患者の権利を守る会は立正佼成会附属佼成病院に公開質問状(24)を送付しました。
2021年最初の新年号です。今回は、多くの病院で設定されているキーパーソンを取り上げました。林田医療裁判では繰り返し問題提起されていますが、「キーパーソンの意見が患者本人の意見とは限らない」こと、また「家族の一人(キーパーソン)が同意をすれば、高齢者は死なせていいのだろうか?」という疑問にあります。一般市民感覚と、実際の病院実務のかけ離れを是正するには、市民と共に広く議論を深めることが不可欠です。
本年も御意見を御寄せ下さいますようよろしくお願いいたします。患者の権利を守る会は、これからも患者の権利強化への支援をより一層強めて参ります。患者の権利強化に向けての御支援を何卒よろしくお願い申し上げます。
関連訴訟の中野相続裁判さいたま地裁第17回口頭弁論(2021年1月29日)はコロナ禍のため延期されました。29日の裁判は開かれませんのでお間違え無いように。次回期日は3月19日11時15分からです。引き続きご支援をお願い致します。くれぐれもお体をご自愛ください。
立正佼成会附属佼成病院
病院長 甲能直幸 様
公 開 質 問 状(24)
2021年1月25日
前略
本年最初の公開質問状をお送りいたします。
私達は、2019年6月、公開質問状に先立ち佼成病院に面談を申し入れましたが拒否されました。拒否に合理的理由がないため公開質問状を送り続けています。公開質問状は、林田医療裁判に基づき全て根拠のあるものです。しかし、一度もご回答がないまま今回で24回目になりました。今年こそ公開質問状が佼成病院のクリーンな姿勢を打ち出す好機となることを期待します。
林田医療裁判をめぐる議論で多いのは、キーパーソンの問題です。厚労省のガイドラインには出てこない、医療現場だけに存在しているキーパーソン設定には、患者・家族として実際に経験しているからこそ感じる不安があるのです。
病院によってまちまちですが、ほとんどの病院がキーパーソン設提の説明をした上で「家族間で誰をキーパーソンにするかを決めてください」など家族全員の同意を必要としていました。
しかし佼成病院では、家族らにキーパーソン設定の説明をしませんでした。当然のことながらキーパーソンに関して家族は、なにも知りませんでした。
ところが佼成病院は、独自の選択で長男をキーパーソンとしましたが、他の家族らには長男がキーパーソンであることを知らせませんでした。よって家族は、佼成病院が設提するキーパーソンの権限、役割など何も知りませんでした。
これが佼成病院の医療実務であるならば一般の消費者感覚と大きなずれを感じます。患者の命を預かる病院として用心深さに欠けるのではないかと、考えてしまいます。
なぜならば、林田医療裁判のキーパーソン(佼成病院が家族に相談することなく決めた)の長男は、無資格者であるのに医師の許可なく患者の経鼻経管栄養の注入速度を速めました。その後患者は嘔吐して誤嚥性肺炎になりました。しかし、キーパーソンは患者の命を助けるのではなく患者の治療を数々拒否しました。
担当された岩﨑正知医師の記録には、8月20日「長男は延命につながる治療を全て拒否、現在Div(普通の点滴)で維持しているのも好ましく思っていないようである。本日にてDiv終了し・・」との記載があります。岩﨑医師は、キーパーソンの治療拒否に安易に従いました。その結果、患者の容体は悪化の一途をたどり呼吸困難になるもキーパーソンが酸素吸入を拒否したら岩﨑医師は、患者の酸素マスクを外しました。しかし、岩﨑医師ご自身は「もとより、酸素があるほうが本人は楽であろうが・・」と述べています。佼成病院では、キーパーソンが患者の治療方針を決めているようにも見受けられます。これは重大なことです。
林田医療裁判でも繰り返し問題提起していますが、キーパーソンの意見を聞いただけでは患者本人の意見を聞いたことにならないです。本人の意見を繰り返し確認すること、家族らの意見も家族ら自身の要望ではなく、本人の意見を推察する判断材料の一つとして聞くこと、そのために多数の家族らの意見を聞いて複合的に把握することが求められています。
林田医療裁判の問題意識は「家族の一人が同意をすれば、高齢者は死なせていいのだろうか」にあります(渋井哲也「母の治療をめぐり兄弟間で食い違い。高齢者の命の尊厳を守る医療裁判は最高裁へ」BLOGOS 2017年08月23日)。
