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執筆者の写真林田医療裁判

軽度者への生活援助サービス等に関する在り方の要望書

公益社団法⼈全国老人福祉施設協議会、公益社団法人全国老人保健施設協会、公益社団法人日本認知症グループホーム協会、⼀般社団法人日本介護支援専門員協会、公益社団法人日本介護福祉士会、日本ホームヘルパー協会、全国ホームヘルパー協議会、全国社会福祉法人経営者協議会は厚生労働省・大西証史老健局長宛に2022年10月21日付で「軽度者への生活援助サービス等に関する在り方について(要望)」を出しました。


時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」という。)は、主に要支援者又は基本チェックリストに基づき判定された高齢者を対象に、要介護状態又は要支援状態となることを予防し、社会に参加しつつ、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援することを目的として実施されています。


一方、要介護度 1、2 の方は、ADLが自立している方が殆どである要支援者とは異なり、認知機能が低下し、排泄、着脱、洗身など介護給付サービスがなければ在宅での自立生活が困難な状態像にあります。要介護度 1、2 の方に対する訪問介護、通所介護を目的や対象の異なる総合事業に移行することは、要介護者に対して、自立支援に向けた適切な専門的サービスが提供できないことによって、自立を阻害し重度化を招くおそれがあります。さらに、総合事業の提供体制が十分ではない地域があるなかで、要介護度 1、2 の方々を移行することは、すでに総合事業を利用している方々にとっても大きな影響を及ぼしかねません。


また、総合事業のサービス単価が廉価に抑えられることによって、地域包括ケアシステムを支える事業者において、介護職や専門職の継続的な処遇改善を困難にするばかりか、採算が取れず人件費を圧縮することや、経営不振で撤退することもあり得、その結果、地域に要介護者の在宅生活を支えるサービスの担い手がなくなる可能性もあります。


要介護者にとって必要な介護サービスが受けられなくなる見直しは、要介護者本人の自立を阻害するだけでなく、そのしわ寄せが家族介護の負担増となり、介護離職など更なる問題へと繋がりかねません。地域包括ケアシステムの推進と正反対の結果を招来することが懸念されます。


令和元年 12 月 27 日の社会保障審議会介護保険部会による「介護保険制度の見直しに関する意見」では、軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方について、「総合事業の実施状況や(略)等を踏まえながら引き続き検討を行うことが適当」とされていますが、総合事業の実施状況をみると 2018 年から 2020 年の3年間でほとんど従前相当以外のサービス事業所数が増えておらず、受け皿ができている状況とはいえません。現行の地域支援事業の拡充を図ることが先決であり、総合事業によるサービスの質の効果検証もないまま、総合事業へ移行する議論は時期尚早であると言わざるを得ません。


日本の高齢者介護サービスは、医療、介護、行政、住民が力を合わせて、超高齢化を乗りきるために世界有数のサービス提供体制を整えてきました。このような見直しは、過去の積み上げを破壊し、医療、介護にかかわる先人たちの努力を踏みにじる制度改革であり、介護保険サービスや要介護認定のあり方など、制度の根幹にかかわる問題を多く抱えています。

以上のことから、要介護度 1、2 の方への訪問介護、通所介護を総合事業に移行する見直しに反対いたします。


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