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執筆者の写真林田医療裁判

法医学者たちの告白

NHKスペシャル「法医学者たちの告白」が2024年6月30日に放送されました。日本の法医学の問題点や窮状を明らかにし、警鐘を鳴らすドキュメンタリー番組です。警察や検察に都合の良い部分が切り取られて冤罪につながりかねません。番組ではアメリカの充実した体制を紹介し、日本との差異を浮き彫りにします。


以下は番組紹介の文章です。「警察や検察から解剖の依頼を受け、死因を判定する法医学者。判断を間違えば、犯罪を見逃したり、えん罪を作り出したりすることにつながる。彼らの仕事は科学的で中立性が高いと信じられてきたが、検察側と弁護側の鑑定結果が対立するケースも少なくない。裁判のやり直し=再審において争点になることも多い。法医学者になる医師も減っている。一体何が起きているのか。法医学者たちの初めての告白から日本の司法制度の課題に迫る」


吉田謙一・東京大学名誉教授は番組で以下のように指摘しました。「裁判という場が、事実認定の場であるということをほとんど無視した非常にひどい、日本の裁判って、外国の人から見たら、中世並みとか暗黒裁判って言われるんですけども、まさにそうだなというふうに思いました」


「当事者による名前と顔を出しての発言に重みがある。栃木県今市市(現・日光市)の女児殺害事件の裁判をめぐり、「科学が都合よく編集されちゃう」など強い言葉が出た。自然科学の徒として、それが 蔑ないがし ろにされることへのわだかまり。やむにやまれぬ思いだったのだろう」(「知ってほしい 法医学者の葛藤」読売新聞2024年7月11日)


死因究明は林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号損害賠償事件、平成28年(ネ)第5668号損害賠償控訴事件)でも問題になりました。患者のカルテには「誤嚥性肺炎」が死因として記載されていました。誤嚥性肺炎は食物や唾液が誤って肺に入ることによって引き起こされる肺炎です。


ところが、立正佼成会附属佼成病院(現杏林大学医学部付属杉並病院)の医師は証人尋問でカルテの記載は誤診であり、多剤耐性緑膿菌(Multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa; MDRP)の院内感染が死因と証言しました(東京地方裁判所610号法廷、2016年6月1日)。MDRPは、通常の抗生物質では治療が困難な菌で、特に病院内での感染が問題となる病原体です。これにより、患者は重篤な感染症を引き起こします。


しかし、裁判で証言したきりで、病院側からの追加の説明は一切行われていません。この対応の欠如は、遺族や関係者にとって大きな不安と不信を生む結果となりました。カルテの誤診がなぜ発生したのか、そしてその後の対応がなぜ適切でなかったのかという点は、医療機関の信頼性を揺るがす問題です。


医療機関が誤診を認めた場合にどのように対応すべきかは大きな課題です。医師が裁判で証言したにもかかわらず、それ以外に病院が何の説明もしていないという事実は、透明性の欠如を示しています。このような対応は、医療機関の信頼を大きく損なう原因となります。医療においては、透明性と説明責任が重要です。誤診が発生した場合、その事実を隠すことなく、遺族や関係者に対して真摯に説明し、適切な対策を講じることが求められます。これによって、医療の質を向上させ、同様の問題が再発しないようにすることが可能となります。



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