こうした状況は、貧困などさまざまな要因が関係しているとはいえ、2006年薬機法改正で規定した、一般用医薬品販売の専門家関与が遵守されていないばかりか、インターネットで自由に購入できる体制が拡大したことも大きな要因と考えられます。厚生労働省は、こうした現状を深く認識し、特に未成年者の安全を守るべく、一般用医薬品の販売に際して専門家が十分関与するような制度を構想してください。

※1「薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究」研究代表者:嶋根卓也

※2「薬物使用と生活に関する全国高校生調査2021」嶋根卓也


4、市販後安全対策の強化について

現在薬機法見直しの議論が行われていますが、いわゆるドラッグ・ロス対策として、市販後調査のあり方について論点となっています。市販後調査が科学的合理性に基づいて行われるべきことには賛同しますが、単に企業の負担軽減を目的とした規制緩和には強く反対します。特に市販直後調査についてはより力を入れて行うよう法によって明確化するとともに、PMDAの安全対策部門の充実・強化を図ってください。


5、承認条件、リスク管理計画について

近年、承認条件を付する場合RMPの作成ならびに適性運用を求めていますが、企業によって遵守状況に差が生じています。承認条件のあり方を再検討するとともに、RMPが実践的に活用されるような制度を検討して下さい。


6、HPVワクチンへの対応について

(1) 積極勧奨、キャッチアップ接種の中止

HPVワクチンは、子宮頸がんそのものを予防する効果は証明されておらず、2022 年9月の公費による研究(NIIGATA Study)では、前がん病変の予防についても有意差が示せなかったという結果がでています。

一方、HPVワクチンの副反応は、①知覚に関する症状(頭や腰、関節等の痛み、感覚が鈍い、しびれる、光に対する過敏等)、②運動に関する症状(脱力、歩行困難、不随意運動等)、③自律神経等に関する症状(倦怠感、めまい、嘔気、睡眠障害、月経異常等)、④認知機能に関する症状(記憶障害、学習意欲の低下、計算障害、集中力の低下等)等多岐にわたる重篤なものです。2022(令和4)年4月からの接種の積極的勧奨再開後、被害者が増加しています。改めて、HPVワクチンの積極的勧奨を中止するよう強く求めます。また、初回接種が21歳以上では有効性ないことが研究によって明らかであるにもかかわらず実施されているキャッチアップ接種の中止を求めます。本年度で終了するキャッチアップ接種について、厚労省は自治体と連携して夏までに接種の呼びかけを強化する方針と報道されていますが、駆け込み接種を煽る対応であり、強く反対します。


(2) 治療法確立のための国の研究班の設置

HPVワクチンによる副反応被害が免疫介在性の神経障害であることは、国内外の多くの研究成果から示唆されています。近年明らかにされてきた筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)や新型コロナウイルス感染後の後遺症等と同様、自己免疫性の機序が考えられます。しかし、国はこのことに向き合うことなく、免疫学的な治療の研究に対して支援することもなされていません。副反応被害者を実際に多数診察してきた経験を持つ医師らによる研究班が組織されて、原因の解明と治療法の研究が進められることが、最も効果を有することは、薬害エイズ事件において実証されています。

被害者の願いは何よりも元の体に戻ることです。そのためには、こうした研究班による免疫学的な治療法の研究開発とその支援が不可欠です。厚生労働省には、こうした研究班を直ちに設置することを求めます。


(3) 診療体制の整備

積極勧奨再開に当たり、厚生労働省は、被害者の支援体制の整備を明言しましたが、被害者に対する支援の実情は、極めて不十分です。国が都道府県を通じて指定した協力医療機関も十分に機能していません。積極的勧奨の再開後に協力医療機関の受診者は再開後の20か月で226名に及び、再開前に比べて急増しています。

これまで以上に、被害者が信頼して受診できる診療体制の整備が急務となっています。しかし、協力医療機関を受診したのに医師から詐病扱いされた例や、医師が協力医療機関に指定されていることを知らなかった、適切な医療を受けられなかったという例が後を絶ちません。

