公立福生病院透析中止死亡事件裁判の第1回口頭弁論が2020年7月22日13時15分から東京都千代田区の東京地方裁判所712法廷で開かれる。この裁判は遺族が2019年10月17日、慰謝料と弁護士費用2200万円を求めて公立福生病院を運営する福生病院組合を提訴したもの。裁判は東京地裁民事第34部に係属している。民事第34部は医療集中部である。
遺族側は、医師が治療行為の中止を提案し、治療を中止したことは違法であり、透析中止を撤回できる旨の説明を欠いたことは説明義務違反であると主張する。医師が治療行為の中止を提案し、治療を中止したことは、同意殺人罪に加担すると評価しうるものであり、医師のあり方と背理する。病院側は翻意をはかる説得をした形跡がない。これは林田医療裁判と重なる。
透析中止の撤回の意思表示が無視されたことは問題である。自己決定権を尊重するならば自己決定権による撤回が認められなければならない。都合の良い意思表示のみ取り入れる姿勢は御都合主義である。
死亡患者は透析を中止したことで苦しい状態に陥った。透析中止の撤回を求めたが、病院は呼吸困難によって意識が混乱している状態ではなく、意識が清明であった時の本人の意思を尊重するとした。しかし、泣きわめいて叫んだ時の意思表示の方が心からの意思ではないか。
この種の議論は苦痛の生と安楽な死の二者択一とされがちであるが、手間をかけたくないだけであり、苦しみは除去されない。生きることは苦しいとしても、死ぬことはもっと苦しいと感じた。病院からは透析を止めると激しい苦痛になるという説明もなかった。不利益事実を説明しないマンションだまし売りと重なる構図である(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。
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