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執筆者の写真林田医療裁判

公開質問状27杉並区長の命の選別発言

患者の権利を守る会は立正佼成会附属佼成病院に公開質問状(27)を送付しました。今回は、佼成病院のある東京都杉並区の田中良区長の命の選別発言を取り上げました。田中区長が「トリアージは医療現場に押し付けず、東京都がガイドラインを作るべき」と小池百合子都知事に申し入れした問題です。


高齢である、基礎疾患がある、障害がある人達の命の選別・切り捨て推進を要望する田中区長の姿勢に不安を感じた人は多いと思われます。佼成病院は、杉並区から補正予算を受けている半公営病院に近い立場にあり、今まで以上に説明責任、情報公開が求められます。命の選別について医療機関としての見解を求めました。


コロナ禍において首長の言動は厳しく問われます。奈良県が2021年4月26日に「GoToイート」のプレミアム付き食事券を発売したことが批判されています(「なぜ今? 奈良県がGoToイート発売 医療関係者から憤りの声」毎日新聞2021年4月26日)。隣の大阪府が大変なことになっているのに問題意識を持っていません。


市場原理が機能していたら、大阪府で医療資源がひっ迫したら、奈良県の医療資源が大阪府のために供給されます。公務員の縦割り意識で、奈良県の医療資源は大阪府の問題とは関係ないと考えているのでしょうか。民間感覚の徹底が必要です。


コロナ禍による3度目の緊急事態宣言が発令されています。皆様お変わりないでしょうか。2020年の今頃は鼻水が大して出ませんでした。2020年4月の緊急事態宣言は徹底されており、花粉症の影響を受けないというメリットがありました。人流が抑制されると花粉の伝播も減ります。


東京都の2021年4月28日の新型コロナウイルス新規感染者は925人です。千人を超えそうです。大阪府は1260人です。過去最多を更新しました。NHK『首都圏ネットワーク』(2021年4月28日)ではゴールデンウィークに二子玉川の河川敷に人が集まり、新型コロナウイルス感染拡大をもたらす危険性を伝えました。


立正佼成会附属佼成病院 病院長 甲能直幸 様

公 開 質 問 状(27)

2021年4月26日

前略

田中良杉並区長は「トリアージは医療現場に押し付けず東京都がガイドラインを作るべき」として小池百合子都知事に申し入れました。現在この田中良杉並区長の発言(2021年1月8日)が話題になっています。「林田医療裁判を考える会」も見過ごせない問題として論じています。

「高齢である。基礎疾患がある。障害がある」人達の命の選別・切り捨て推進を要望する姿勢に不安を感じた人は多いと思われます。


このような姿勢に対しては既に舩後靖彦参議院議員が批判しています。「高齢者や難病患者の方々が人工呼吸器を若者などに譲ることを「正しい」とする風潮は、「生産性のない人には装着すべきではない」という、障害者差別を理論的に正当化する優生思想につながりかねません。今、まず検討されるべきことは、「誰に呼吸器を付けるのか」という判断ではなく、必要な人に届けられる体制を整備することです」(「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「命の選別」への声明」2020年4月13日)


これに対しては現実に不足している場合の回答にはならないとの反論が予想されますが、命の選別は現実に起きている問題です。新型コロナウイルスに感染し、入院する必要があっても、病床の都合で入院できない人が増えています。埼玉県の2021年1月15日の自宅療養者は3465人、入院調整中は261人でした。感染しても治療をしてもらえないことは、既に一つの選別をしていることになります。


以下は大阪の開業医の医療ネットワークでの報告内容を紹介した文章です。「高齢者施設や療養型病院で感染した患者さんは、多くの場合は集中治療室にも入りませんし、人工呼吸器もECMOも装着しませんので、重症患者には数えられません。悲しいことですが、年齢や患者背景から、救命すべきと判断された人だけが急性期病院の重症ベッドに入院できる状況です」(細井雅之「『赤信号』大阪:現場で起こっていること」週刊日本医事新報5043号)

このように命の選別は既に起こっています。


また、田中区長は、チーム医療の進歩を理解していない点が問題です。田中区長の問題意識は「『この人から人工呼吸器を外して、あの人に付けないといけない』という判断を現場の医者に押しつけていいのか」にあります。しかし、ガイドラインがない現時点でも、現場の医師が一人で判断することではないです。チーム医療になっており、チームとして判断します。問題の性質からいって倫理委員会マターです。チーム医療による判断は林田医療裁判を取り上げた第12回「医療界と法曹界の相互理解のためのシンポジウム」でも強調されています(公開質問状(21))。


杉並区は2020年4月に新型コロナウイルス対策補正予算を出して注目されました。佼成病院を含む4病院は、杉並区補正予算案の9割近くを占めています。佼成病院は、事実上の半公営病院として公的性格を有し、今まで以上に公正なプロセスや説明責任、情報公開が求められる立場になったことを自覚する必要があります。

特に佼成病院は宗教法人立正佼成会が運営していることからしてもより人道的職業倫理が求められるのではないでしょうか。市民は、田中区長の発言に不安を抱いています。佼成病院は、医療機関として田中区長が考える「トリアージ」について見解を示す必要があると考えます。市民の疑問に向き合い患者の側に立ったご意見をお寄せください。


いつものように、未回答のままになっている第1回公開質問状を一緒に掲載致します。また前回の公開質問状(25)では反延命主義について医療機関としての見解をお尋ねしましたが、ご回答がないままになっています。合わせてご回答をいただければ幸いです。ご回答は、有無に関わらずネット上に掲載し、皆様と共に学習することで相互の認識と理解を深め適切な医療を進めるための一助にしたいと考えます。

草々




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