始まりの段階の生命を利用する、そのために「研究・利用目的で」新たに卵子、精子を体外で操作して受精卵を作成し、その受精卵に種々の操作をほどこすことが、さまざまな知識や治療のための薬剤等が得られるのではという考えのもとで進められています。しかし、研究・利用を目的として「人の始まりの段階の生命を作る」ことは危ういことではないでしょうか。国際的に見ても、研究を目的として受精卵を作成することを許可している国は、日本を含めても数カ国しかありません。
首相が主宰する総合科学技術・イノベーション会議の生命倫理専門調査会は 2021年9月、『「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」見直し等に係る報告(案)(第三次)』に対する意見の募集(パブリックコメント)を行いました。この第三次報告(案)は、新たに胚を作成して以下のような研究に用いることを容認しようというものです。
1 研究用新規胚にゲノム編集技術等を用いる遺伝性・先天性疾患研究
2 研究用新規胚に核置換技術を用いるミトコンドリア病研究
すでに2018年3月に第一次報告、2021年6月に第二次報告がまとめられており、生殖補助医療の改善、遺伝性難病等の根治的療法の開発へとつながる可能性がある限りで、ヒトの受精卵にゲノム編集技術を用いることを容認する方向性が出されていました。第三次報告では、新たに受精卵(胚)を作成して、それにゲノム編集や類似の操作を実施することまで容認しようというものです。
これまでは余剰胚(不妊治療で卵子凍結したが使われなかった胚)ならば用いてよいということでしたが、今や新たに研究・利用するための胚(受精卵)を作成してよいというものです。今の段階では、受精卵にゲノム編集を施し子宮に着床させ誕生に至ることまで展望されていません。
これは2018年に中国の賀建奎が行なって、世界から厳しい批判を浴びたことです。賀建奎は中国の法に違反したとして刑に服することになりました。しかし、今後、たとえば遺伝性難病等の根治的療法が受精卵へのゲノム編集によって可能となり、この方法でしか可能でないという場合、どうなるのでしょうか。また、研究のために「人のいのちを作る」ことは人のいのちの道具化・手段化を大きく進めることにならないでしょうか。
このシンポジウムでは、以上のような展開を念頭に置きながら、ヒト胚の作成やその研究や利用、受精卵や精子・卵子へのゲノム編集の適用といったことが許容できるのかどうか、制限するとすればどのような理由でどのように制限するのか、といった問題につてこうした問題に取り組んで来た倫理学、宗教学、法学などの研究者、関連領域の科学者、障害者、難病等の当事者市民団体などとともに検討しようというものです。
日時2022年1月30日(日)13時-17時30分
オンライン
●発題:澤井努(京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点特定助教・生命倫学)
建石真公子(法政大学法学部教授・憲法学)
香川知晶(山梨大学名誉教授・倫理学)
天笠啓祐(DNA問題研究会会員)
司会:島薗進(上智大学グリーフケア研究所所長、東京大学名誉教授・宗教学、死生学)
●プログラム(案)
13:00-13:10 開会挨拶・諸注意 島薗進・神野玲子
13:10-13:50 澤井努
13:50-14:00 質疑応答
14:00-14:40 建石真公子
14:40-14:50 質疑応答
14:50-15:00 休憩
15:00-15:40 香川知晶
15:40-15:50質疑応答
15:50-16:10天笠啓祐
16:10-16:20 休憩
16:20-17:20全体質疑
17:20-17:30閉会挨拶島薗
●参加: 事前予約必須(予約受付期間は即日から1月27日まで)
●予約方法 :予約は名前(ふりがな付与)、連絡先(E-mail 必須)を明記の上、下記記載のE-mail 先へ申し込みください。
*E-mail アドレスを誤ると参加案内が送れませんので注意を!
●参加費:参加費:無料。ご寄付をお願いします。
●当日の案内:案内およびZoomURL を1月27 日頃メールにてお送りいたします。
主催 :ゲノム問題検討会議
共催:DNA問題研究会、グループ生殖医療と差別、臓器移植法を問い直す市民ネットワーク、現代技術史研究会M分科会(まぁるい地球をみんなで守ろう分科会)
賛同団体:神経筋疾患ネットワーク、武谷三男史料研究会
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