前述しましたように、HPVワクチンによる副反応被害が免疫介在性の神経障害であることは、国内外の多くの研究成果から示唆されています。にもかかわらず、HPVワクチン接種後の症状を機能性身体症状/ISRR(予防接種ストレス関連反応)と位置づけ、認知行動療法を行うのでは、治療効果は期待できません。厚生労働省には、これまで副反応被害者を実際に多数診察し、HPVワクチン接種後の症状を免疫介在性の神経障害であると捉えている医師らによる、協力医療機関の医師に対する研修を実施すべきです。そして、こうした診察経験豊富な医師のいる医療機関こそ協力医療機関として指定することを求めます。


(4) 救済制度のあり方の見直し

救済制度の適用においても不支給例が多く、救済は極めて不十分です。医薬品副作用被害救済制度におけるHPVワクチンを原因とした申請に対する支給率は44.5%に留まり、医薬品全体における支給率(83.8%)と比較して著しく低い水準にあります。厚生労働省には、HPVワクチンの副反応被害に対する救済制度のあり方の見直しを直ちに求めます。


(5) 接種者の全数調査の実施

HPVワクチンの副反応に関する積極的実態把握及び被害者全員の救済のための全数追跡調査等全数調査についての厚生労働省のこれまでの回答は、「HPVワクチン接種におきた有害事象については、一定期間内に因果関係が明らかではなくても医師に報告義務があり(副反応疑い報告制度)、一定期間が過ぎて発症した場合であっても予防接種との関連が疑われると医師が判断した場合にも報告義務があります。加えて幅広く副作用情報を収集する観点から保護者からの報告も可能です。HPVワクチンに関して、国としてもできる限り副反応が疑われる症状の報告を集めており、現在のところ接種者の全数調査は考えていない。」とのことでした。しかし、HPVワクチンによる副反応は、これまでの研究から数か月ないし数年にわたって多様な症状が重層的に生じるという、既存の疾患では説明できない特異性があるという指摘もされています。とすれば接種者(保護者を含む)も、医師も、こうした症状がHPVワクチンによる副反応であることを見過ごしているケースが多数存在するであろうことは容易に推察可能です。したがって、HPVワクチンの副反応の実態を解明し、被害者全員の救済のためには、接種者の全数調査は不可欠だと考えます。厚生労働省には、HPVワクチンの副反応に関する積極的実態把握及び被害者全員の救済のために、接種者の全数調査の実施を求めます。


(6) HPVワクチンの有効性に関する国際的な実態調査

HPVワクチンを早期に導入し、接種率の高い国々(オ―ストラリア、イギリス、ノルウェー、スウェーデン、スコットランド等)において、むしろ接種世代である25歳から29歳の女性の子宮頸がんの発生率が増加しているとの疑いがあります。このことが事実であれば、HPVワクチン接種と子宮頸がんの予防との関連性に重大な疑義が生じます。国におかれては、直ちに、こうした国々における子宮頸がんの発生率について実態調査を実施し、その結果を公表されることを求めます。


(7) 十分な情報提供、 HPVワクチンに関するリーフレットの改訂

HPVワクチンに関するリーフレットは、全体にHPV感染と子宮頸がんの関係を正しく伝えず不安を煽り、HPVワクチンの有効性は過大に、副反応は過小に記載した不適切なもので、「情報提供を装ったアンフェアな接種勧奨」というべき内容です。リーフレットの問題点は多々ありますが、主要な点は以下のとおりです。


