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執筆者の写真林田医療裁判

精神病院・認知症の闇に九人のジャーナリストが迫る

こんにちは、皆さん。今日は少し重たい話題になりますが、大切なことなのでぜひ共有したいと思います。最近読んだ本、大熊由紀子さんの『精神病院・認知症の闇に九人のジャーナリストが迫る』(ぶどう社、2024年)についてです。この本は、精神科医療や認知症に関する様々な問題を取り上げており、複数のジャーナリストが鋭い視点で日本の医療の現実に迫っています。


本書は二部構成になっていて、第一部では六人のジャーナリストがそれぞれの視点から取材を行った精神科病院や認知症ケアの現場について語っています。特に入院患者の人権問題や、病院内部に存在する構造的な問題に深く切り込んでいる点が特徴です。第二部は40年間も精神病院に入院し、現在地域で生活をする当事者の伊藤時男さんを交えた鼎談です。精神病院から地域への移行がどうなされているか、その実態や課題について議論します。


私が特に印象に残った点は、第一部第一章のタイトル「『本人以外は幸せ』というシステム」です。この言葉、皆さんどう感じますか? タイトル自体が非常に衝撃的ですよね。患者主体の医療にこれほど反する表現もないでしょう。逆に言えば本人は不幸せです。周りの人達の都合で患者本人が不幸せな状態に置かれている現実を表しています。患者の意思が軽視され、医療が患者主体でない状態を強く批判しています。


これは林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号損害賠償事件、平成28年(ネ)第5668号損害賠償控訴事件)と重なります。この裁判でも、同じような問題が浮かび上がりました。立正佼成会附属佼成病院(今は杏林大学医学部付属杉並病院)の医師の言動です。呼吸困難で喘いでいた患者に対して、その医師は家族に向かって「苦しそうに見えますが、今お花畑です」と説明しました。苦しんでいる患者の現実を無視して、勝手に「お花畑にいる」と決めつけてしまう。そのような対応が本当に患者に寄り添っていると言えるでしょうか。


また、主治医は患者の長男をキーパーソンとして他の家族の意見を無視し、長男の「延命治療を全て拒否する」という意向だけで治療方針を決めてしまいました。主治医は「カルテ記載内容の補足として、私は、大事を取りすぎて、意思疎通ができないまま寝たきり状態になるのが最善とは言えない、という主治医の理念をわきまえた上での延命治療拒否だと思いました」と陳述しました(乙A第3号証8頁)。


これも、「本人以外は幸せ」というシステムの一例と感じます。患者の苦しみや希望が尊重されず、周囲の意見や医師の理念だけで治療が決められてしまう。それでは、患者本人が置き去りにされてしまいますよね。


大熊さんの本も林田医療裁判も「医療は誰のためにあるのか」という根本的な問いを投げかけます。患者の気持ちや意思を尊重しない医療システムでは、真に幸せなケアは実現できません。私たち一人ひとりが、この問題を考え、声を上げていくことが必要と感じました。これからも皆さんと一緒に、こうした大切な問題について考えていきたいと思います。最後まで読んでくださってありがとうございます。


●九人のジャーナリスト

大熊由紀子・元朝日新聞論説委員

青山 浩平・NHK『ETV特集』チーフディレクター

持丸 彰子・NHK大阪放送局ディレクター

佐藤 光展・医療ジャーナリスト

木原 育子 東京新聞・特別報道部記者

風間 直樹・『週刊東洋経済』編集長

大熊 一夫・ジャーナリスト

織田 淳太郎・ルポライター

鹿島 真人・NHKディレクター

& 伊藤時男・40年精神病院に入院していた当事者


●もくじ

はじめに 虫の目・鳥の目、歴史の目、そして……(大熊由紀子)

第1部 精神病院・認知症の「闇」に斬り込む

1章 「本人以外は幸せ」というシステム

1 日本に残ったブラックボックス(青山 浩平・持丸 彰子)

2 患者たちを見くびるな(佐藤 光展)

・クロストークA

2章 経営が一番、患者の人生は二番

3 八期十六年「ドン」が描く入院者の幸せ(木原 育子)

4 経済記者は黙らない(風間 直樹)

5 ゲリラ取材でしか見えない世界(大熊 一夫)

・クロストークB


第2部 精神病院のある国、ない国

3章 【鼎談】原発事故があって助かった 時男さん六十歳の青春

(織田 淳太郎/鹿島 真人/伊藤時男)

4章 トリエステ精神保健改革から学ぶこと(大熊 一夫)

あとがき 想像力と度胸に裏打ちされてこそ(大熊由紀子)




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