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執筆者の写真林田医療裁判

林田医療裁判 佼成病院への公開質問状(15)

更新日:2020年7月5日

患者の権利を守る会は林田医療裁判(平成26年(ワ)第25447号 損害賠償請求事件)を踏まえて、立正佼成会附属佼成病院に2020年1月20日付で公開質問状(15)を送付しました。


立正佼成会附属佼成病院 

病院長 甲能直幸 様

公 開 質 問 状(15)

令和2年1月20日


 前略

病院長様にはお変わりなくお過ごしのことと存じます。病院長様は、昨年の6月に私たちの面談をお断りなされたため、公開質問状をご送付申し上げました。その後、ご回答がないので督促を致しまして今回で15回目となります。

開かれた医療のためには市民と共に議論を深めることが不可欠だと考えます。

 佼成病院では、患者の長男一人からの治療拒否に応じました。結果として患者の体調は悪化しました。その後岩﨑医師は、長男の酸素マスク拒否に従い患者の酸素マスクを外しました。昼間の患者は、呼吸が苦しそうでしたが、生きようと頑張って呼吸をしていました。家族らは、長男が酸素吸入を拒否したから患者は酸素マスクをされないで自力呼吸をさせられているとは知りませんでした。

 患者の死後、カルテを見て夜間だけ酸素吸入をされていたことがわかりました。その理由を佼成病院は、「もとより、酸素があるほうが本人は楽であろうが・・夜間は手薄・・あたふたさせないように」などの理由で夜間に呼吸が止まらないようにしていたことを話されました。

 つまり患者は、夜間だけ酸素マスクをしてもらい楽になりました。しかし朝になると外されるという苦しい日々を続けて命を縮めて亡くなりました。

 「もとより、酸素があるほうが本人は楽であろうが」と佼成病院がお話されたように人間息ができないことがどれほど苦しいことか世間で語られていることを以下に記載しました。

① 「死ぬ瞬間、水の中で溺れる苦しみがやってくる」

Kさんは、「息は吸っているのに、酸素が肺に入ってこないようで、吸い込もうとすればするほど息苦しさが募っていく。まるで水の中で溺れているようでした」と語り酸素マスクをつけてもらって初めて発作が治まった。

  肺炎で亡くなるときは、当然のことながら息苦しい。高齢者がとりわけ注意

すべき誤嚥性肺炎の場合、症状が出にくく発見が遅れる場合が多い。だが、症状が出ないからと言って楽に死ねるとは限らない。いったん息切れが重症化すると、やはりその苦しさは想像以上のものになる。

Kさんが語る。「発作を起こして以来、肺炎でだけは死にたくないと思うよう

になりました。あの溺れ死ぬような時間が、ベットの上で何日も続くと思うと本当に恐ろしい。」(週刊現代2019年12月28日「最後はみな肺炎で死ぬ」講談社 183頁~184頁抜粋)

②  2006年3月25日 射水市民病院で起きた呼吸器外し事件後に麻野井英次院長が看護師たちに以下のように語りました。

「呼吸器を外すことがいかに残酷な行為であるか。人間息ができないことほど苦しい状況はない。水におぼれる状態を想像してほしい。せめて心臓が動いている間くらい、酸素を送ってあげよう。生命活動を支えるもっとも重要な物質である酸素だけは、命のつきるまでは送り続けよう。あとわずかの時間を、出来る限り患者の尊厳を保つよう心を込めてケアしながら、大切に見守ろう。命の灯が自然に消えるのを一緒に待とうと家族を説得してほしい。どうせ死ぬ、助からない、だからといって私たちが死ぬ時間を決めてよいのでしょうか」(「尊厳死」に尊厳はあるか、ある呼吸器外し事件から 中島みち著 岩波書店 2007年 119頁)。

患者本人のKさんも射水市民病院院長も息ができない苦しさを水に溺れる苦しさに例えています。最新メルクマニュアル医学百科家庭版にも「もがく思いで息をしなければならないのは、生きるにしても死ぬにしても最悪な状態です」と記載があります。

射水市民病院では、事件発覚後、麻野井院長は記者会見での質問に答え、病院側が問題にしたのは「医療倫理、道義的な問題」であり犯罪性の有無は警察の判断するところであると述べています(②2頁)。

 一方、林田医療裁判の家族らは、長男が酸素吸入を拒否したから岩﨑医師は、患者の酸素マスクを外して自力呼吸をさせていたことを知りませんでした。

また佼成病院では、夜間は手薄だから夜間に呼吸が止まらないようにという理由で、夜間だけ酸素吸入をして朝になると外すという苦しい日々を患者が続けていたことも家族らは知りませんでした。

患者の死後、家族らの話し合いの中で「そういえばお爺ちゃんの時は酸素マスクをしていた」などから、当時の母親の苦しそうだった様子を知人らに語ると、「危篤時は、誰だって酸素マスクくらいしている」と言われました。

 息ができないことがどれほど苦しいことか、経験した人でないとわからないですから経験のない多くの市民には認識できていないところでもあります。でも医師ならわかっています。岩﨑医師は「もとより酸素があるほうが本人は楽であろうが、」と話されました。また呼吸を和らげる方法も分かっています。

佼成病院の医師全員が岩﨑医師と同じお考えとは思えないのです。また病院長様が岩﨑医師と同じお考えとも思えないので、「医療倫理、道義的」問題としてご意見をお寄せくださることが期待されます。

この質問状は、ご回答の有無にかかわらずネット上に公開させて頂きます。いつものように、2019年6月30日付 第1回公開質問状を以下に掲載致します。ご回答は2週間以内に郵送にてお願いします。

                             草々

*****

 公 開 質 問 状(2019年6月30日 第1回)

第1 質問事項

1.患者の家族の中の悪意ある人物により、経管栄養が操作されるリスクに対して、その予防や検知の対策を採っていますか。採っている場合、その具体的内容を教えてください。

2.複数人の家族の意見から本人の意思を推定する取り組み内容を教えてください。

3.「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の強調する繰り返しの意思確認を実現するために取り組みをしていますか。している場合、その具体的内容を教えてください。

第2 質問の趣旨

 1  林田医療裁判では、経管栄養の管理や治療中止の意思決定のあり方が問われました。林田医療裁判の提起後には、点滴の管理が問題になった大口病院の連続点滴中毒死事件や自己決定権が問題になった公立福生病院の人工透析治療中止問題が起きました。また、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に改定され、意思確認を繰り返し確認することが求められました。林田医療裁判において問われた争点は「終了」しているのではなく、現代日本の医療の問題と重なり問われ続けています。

 2  そこで、私達は林田医療裁判を経験し又その経緯を知った者として、広く医療の現状と課題について考察し、患者の安全と幸せは何かを探求しています。そして、このような問題は広く社会に公開して議論を深めていくことが、適切な医療を進める上で不可欠であると考えています。とりわけ貴病院は、経管栄養の管理や治療中止の意思決定の問題について直面された医療機関として、適切な医療を進めるためのご意見をお寄せになることが道義的にも期待されるところであると思われます。

3  従いまして、上記の質問事項に回答をお寄せ頂けますよう要請いたします。この質問と貴病院の回答はネット上に公開することを予定しています。このような公開の議論の場により、医療機関と患者ないし多くの市民の方が意見を交わし、相互の認識と理解を深め、適切な医療を進める一助にしたいと考えています。この公開質問状の趣旨をご理解いただき、上記の質問事項に回答を寄せていただきたい、と切に要望します。ご回答を連絡先まで郵送してください。回答締切日を二週間以内にお願い致します。

以上

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