【HPVワクチンのリスクを適切に伝えていない】

・多様な症状のごく一部しか記載されていない。

・多様な症状が長期にわたり継続する場合のあることが記載されていない。

・多様な症状のメカニズムとして、機能的身体症状であると考えられると断定し、神経学的疾患や免疫反応による可能性を否定している。

・治癒できる治療法が確立していないことが記載されていない。

・他ワクチンと比較した危険性が記載されていない。

・救済制度について過度の期待を抱かせる内容となっている。


【有効性の限界についての記載が不十分である】

・子宮頸がんを予防する効果が証明されていないことが記載されていない。

・子宮頸がんの50~70%を予防できるという誤解を招く記載である。

厚生労働省には、以上のような不適切な内容を記載するリーフレットを直ちに改訂されることを求めます。


(8) HPVワクチンの男性への接種、公費助成及び定期接種について

ガーダシル(4価)について、前駆病変を含む肛門がん(男女)及び尖圭コンジローマ(男性)の予防に対する適応拡大が承認されたことから、男性に対しても定期の予防接種として位置付けることの是非が検討され、費用対効果が悪いことを理由に定期接種化は見送られました。しかし、一部の自治体では接種に対する公費助成が行われています。しかし、その重篤な副反応症状からするに、私たちは、女性に対する接種についても定期の予防接種として積極的勧奨をしてはならないと要請しています。その効果がより希薄である男性に対する接種について定期化、公費助成についてはもちろんのこと、接種すること自体に、強く反対します。

厚生労働省は、各自治体に対して、男性への接種について安易に公費助成がなされないよう強く指導してください。とりわけ、シルガード9については、男性に対する接種については適応外であることや、接種による副反応に対しての救済措置がないことも強く注意喚起してください。


(9) 被害者の就学・就労及び日常生活の支援

10代でワクチンを接種した被害者の多くが成人になりましたが、未だ回復しない重篤な副反応症状に加えて、社会的な理解の不足のために思うように働くことができていません。また、積極的勧奨再開による新たな被害者は、同じく重篤な副反応症状により就学が困難な状況になっています。また、これらの重篤な症状は、HPVワクチンが原因ではなく、心因性のものであるという厚生労働省の見解によって、例えば、身体障碍者手帳の申請や補装具の申請に必要な診断書の作成を拒む医師も多数存在し、被害者が、必要とする適切な福祉等の支援にアクセスできず、日常生活にも支障をきたしています。厚生労働省には、文科省、各地方自治体と連携して、被害者の就学、就労及び日常生活のための最善の方策を講じられることを求めます。


7、医薬品副作用被害救済制度の充実について

医薬品の副作用被害は、既知の副作用であっても、未知の副作用であっても、被害者の受けた被害に対する最初のサポート体制の不備によって、救済が受けられなかったり、治療可能な施設にたどり着くことができなかったりすることによって、結果的に被害者の苦痛が増大してしまう可能性があります。こうした観点から、被害者に対する金銭給付に限らないケア体制の創設が急務だと考えます。ついては、以下の通り要望します。


(1) 保健福祉事業において被害者の申請手続きに至るまでの困難等を含むケア・ニーズの実態調査を行ってください。

(2) 本制度を医療従事者並びに広く市民に周知するために広報の強化を行ってください。また、患者が救済申請をしやすいように医療従事者に対し患者に対する情報提供や申請協力を積極的に行うよう指導して下さい。

(3) 給付費目に「文書料」を加えてください。またそれへの消費税は非課税とすること。

(4) 抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会が抗がん剤副作用の救済制度の導入を見送りましたが「政府は引き続き実現可能性について検討を続けるべき」としています。検討状況明らかにしてください。

(5) 胎児救済については、関連法令との整合性の観点から困難であるとの事でしたが、例えば胎児を失った場合の母体に対する救済については検討の余地があるとの見解が示されました。胎児を失った母体に対する救済に関する検討状況を教えてください。


8、陣痛促進剤による被害の防止について

(1) これまでに厚生労働省およびPMDAが把握している、子宮収縮薬による脳内出血関連、および胎盤早期剥離の副作用報告等の全ての事例を、改めて一覧表にして明らかにしてください。

(2) 厚生労働省は、同様の副作用報告が何例発生すれば、添付文書に記載するルールとしているか、また、重篤な副作用報告が何例発生すれば、添付文書に記載するルールとしているか、明らかにしてください。

(3) 昨年度の交渉で、オキシトシンの添付文書に脳内出血を副作用として記載しているアメリカ、及び、オキシトシンの添付文書に胎盤早期剥離を副作用として記載している英国、ドイツ、フランス、オーストラリア、及び、ジノプロストンの添付文書に胎盤早期剥離を副作用として記載している英国、ドイツ、フランス、オーストラリア、カナダに、その理由等を確認し精査するとの回答がありました。その結果を明らかにしてください。また、これまで調査した上記6カ国以外の国の添付文書の状況も調査し、同様の確認と精査をして下さい。

