早川労災裁判の控訴審の第1回口頭弁論は5月17日に東京高裁424号法廷で行われた。早川さん側が控訴状と控訴理由書を陳述した。一審東京地裁の結審後に提出した書面も陳述した。地方公務員災害補償基金側は控訴答弁書を陳述した。
早川さんが意見陳述した。1972年の荒れた中学校の生々しい実態の陳述が印象的であった。「授業中に質問しても生徒が「分かりません」と連発し、繰り返し丁寧に黒板に書きながら説明していると、先に理解した生徒が騒ぎ出し苦労しました。防音校舎とは言え、当時の教職員組合の調査結果では、飛行機の騒音で室内が30cmで話が聞こえなくなる「85ホーン」にも達しました。騒音のたびに生徒は騒いで立ち歩き、私は大声をあげて騒ぐ生徒を鎮め、聞いてもらえなくても板書を続け、心身ともにヘトヘトになりました」
早川さんの陳述内容は学級崩壊という言葉が合っている。学級崩壊は1990年代後半から使われ出した言葉であり、比較的新しい現象と思ってしまうが、現象自体は昭和の頃から存在した。むしろヤンキーをかっこいいとするような昭和の弊害と言えるだろう。早川労災裁判は今の感覚から大したことがないと考えることは誤りである。21世紀からは非常識と思えるような昭和の生きづらさを前提として考えなければならない。
早川さん側は証拠として甲第67号証から82号証を提出した。早川さん側の代理人が意見陳述した。一審判決は早川さんの負担が大したことがないように書かれているが、大きな誤りである。
裁判長は基金側に対して早川さんの痛みの原因をどう考えるか、他の原因で生じたとするならば、その主張を整理して欲しいと述べた。基金側は障害が公務に起因していないと判断するもので、どの原因で発生したかを説明するものではないと抵抗した。これに対して、裁判長は、行政の運用を越えて事件を解決するために裁判所は知りたいことがあると述べた。公務ではないと述べるだけで、どのような原因で痛みが起きたか触れていない。もし「分かりません」が回答ならば「分からないのですね」と裁判所は考えるとした。
基金側は調査に3か月いただきたいとして文書提出が8月17日となった。医学文献や新たに見つかったカルテなど考え方の支えとなる証拠の提出も求めた。
『6.29東京総行動ニュース』「東京地裁の不当判決糾弾!早川さんの労災を認定しろ!」は早川労災裁判を以下のよう説明する。「文京七中早川労災裁判は、雇用主の東京都による「労災隠し」であり、労災隠しは厚労省のポスターにもある通り、犯罪です。その経過は、労災申請の「公務災害認定請求書」を18年間も文京七中の校長室ロッカーに隠匿し、早川さんが「手続きをしろ裁判」を行って、民間に遅れること半世紀の「公務員の労災も、審査機関に直接提出できる」を、裁判で勝ち取る(2012年3月15日、最高裁確定)まで、 東京都および公災審査機関の公務災害補償基金が手続きを拒否したのです」。
「民間に遅れること半世紀」と民間感覚を重視していることが特徴である。裁判の名称も「早川労災裁判」と公務災害ではなく、民間の労災という言葉を使う。民間感覚は公務員組織に強く求められる。
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