もしキーパーソンの仕組みが、病院側がキーパーソンとしか話をせず、キーパーソンの意見しか聞かなくて良いと正当化するものであるならば、キーパーソンではない関係者は疎外され、不満を抱くことは必然です。キーパーソンの仕組みは最初から紛争リスクを抱えているものとなります。そのようなものであるならば消費者感覚としてはキーパーソンの仕組みを否定することに傾きます。
キーパーソンの仕組みを擁護するならば、キーパーソンの選任手続きや意見集約手続きを全関係者が納得できるものにしていくことが建設的と考えます。ところが、キーパーソン擁護者から、そのような発言を聞いたことが一度もありません。反対にキーパーソンに異論を述べる方に問題があるというような前近代的な村社会的な発想です。この点が消費者感覚と最も大きな断絶になります。
以上のように佼成病院のキーパーソンの決め方、役割、権限については問題が多く、一般市民は、不安を抱いています。キーパーソンは、公開質問状第1 2.に記載があります、「複数人の家族の意見から本人の意思を推定する取り組み内容を教えてください。」に直結する大事な問題だからです。
病院は、入院患者の安全を保障するところ、と認識しています。患者・家族の疑問に向き合いご意見をお寄せ下さることが期待されます。
開かれた医療を進める為には、多くの市民と意見を交わし、相互の認識と理解を深めることが不可欠です。この質問状は、ご回答の有無に関わらずネット上に公開致します。ご回答は2週間以内に郵送でお願いします。いつものように第1回公開質問状を以下に掲載致します。
草々
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公 開 質 問 状(2019年6月30日 第1回)
第1 質問事項
1.患者の家族の中の悪意ある人物により、経管栄養が操作されるリスクに対して、その予防や検知の対策を採っていますか。採っている場合、その具体的内容を教えてください。
2.複数人の家族の意見から本人の意思を推定する取り組み内容を教えてください。
3.「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の強調する繰り返しの意思確認を実現するために取り組みをしていますか。している場合、その具体的内容を教えてください。
第2 質問の趣旨
1 林田医療裁判では、経管栄養の管理や治療中止の意思決定のあり方が問われました。林田医療裁判の提起後には、点滴の管理が問題になった大口病院の連続点滴中毒死事件や自己決定権が問題になった公立福生病院の人工透析治療中止問題が起きました。また、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に改定され、意思確認を繰り返し確認することが求められました。林田医療裁判において問われた争点は「終了」しているのではなく、現代日本の医療の問題と重なり問われ続けています。
2 そこで、私達は林田医療裁判を経験し又その経緯を知った者として、広く医療の現状と課題について考察し、患者の安全と幸せは何かを探求しています。そして、このような問題は広く社会に公開して議論を深めていくことが、適切な医療を進める上で不可欠であると考えています。とりわけ貴病院は、経管栄養の管理や治療中止の意思決定の問題について直面された医療機関として、適切な医療を進めるためのご意見をお寄せになることが道義的にも期待されるところであると思われます。
3 従いまして、上記の質問事項に回答をお寄せ頂けますよう要請いたします。この質問と貴病院の回答はネット上に公開することを予定しています。このような公開の議論の場により、医療機関と患者ないし多くの市民の方が意見を交わし、相互の認識と理解を深め、適切な医療を進める一助にしたいと考えています。この公開質問状の趣旨をご理解いただき、上記の質問事項に回答を寄せていただきたい、と切に要望します。ご回答を連絡先まで郵送してください。回答締切日を二週間以内にお願い致します。
以上
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