(4) 日本のオキシトシンの添付文書の副作用欄に、脳内出血と胎盤早期剥離を記載して下さい。また、添付文書改訂の手続きをする間、海外ではそれらが副作用として記載されている事実を添付文書に記載して下さい。

(5) 昨年度の交渉で、産科の診療所等において、自由診療と保険診療の混合診療のような状況になっている場合に、保険診療分の診療明細書が妊婦に渡されているかどうか不透明な状況が示されました。妊婦が自らに使用された薬剤名等をしることは薬害防止の観点からも非常に重要です。至急、現状を把握し、現状について明らかにしてください。また、もし保険診療分の診療明細書が発行されていない状況が一つでも把握されたら、至急、改善策を講じてください。


9、サリドマイドおよび類似薬のリスク管理システムについて

サリドマイドおよびその類似薬(レナリドミド、ポマリドミド)のリスク管理システム(TERMSおよびRevMate)を胎児曝露防止の観点から適正に維持・強化してください。今般、男性患者のパートナーがレナリドミドの使用終了後4週間以内に妊娠したことが報告されました。これはTERMSおよびRevMateによるリスク管理が始まって以来の重大な逸脱であり、胎児曝露防止の観点から看過できない事柄です。この事例を教訓にTERMSおよびRevMateのあり方を改善してください。とくに患者が記入する定期確認票を維持し胎児曝露防止に役立ててください。また、これらのリスク管理システムを適正に運用するよう当該製薬会社に必要に応じて指導してください。

TERMSおよびRevMateの適切な運用と合わせて、個人輸入によるサリドマイド登録システム(SMUD)の維持・強化を図ってください。SMUDの運用状況を定期的に公表するとともに、薬監証明のないサリドマイドの個人輸入について監視し取り締まれるよう体制を強化してください。


10、薬害防止教育の充実について

(1) 過去の交渉において「医療専門職の国家試験において薬害に関する問題は良く出題されている」旨の回答がありましたが、近年の薬剤師国家試験、医師国家試験、看護師国家試験のそれぞれの問題において、薬害に関する出題の問題文を一覧にして明らかにしてください。また、それらの出題の状況が、薬害防止に努める医療者の育成につながるかどうか、厚生労働省の見解を明らかにして下さい。


(2) 文部科学省モデルコアカリキュラムを根拠とする「公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)」 のCBT教育において、近年の薬害に関する出題内容を一覧にして明らかにしてください。


(3) 昨年度の交渉では、「薬害を学ぼう」の解説等の文書についてはイレッサについての記述がある旨の回答がありましたが、「薬害を学ぼう」の本体にもイレッサ薬害に関する記述を追加してください。


11、電子カルテの保存義務期間の延長について

カルテの保存義務が5年しかないために、多くの薬害被害者が自らに投与された薬を証明できず苦労しました。PCBやアスベスト、水俣などの公害においても、病気の原因の解明までに長い年月を要しました。感染から発症まで、投薬から副作用の発症まで5年以上かかるケースは少なくありません。現行のカルテ等の5年間の保存義務では、患者や国民の安全を守ることができません。

文部科学省の調査によると81の大学病院の内、56病院が既に電子カルテを保存期間を永年と定めており、その他の規定を定めている大学病院も「システム上廃棄不可のため実質永久保存」「電子媒体については保存可能な限り永年」「規程上は20年保管だが廃棄予定はない」等と付記しています。また、2016年に刊行された日本医師会の「医師の職業倫理指針(第3版)」でも、電子カルテについて「永久保存とするべき。」と記されています。

薬害被害を受け、厚生労働省は、2003年より特定生物由来製品の記録のみ20年以上の保存を義務付けましたが、それだけでは患者の命や健康を守ることができませんし、薬害も防止できません。

厚生労働省は、至急、電子カルテの保存義務期間を少なくとも20年以上とするよう、法律または療養担当規則で規定してください。また、それに向けたロードマップも示してください。


以上



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