公立福生病院では腎臓病患者の女性が人工透析を中止して2019年8月に死亡した。公立福生病院透析中止死亡事件裁判の原告代理人弁護士は「医師が透析の中止を提案し、実際に中止した」と指摘する(「透析中止で女性死亡 遺族が福生病院を提訴」産経新聞2019年10月17日)。これを裏付ける記述が「平成29年度 公立福生病院 病院指標」にある。
「平成29年度 公立福生病院 病院指標」の「診断群分類別患者数等」「腎センター」には「腎不全に対する代替療法は非導入、血液透析、網膜透析、移植の4つの選択を提示し、患者とその家族に決定していただくように行っています」と書かれている。病院側から非導入の選択肢を提示するとある。
非導入を治療法に挙げることが信じ難い。非導入は透析や移植をしないことが治療法と言えるのか。透析が必要な人が透析をしないことは死を意味する。その死は安楽なものではない。腎機能が低下すると水分・塩分の排泄ができなくなり、肺に水が溜まって呼吸困難に陥る。老廃物が体に溜まることで、ひどい吐き気を催したり、意識障害を起こしたりすることになる。
「患者とその家族に決定していただく」とあるが、選択肢を提示してアリバイ的に同意をとることはInformed Consentにならない。透析をしなければ苦しみ、死に至るというようなデメリットも伝えた上で判断したのか。消費者契約では事業者に不利益事実を告知することが求められる(消費者契約法第4条第2項)。医師と患者の情報の非対称性は特に大きい。
公立福生病院の問題は透析中止事件が報道された後にWebサイトの「平成29年度 公立福生病院 病院指標」を書き換えたことである。「腎不全に対する代替療法は非導入、血液透析、網膜透析、移植の4つの選択を提示し、患者とその家族に決定していただくように行っています」との記述がなくなっている。都合の悪い事実を隠す隠蔽体質を批判されるだろう。
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